フィットネスビジネス編集部は、11月25日に『Fitness Business111号』を発行致しました。新型コロナウイルスの感染拡大により、今年は予定していた特集テーマを大きく変更してのお届けとなりました。

本年最後の号となる111号の特集テーマは「ポストコロナの組織づくり」。事業計画の見直しが迫られたり、テレワークなど働き方が変化したことで、企業に組織づくりそのものを見直す必要性が生じています。そこではどんなことを意識したらよいのか、業界内外の識者にお伺いしました。

以下に、特集内容の取材対象者や記事の一部をご紹介致します。

【取材対象者】

  • 株式会社チェンジウェーブ 代表取締役社長 佐々木裕子氏
    株式会社チェンジウェーブは、「組織変革アドバイザリー」「変革リーダー育成」「ダイバーシティ推進」「エグゼクティブコーチング」など、多様な視点から自己進化と企業変革を促し、創造性豊かな未来をつくり上げていくプロフェッショナル集団。企業を人材育成の観点から変えていく「変革屋」を標榜している。

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…「組織は戦略に従う」(チャンドラー)と言うが、先が読みにくく変化していくことが求められる時代だからこそ、組織以前にこれからの戦略やビジネスモデル、業態・サービスといったビジネスの基盤になることをまず見直し、戦略整合性のある組織にしていくことが重要になるのだろう。また、佐々木氏は次のようにも指摘する。

「そういう本質的な課題に対応したビジネスモデルや業態・サービスを生み出していけるような組織にどのようにしたら転換していけるのかと考えていくことも大切になるでしょう。例えば、『フィットネスクラブ』という事業ドメインを根本から見直し、既存顧客に加え新しい顧客にも何か新たな価値を提供できる業態・サービスを自ら生み出していくことが求められるのではないでしょうか。卑近な言い方をするのなら、これから何屋さんになっていくのかと考えることが大事になってくると思います。しかも、その何屋さんという定義がこれから数年ごとに変わっていくのではないかとも思います」

それぞれのメンバーが、改善レベルではなく、まさに変革レベルで自社のあり方を問い直し、戦略的なアイデアを積極的に発し、ヘルシーに議論できる環境が必要とされてきているようだ。コロナ禍の影響で、beforeコロナと比べ、いまだに休会者も含めて2~3割ほど在籍会員が減少した状態が続いているというのなら、既存顧客の一部に対してオプション商品・サービスを考え、客単価を上げつつ、これまで対象にしていなかった顧客の課題に対応したソリューションをオンラインで提供するなどして新しい需要および潜在市場を開拓し、O2Oの流れをつくっていくことなどが求められるのではないか。

いずれにせよ、beforeコロナと同じような対応で、復会を促し在籍会員数を回復させようと考えるのはナンセンスということだろう…(続きは誌面にてご覧ください

  • 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏
    4度の起業経験を経て、お金視点ではなく幸せ視点で経営することがいかに大切であるかに気づき、イノベーションの実現と組織づくりに関するメソッドをそれぞれ体系化して、学習院大学やビジネス・ブレークスルー大学の教壇に立ち講義を行うとともに、自身が主宰を務めるhintゼミ(※オンラインによるグループ学習で、経営学クラス、イノベーションクラスがある)でも多くのビジネスパーソンや学生らにも指導サービスを提供している。

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…斉藤氏は、今まさに未曽有の危機に接し、企業の「組織能力」が試されているのではないかと述べ、経営者の思考は、(1)以前の状態に戻そうとする(2)ジョブ型雇用に変え、ツールとしてテクノロジーを活用し、成果を管理する(3)変化の本質に気づき、組織を根元から革新する、のいずれかのタイプに分かれるのではないかと予測する。この(1)(2)は、それぞれ管理主義、新管理主義と呼ぶことができ、いずれにせよ社員を管理しようとする傾向がうかがえる。

