低価格ジムの出店が相次ぎ、多くのクラブが「会費をいくらにするか」という問いに追われています。

しかし同じ市場環境のなかでも、
・月会費が相場より高くても会員が集まるクラブ
・単価が高くてもリピートされるスタジオ
・退会率が際立って低い店舗
は確かに存在します。

その特徴とは何か。
ヒントになるのが、宿泊業界で独自のポジションを築いてきた星野リゾートの経営です。業種は違っても、「施設を持ち、人がサービスを提供し、顧客に継続して選ばれ続ける必要がある」という構造は、フィットネスクラブと驚くほど似ています。

今回は同社の経営から、クラブ経営に置き換えられる5つの視点を整理します。

◆視点1 「施設」ではなく「体験」を売る

星野リゾートが売っているのは、客室というハードではありません。その土地ならではの過ごし方と、滞在を通じて生まれる感情です。

フィットネスに置き換えてみましょう。多くのクラブは、マシンの台数、面積、会費といった「比較しやすい指標」で競っています。しかし会員が本当に対価を払っているのは、次のようなものです。

・理想の身体に近づけるという期待
・運動が習慣として続くという安心
・顔なじみの仲間がいる居場所
・「自分は変われる」という自己効力感

会員はトレーニングを買っているのではなく、自分の人生の変化を買っている。この前提に立つと、投資の優先順位が変わってきます。

◆視点2 「誰のためのクラブか」を絞り込む

星野リゾートは、星のや・界・リゾナーレ・OMO・BEBなど、顧客と滞在目的ごとにブランドを明確に分けています。一つの施設ですべての顧客を満足させようとはしていません。

クラブ経営でも同じことが言えます。初心者もダイエット層も筋トレ愛好家もシニアもアスリートも、と間口を広げるほど、誰にとっても「決め手のない施設」になりがちです。

例えば、次のように絞り込むと、提供価値が一気に具体的になります。

・「なんとなく痩せたい女性」→「40代女性の体型変化」
・「誰でも歓迎」→「多忙な経営者の健康管理」
・「一般的なフィットネス」→「医療機関と連携した健康改善」
・「筋トレ全般」→「ゴルフのパフォーマンス向上」
・「女性向け」→「産後の身体ケア」

ただし、絞り込みは商圏人口との