コロナを経て、オンラインフィットネスが台頭したが、afterコロナの今、会員はリアルのクラブに戻ってきている。そのような会員は、どのようなことに体験価値を感じて、通い続けているのだろうか?どうしたら、リアルの価値を高めることができるのだろうか?株式会社USENの亀割氏は、リアルの価値を提案するためのニュースタンダードとして、空間演出とエンタメ要素の重要性を挙げる。どういうことだろうか?

  • 株式会社USEN
    企画開発本部
    音楽配信事業推進部
    亀割誉氏

リアルのクラブの価値

2020年、誰もが経験した緊急事態宣言と不要不急な外出の自粛。新しい生活様式に対応した結果、外出する機会が減り、そのライフスタイルが定着している生活者も中にはいることだろう。

その証拠として、未だに客足が完全には回復していない業種が見られる。例えば、飲食店がその1つだ。

「オンライン飲み会が意外にも流行ってしまい、リアルな店舗から遠ざかっている人も増えました。美味しい料理とホスピタリティを提供することに加えて、店舗に行く理由、店舗だからこそ体験できる価値が、より重視されています」(亀割氏)

価値観が変わった消費者と多様なニーズに対応するための新しい武器が必要なのは、フィットネス事業者も同じと言えるだろう。

満足度を高める空間演出

亀割氏に、具体的な方法を尋ねた。

「リアルの価値を高める方法の1つとして、店内の空間演出があります。コンセプチュアルなクラブほど、内装の高級感や色調などに投資しますが、それには、来店のきっかけづくり(トリガー)と、定着(リピート)を促す効果があるからです。すなわち、顧客満足が高まり、売り上げに直結するということです」

スマートTV1台で空間演出ができる

では、これからどのように空間を演出したらよいのだろうか?

「一言で言うと、USEN MUSIC Entertainment(以下、UME)です。UMEは、TV1台で、音楽×映像×エンタメによる空間演出ができます」

UMEは、Androidを内蔵したスマートTVで、TVとしても、サイネージとしても、BGMとしても使用できる。

視覚でリラックス効果を高める

「空間演出において、視覚と聴覚は非常に重要です。例えば、フィットネスクラブなら、ただスタジオでヨガをするのではなく、森の中にいる映像とともにヒーリング系のBGMを流したり、ダンス系のレッスンでネオンの映像にPOPで活発なBGMを流したりするとよいでしょう。ただ黙々と運動するよりも、ずっと楽しいと感じると思いませんか?」

たしかに、フィットネスクラブに通っていない未顧客にフィットネスの良さを伝えるためには、「楽しさ」「明るさ」などの「快」の訴求は欠かせないだろう。それに加えて、亀割氏は、UMEの空間演出には、運動効果をサポートしてくれる機能もあるという。

「昨今、広がりを見せている『ウェルネス』という観点から考えると、フィットネスクラブでは、フィジカルだけでなくメンタルへのアプローチも重要ではないでしょうか?そこでは、激しい筋トレではなく、落ち着いた静けさのなかで、ヨガなどで深い呼吸に集中したり、自分の内側への意識を高めたりしたい人がいらっしゃることでしょう。UMEなら、そういったヨガの効果を高める専用BGMチャンネルもあります」

空間演出は、トレーナー・インストラクターの声だけでは、なかなか届きにくい部分にアプローチしてくれるというのだ。ほかにも、「癒し空間BGM~α波の誘い~」というチャンネルでは、リラックス時や集中時に発せられるα波を誘発すると言われている“1/fのゆらぎ”を持つBGMが集められている。コワーキングスペースを付帯しているクラブやサウナで満足度を高めることにつながるだろう。

価値を生み出す仕事にシフトしよう

しかし、空間演出には、センスが問われるのではないだろうか?

