株式会社クラブビジネスジャパンでは、毎年、前年のフィットネス業界についてまとめたレポート「日本のクラブ業界のトレンド」を発売している。そこから2019年のフィットネス業界と2020年のフィットネス業界のプレイヤーに求められる視点について一部紹介する。

フィットネス業界、成長続く

2019年(平成31年)は、同年10月より消費税が8%から10%へと引き上げられ、需要減が懸念されたが、市場規模は前年比3.2%伸び、およそ5,000億円へと成長した。史上最高の伸びを記録した2018年には及ばなかったものの日本の経済成長率を大きく越える伸びを示した。会員数は前年比8.1%増のおよそ560万人となり、参加率は4.4%となった。フィットネス市場は2012(平成24年)より少しずつ成長してきたが、2018年(平成30年)に初めて4%台へと伸びた(*日本の参加率は海外諸国に比べ厳密にその対象を規定しているために、単純に比較することはできない)。利用率も好調だった2016年(平成28年)~2018年(平成30年)とほぼ同水準で推移した。

そして2018年に引き続き、2019年もフィットネス業界には、以下のような特徴がみられた。

  1. 既存店のリノベーションとサービス拡充
    潜在需要の高いエリアに立地する既存の老朽クラブを移転新設、またはリノベーションしたり、サービスを見直し・拡充することで、会員定着を図りつつ、会員増を実現した。とりわけ、スタジオのホットヨガ対応、ジムの24時間営業化、HIIT系および、コンディショニング系のプログラムの拡充を図るクラブが多かった。集客のためのプロモーション面では、紙~ウェブへの移行が進んだ。
  2. スイミングスクール事業や受託部門の成長
    フィットネス部門以外では、スイミングスクールの入会者の増加、自治体や法人等からの運営受託(※指定管理を含む)などの増加も、増収増益に貢献した。ただし、スイミングコーチの求人には、各社苦労している。

ノンカスタマーを含む顧客層のトレンドとしては、以下の動きがみられた。

  1. 団塊世代と団塊ジュニア層の参加増
    日本の人口構造のなかでボリュームを形成する世代ー団塊ジュニア世代ーに対応した小規模目的型業態を展開するチェーン店の在籍者数が増えてきている。また、こうした2世代のユーザーは、有料のパーソナルトレーニングを受けることも多い。
  2. 都市部における24時間セルフサービス型ジムとブティックスタジオの流行
    都市部においては、24時間セルフサービス型クラブや暗闇系ブティックスタジオ、HIIT系スモールグループトレーニングジム(HIIT系SGT)を利用する20~40歳のユーザーが増えている。24時間セルフサービス型ジムは利便性と手頃な価格が魅力となっている。暗闇系フィットネスのヒット要因は、①没入感がある②人目が気にならない、周囲を気にしなくていい③非日常空間が体感できる④楽しみながらシェイプアップできる⑤(オンラインでの体験予約など)アクセスが容易、などがあると考えられる。HIIT系SGTは、短時間で効果的なトレーニングができることや同質的なメンバーらから生まれるトライブ感が魅力となっている。 
  3. スタジオエクササイズの定着化と多様化
    日本は、世界的にみてもスタジオの利用率が高い水準にある。特に、ヨガ(ホットヨガを含む)は日本では根強い人気がある。近年では、様々なスタジオエクササイズが開発され、参加層のすそ野が広がってきている。ピラティスやサイクル、子ども向けの運動スクールなどにも人気がでてきている。

求められる、新たなビジネスモデルの開発

 2019年以降、フィットネス業界のプレイヤーに求められる姿勢として、下記の3点を挙げておきたい。

  1. 新たなビジネスモデルの開発
    既存の総合業態の改善・改革も重要であるが、それとともに重要となるのは、顧客が満足してサービスを喜んで享受するだろう革新的な価値を備えたサービスや逸脱的なビジネスモデルの開発だろう。アプローチとしては、既存事業の周辺に新たな事業機会を探る方法と実現したい未来をイメージしバックキャスティングしてそこにたどり着こうとする方法があろう。

    今後は、HV/LP(High Volume/LowPrice)型か、付加価値型かどちらかに特化した業態を展開する戦略や、特定の商圏内において多業態でドミナント化を狙う戦略をとるプレイヤーが現れるだろう。ブティックスタジオなどに代表される高付加価値型業態を成功に導くポイントはCX(顧客体験)の向上にあり、その実現にはコンセプト、コンテンツ、コミュニティの3つのCがカギになるだろう。
  2. 生産性の向上
    生産性を向上させるためには、CX(顧客体験)の実現を見据えて、どのようにサービスデザインするかが最重要になろう。そのためには対象顧客が求める価値を明らかにしなければならない。顧客インサイトを捉え、顧客価値を実現するサービスデザインをしたい。

    さらに、基本的なオペレーションについては、「標準」の仕組み化に取り組み、将来に向かって品質が漸進的に良くなっていくように努めていくことが求められる。そこでは、デジタルテクノロジーの活用も重要になってこよう。
  3. 人材の確保と育成
    人材不足が深刻化していくことは明らかだが、そうした流れのなかで、いかに優秀な人材を確保し、とりわけ最前線でサービスを提供していくスタッフがいきいきと働けるようにするかが大切になってくる。とりわけ大切な人材は企画開発人材(イノベータ―)、支配人、トレーナー・インストラクターだ。経営者は、優良顧客や無消費者の声に加えて、彼ら彼女らのアイデアや提案も活かしてサービスを「共創」していくことが求められる。特に、上司には思いやり(母性)のリーダーシップが求められるようになってきている。