2026年6月1日(月)、東京都港区の大規模オフィスビル「住友不動産東京三田ガーデンタワー」地下2階に、住友不動産エスフォルタ株式会社(以下、住友不動産エスフォルタ)が手がける高級ウェルネス施設「MITA GARDEN CLUB」(以下、MGC)がオープンした。フィットネス施設が多様化するなか、高価格帯に見合う施設・サービスの提供を通じて、独自のポジションの確立を目指している。
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住友不動産エスフォルタ株式会社直営事業部 部長河田邦博氏
最上位ブランド誕生の背景
MGCの構想は約4年前に立ち上がった。フィットネス業界が多様化・低価格化するなか、将来にわたり安定した運営を続けるための方策を検討した結果、たどり着いたのが住友不動産エスフォルタの最上位ブランドとなる高級ウェルネス施設だった。同社で直営事業部部長を務める河田邦博氏は、その背景について次のように語る。
「これまで総合フィットネスクラブ『エスフォルタ』で取り組んできた“都心×上質”というブランド価値をさらに強固なものとするため、今後も富裕層・エグゼクティブ層をターゲットに展開していくべきだという結論に至りました」
この方針は、高級賃貸マンション「ラ・トゥール」を展開する住友不動産グループ全体の方向性とも一致していた。加えて、グループ内での集客面における相乗効果も期待できる。こうして、1,375坪という広さを活かした、これまでにない高級ウェルネス施設の実現に向け、具体的な検討がスタートした。
「ここに来ること」が目的となる施設づくり
「この場所は駅から距離があるため、『ここに来ること自体が目的になる施設』にしようと考えました」。そう河田氏が語るMGCには、温浴施設、ジム、プール、スタジオ、ゴルフブース、アロマトリートメントのほか、管理栄養士監修の食事を提供するダイニング、広々としたラウンジなど、充実した設備がそろう。利用者がゆったりと過ごせるよう、各設備には十分なスペースを確保。洗練されたデザインと相まって、落ち着いた空間を演出している。
個室も完備するダイニングでは、軽食だけでなく本格的な食事メニューも提供しており、1人での食事はもちろん、複数人での会食にも利用できる。ラウンジもイベント利用を想定して天井を高く設計しており、運動の場としてだけでなく社交の場としての役割も担う。なお、車利用の会員が多いことや、温浴施設利用時の安全面を考慮し、現在ダイニングでアルコールは提供していない。
これまでに印象的だった会員の反応について、河田氏は次のように話す。
「若い経営者の方は、コストパフォーマンスよりもタイムパフォーマンスを重視する傾向があるようです。接待でゴルフをされる方も多いですが、渋滞に巻き込まれながら移動し、炎天下でゴルフをして、そのあと遅くまで会食を続けるよりも、MGCでシミュレーションゴルフを楽しみ、そのままサウナと食事を済ませて帰るほうが、健康的で時間効率も良いと感じていただいています」
ゲスト利用料金は3万円/日(税別)。ゴルフやサウナ、食事まで楽しめることから、接待利用の場としても価値を感じている会員がいるようだ。
高価格帯を支える接客サービス
入会金は30万円(税別)、月会費は10万円(税別)が基本。アロマトリートメントやダイニングでの飲食代は別料金となるが、それ以外の施設はレンタルウェアやタオル、シューズを含め月会費内で利用できる。
「料金設定については何度も議論を重ねました。最終的には、会員さまが快適に利用できる会員数を想定し、そのうえで損益分岐点を踏まえて会費を決定しました。月会費については『高い』というお声もありますが、入会金については会員制リゾートホテルと比較されることが多く、『安い』という反応をいただいています」(河田氏)
MGCでは、毎週休館日を設定してスタッフ研修と施設メンテナンスに充てることで、接客スキルの維持・向上と施設トラブルの抑制に取り組んでいる。研修内容はMGC専用のものではなく、住友不動産エスフォルタがこれまで培ってきた運営ノウハウをベースとしている。
「当初は我々もかしこまった対応をしていましたが、日頃から周囲に丁寧な対応を受けている方が多いためか、むしろ自然体でカジュアルな接客のほうが心を開いてくださる方もいらっしゃる事がわかりました」(河田氏)と、富裕層向けサービスならではの発見もあったという。
快適な顧客体験を提供する「hacomono」
MGCでは運用システムに株式会社hacomono(以下、hacomono)が提供するウェルネス・運動施設向けオールインワン・マネジメントシステム「hacomono」を導入している。これにより見学受付から入会後のチェックイン、予約、会費決済までをオンライン化し、さらに同社が開発した顔認証システムも導入。会員は顔認証によるチェックインも利用できるようになっている。
「会員さまは電話や来館をせずとも、スマートフォン1つで必要な手続きを完結できます。ビジネスやプライベートで多忙な方が多いため、余計な手間をかけさせない運用は非常に重要です。顔認証に登録いただいた方はスマートフォンすら不要なため、『手ぶらで来てください』とお伝えしています」(河田氏)
現金決済をなくしたことで、日々の締め作業も不要となった。スタッフが事務作業ではなく会員対応に時間を使えることも、サービス品質向上につながっている。
口コミによる集客拡大を目指す
事前告知は住友不動産が手掛ける高級賃貸マンションの「ラ・トゥール」の住人や住友不動産グループが運営するビルオーナー、さらに「エスフォルタ」の既存会員を中心に実施し、実際の入会につながっている。ヘリコプターで移動するような会員もいることから、富裕層をターゲットとした大々的な駅看板やポスターなどのマス向け施策は行っていない。
オープン直後の男女比は65:35。法人契約も多く、会員の中心は経営者や起業家、投資家だ。男性は40代、女性は30代がボリュームゾーンとなっている。富裕層向け商品の営業活動を目的とした人物が入会しないよう、入会審査は厳格に実施している。
今後について河田氏は次のように語る。
「会員さまは会食等の機会が多いため、その場でMGCについてお話しいただけることを期待しています。そのためにも、まずはご満足いただける施設運営とサービス提供を徹底していきたいと思います」
会員の多くはすでに独自のコミュニティを持っているため、施設主導で会員同士をつなげるイベントを開催する予定はない。ただし、会員が仲間を招いてイベントを開催したいという要望があれば、柔軟に対応していく考えだ。
高価格帯だからこそ実現できる顧客体験を追求するMGC。富裕層・エグゼクティブ層に向けた新たなウェルネスのあり方として、今後どのような存在感を発揮していくのか。その取り組みは、フィットネスクラブの新たな価値創造を考えるうえでも参考になりそうだ。