「選択した映像から、マッチするBGMの組み合わせをサジェストする機能があります。1,000チャンネル以上の豊富な選択肢から選ばれます。BGMだけが流れているよりも、映像だけがあるよりも、双方がマッチすることで、よりクラブのコンセプトを伝えることができます」

そこには、同社がBGM事業を60年間やってきた知見が詰まっている。

また、スタッフのスキルが活かされにくい単純なタスクの負担を減らしてくれる機能もある。サイネージ機能だ。

「今日のご案内」や「落とし物情報」、「スタジオ代行情報」など、リアルタイム性が必要な情報を即時に表示したり、映像やBGMの変更・配信時間を予約できる(グラフ)。

◆グラフ UME導入によるクラブの空間演出の変化

「表示したい情報はPCブラウザの管理画面から設定することができます。テンプレートもあり、背景のデザインをわざわざつくる必要がありません。BGMに関しても、スタジオレッスンでその都度BGM変更のための操作をしなくても、閉館時間で『蛍の光』を流すことをしなくても、時間になったら自動で流れます。BGMと映像を曜日や時間帯ごとに組み合わせれば、1日のプログラムをあらかじめ作成することもできます」

よりリラックスできる空間に

音楽を止めたり、短距離を移動したり、電源を落としたり、また次の場所へ移動したりと、細かい業務があるフィットネスクラブにとって、打ってつけの機能ではないだろうか?

ほかにも、リニューアルを計画しているが内装工事の費用がかけにくい場合や、色々な年齢層に合わせて1つのスタジオのテーマを次々に変えたい場合に、簡単に空間を切り替えることができると、亀割氏はいう。

会員同士が交流できる来店客参加型エンタメソリューション

UMEの魅力は、まだある。

UMEは、会員がスマホでミュージックビデオをリクエストすると、クラブに流すことができる。

会員同士が交流できるミュージックビデオへのコメント

「約20万の楽曲の中から、見たいものをリクエストできます。複数の人がリクエストしたら、そのときは順番に流れます。ミュージックビデオが流れている最中は、スマホからコメント入力することができ、TVモニターに表示され、会員同士の交流が期待できます。例えば、『ナイス選曲!』『私もお気に入り!』など、会員同士の生身のコミュニケーションが盛り上がり、そのクラブへの帰属意識を高め、また来ようと思うきっかけを生み出してくれます」

思い出づくりは、リピートのきっかけになり、エンゲージメントを高める。しかも、リクエストには、専用のアプリをインストールする必要すらなく、QRコードの読み込みで簡単にできる。

「いつものメンバーで利用するときや、ダンスレッスンでその日使う曲をリクエストしたいとき、個室サウナで整うまでの、ちょっと手持ち無沙汰なときに、好きなミュージックビデオが観られたら満足感は高まるのではないでしょうか?」

しかも、UMEには、カラオケも入っている。スマートTV本体のみで利用することができ、価格もリーズナブルだ。高齢者が多いフィットネスクラブで、空室をカルチャースクールとしてリニューアルする際に、使えるのではないだろうか。

「カラオケって、けっこうカロリー消費しますからね(笑)。フィットネスクラブの取っ付きにくさを解消してくれるかもしれません」

空間演出とエンタメ要素というニュースタンダード

亀割氏は、再度、念を押す。

「顧客を施設に招いて運営するビジネスにおいて、空間のつくり方や、居心地がどうあるべきかは普遍的なテーマです。フィットネスクラブは、そこにもっとこだわるとよいのではないでしょうか?例えば、私もプライベートでジムに通っていますが、マシンで鍛える行為には、規定の回数をこなすのに時間がかかります。段々と飽きてくると、続けにくくなるどころか、もう来店してくなくなるかもしれません。飲食店なら、美味しい料理を食べる。フィットネスクラブなら運動して健康になる。それだけではなく、エンタメという新しい価値が加わりもっと魅力的なサービスになると思います。クラブももっと、『エンタメ要素』があってもよいのではないでしょうか?」

つまり、クラブの価値を顧客に伝えるためのニュースタンダードとして、空間演出とエンタメ要素が求められているのかもしれない。

「きつい」と思われがちなフィットネスクラブ。クラブに来るからこその「楽しさ」をいかにつくれるかが、今、問われている。