在籍数や継続率のアップを目指し続けること、それはフィットネス事業者にとって欠かせないテーマである。ユーザーの理想を叶えるために、トレーニングの質を向上させることは、トレーナー自身の専門知識の深化と効果的な指導がカギを握る。10月18日、株式会社ブラボーグループ(以下、同社)は、主催した「TRX SUMMIT 2025」において、世界基準のトレーニングメソッドを通じ、指導力強化と顧客満足の両立を目指す、最新のアプローチを提示した。トレーナー教育を経営戦略として捉える視点が、今、業界に問われている。
世界基準の知見が集結
トレーニング指導者が集った「TRXSUMMIT 2025」は、ファンクショナルトレーニングの最前線を学ぶ、年に一度の機会となった。米国TRXTRAINING CENTERディレクターのDan McDonogh氏をはじめ、国内外のトップインストラクターが登壇し、実践的なセッションを通して参加者の指導力向上を支援した。
特に注目を集めたのが、日本初公開となる「TRXピラティス」である。ピラティスの原則にTRXサスペンショントレーナーの不安定性を融合させ、リフォーマーを使わずにコアや姿勢の安定を効果的に鍛えることが可能。担当講師のMika氏は「高価な器具がなくても、クライアントの動きの質を格段に高められる」と強調し、経営面でも導入ハードルの低い、新たなプログラム
モデルとして注目を集めた。
「ピラティスの可能性がさらに広がった」「準備運動にもなり、即効果を実感できた」といった声が寄せられ、規模や業態問わず集まった多くのトレーナーにとって、新たな付加価値創出のヒントを得ることができただろう。
女性の生涯を支える指導設計
続くセッション「TRXフィメールトレーニング」では、女性のライフステージに応じたトレーニング設計が紹介された。女性ホルモンの変動や体調変化に基づくプログラム設計を学び、思春期から更年期までを包括的にサポートする科学的アプローチを体験。担当講師のDan氏とKaori氏は「女性はミニチュア版の男性ではない」との言葉を引用し、個別最適化の重要性を訴えた。
TRXツールの持つ柔軟な負荷調整機能は、女性特有の身体変化に合わせた安全なトレーニングを可能にする。参加者からは「女性にとってのトレーニングの重要性を改めて理解できた」「ホルモン周期を踏まえたプログラム構築のヒントを得た」との声も上がり、会員一人ひとりに寄り添うサービス設計の必要性を再認識させた。
このような“知識と共感に基づく指導力”の向上は、顧客満足度を高めるだけでなく、退会防止や会員継続率向上にも直結する。専門性の高いトレーナーを育成することこそ、クラブ経営の中長期的な投資といえるだろう。

トレーナーの教育が生み出す価値
イベント終盤に実施された「TRXコア&リストア」は、アクティブ・リカバリー(積極的回復)をテーマとしたプログラム。コアトレーニング、フォームローリング、ストレッチを組み合わせ、身体機能の回復と再教育を促す構成だ。担当講師のDan氏は「これは単なるストレッチではなく、科学的根拠に基づいた回復プログラム」と説明。NASM(全米スポーツ医学協会)の理論をベースに、実践的かつ再現性の高いセッションを展開した。
参加者からは「どのセッションも実践的で満載度が高い」「グループレッスンへ発展させる道筋が見えた」といった評価が寄せられ、現場への即応性と再現性の高さが評価された。
同社で代表取締役会長を務めるジョン・B・ボードマン氏は「高度な知識を持つフィットネスプロフェッショナルこそが、最高の価値を提供できる」と述べ、教育を軸とした産業成長への信念を共有した。知識とツールを両輪とするTRXの理念は、単なるトレーニング提供を超え、会員の“結果と継続”を支える経営資産へと進化している。
教育と環境整備による成長循環へ
TRXピラティスは、2026年に正式なトレーニングコースおよびコンテンツのローンチが予定されており、多くの施設で導入が進む見込みだ。また、建築制約を受けずに設置可能な「フリースタンディングベイ」も登場し、施設環境の自由度が高まっている。
今後もイベントなどを通じてトレーナーとクラブ経営者を結ぶタッチポイントを拡大し、指導者育成と会員体験価値の向上を両立するエコシステム構築を目指していく同社。「教育が人を育て、人が価値を生み、価値がクラブを強くする」、その循環を支えるために、次なるステージへと進化を続けている。