外資系戦略コンサルティング会社から、フィットネス総合商社を起業するという、業界では珍しいキャリアを持つ阿部信太郎氏。健康増進保険を基盤としたウェルネス・サービス事業の開発を目指す同氏だが、その第一ステップとしてフィットネス総合商社を始めた。前職での経験を活かした、単なるモノ売りにとどまらない提案手法や、目指すべき業界でのポジショニングについてお話しいただいた。

阿部信太郎氏
FIT Trading株式会社 代表取締役

健康増進型保険の実現を目指すも、その第一ステップとしてフィットネス総合商社を創業

阿部氏は大学時代、留学先のイギリスで、PureGymやThe Gymをはじめとする24時間セルフ型ジム(月額1,980円ほど)の勃興を見て、間違いなく日本でもこの流れがくると確信したそうだ。それをきっかけにフィットネスビジネスへ漠然とした興味が抱き始めた矢先、“健康になればなるほど安くなる保険”『健康増進型保険』の存在を知った。

「メジャー(専攻)とは別に、世の中の仕組みを理解することを目的として、主にFinTech(金融×テクノロジー)やInsTech(保険×テクノロジー)について個人的に学びを深めているなかで、健康増進型保険という事業コンセプトを知りました。調べれば調べるほどに社会的にも非常に意義がある事業だと感じて、いつかこの領域で勝負したいと思いました」

しかし、健康増進型保険を確かな事業とするために、まず何をすべきかを明確にできていなかった阿部氏は、一度ビジネスの視座を高めるという意味も込めて、すでに内定を貰っていた外資系戦略コンサルティング会社に入社する。

「前職では、主に日系自動車メーカーをはじめとする大企業の戦略策定プロジェクトに携わらせていただき、実際に大企業の事業戦略担当者や役員らとともにプレジェクトを進めていく中で、長期目標の達成に向けたロードマップの作成手法を学ぶことができました。そして、弊社が『健康増進型保険』の実現を目指す戦略のファーストステップとして、海外フィットネスマシンの代理販売事業を展開しました」

 

クラブ開業の初期費用を低減 お客さまの業界参入へのハードルを下げる

既述したように、阿部氏のフィットネスビジネスへの興味の入り口は、イギリスで見た24時間セルフ型ジムだ。実際に取材の中でも、「フィットネスクラブは健康増進型保険を展開していくうえでの物理的プラットフォームとして欠かせないものであり、いずれは事業として展開する予定です」と話している。それを踏まえると、健康増進型保険の最初の足がかりとしてクラブ事業を開業することも十分選択肢として考えられたはずだが、そうしなかった理由には、クラブを開業するうえで莫大な初期投資が必要となることがあった。

「クラブの開業には、最低でも数千万円が必要です。首都圏であれば、3,000〜4,000万円程度の資金があっても雑居ビルのフロアを借りての開業・運営するのが限界であり、私がイギリスで見た素晴らしいクラブを実現しようと思えば、店舗当たり1億弱の資金が必要になります。初期投資をできる限り下げることはできないかと考えた時、現在の領域にビジネスチャンスを見出しました。同じような悩みをかかえるお客さまに対して、高品質かつ低価格のパーツ(マシンやシステム)を世界中から取り揃え提供する代理販売事業であれば、初期投資もかからず、自身の持つリソースだけでカバーできると考えました」

莫大な初期投資を必要とするリスクの高いクラブ事業ではなく、自分がすでに持っているリソースで勝負でき、業界としてもニーズのある海外製品専門の代理販売事業をファーストステップとしたことは、賢明だったといえる。しかし、フィットネスマシンの国内市場規模はまだそこまで大きくないとはいえ、そのシェアは大手メーカーにほぼ独占されているが、どのように大手メーカーと差別化し、事業を拡大しているのだろうか。