一方、(3)は自律主義といえ、社員を信頼しようとする傾向がうかがえる。いわゆるお金視点の管理型組織と幸せ視点の自律型組織では、チームの駆動メカニズムが根本から異なる。自律型組織は、性悪説で社員を見て制度をつくって管理するのではなく、性善説で社員を見て一人ひとりの社員がいきいきと自律的に動けるような組織だ。

「ただし、注意しなければいけないのは」として、斉藤氏は「一見自律型に見えるようでも、安易なアプローチをすると『放任型組織』となってしまう危険性があります。放任型組織では、頑張る人、頑張ってはいるものの組織が向かうべき方向とはまったく違うところに突き進む人、フリーライダー(タダ乗りしているだけの人)といったようにいろいろな人がバラバラに混在し、求心性が薄れます。結果、組織としてのパフォーマンスが上がらず、元の管理型組織に戻っていくことがあります」と指摘し、かたちだけの自律型組織にならないように注意を促している…(続きは誌面にてご覧ください

  • 株式会社東急スポーツオアシス コーポレートデザイン本部 人事部 部長 江崎貴史氏
    「ひと、とき、輝く。」をコーポレートメッセージとして掲げ、関東圏、関西圏に、総合業態を中心に施設展開し、お客さま志向の運営で知られる株式会社東急スポーツオアシスの人事部にて、長く社員の育成に携わる。近年は、その教育プログラムを外部に向けて販売も開始している。

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…まずこのコロナ禍の影響を受けて、取り組んだ人事・組織に関する諸施策について、訊いた。

「市場のニーズが大きく変化したことにより、それに合わせた事業転換が急務となりました。戦略的に今後取るべき事業展開を見据えたうえで、コロナ禍においても収益を伸ばせている部門、あるいはポストコロナにおいても伸びる可能性の大きい事業にも要員バランスのウエイトを置けるように要員体制を見直しました。具体的にはコロナ禍のなか、家庭用運動器具を販売するホームフィットネス事業の販売は順調に推移していましたので、顧客からの注文に速やかに対応できるよう要員を補充しました。また、既存事業だけでなく、これからの環境変化を見据えた新規事業の開発に向けてという視点から、そこには先行投資をして要員を配置することにしました。このような時期において大切なのは、ピンチをチャンスに変えるアイデアを出し、人的資源を投下してスピードをもって実行していくことだと考えています」

他方で、感染対策や会員の復会~定着などを担う既存事業への人的資源の配分は、どうしたのだろうか。

「本社要員を異動させて店舗を強化すべきではないかといった意見もありましたが、そうすることが経営に与える影響を中長期的に捉えて判断すべきと考えました。当社の場合、一口に本社スタッフといっても店舗の運営サポートを担う要員が約6割、残りの約2割がホームフィットネス事業などのいわゆる店舗事業以外のプロフィットセンター(収益部門)、さらに残り約2割が人事・総務・経理などの一般管理部門という構成です。一般管理部門は、全従業員の7%程度です。コロナ禍において、店舗の運営をサポートする部門には、休業に伴うお客さまへの対応、レッスンやスクールの休止や再開に伴う判断・対応など、通常にはない業務の負荷がかかります。また、インストラクターやトレーナーを含めた従業員の休業補償などで一般管理部門も業務が膨らむ傾向にありました。こういった要員を安易に削減すると、本社スタッフの就労環境を著しく悪化させるだけでなく、結局のところ店舗運営にも影響が及ぶことになります。会員数が減少するなか、本社の人材が店舗に異動することで、店舗の経営効率が悪化することも長期的にはマイナスです。また、店舗で頑張ってくれているアシスタントスタッフ(パート・アルバイト)のシフトもその分減らさざるを得なくなる可能性があります。生活のために辞めていかざるを得ないスタッフも出てくるかも知れません。そうなったときに、再び優秀なアシスタントスタッフを雇用することは難しくなるはずです。むしろ、この状況を変革のチャンスと捉え、これからの環境変化を見据えた新規事業の開発に先行投資して要員を配置することが必要だと考えました」

コーポレートメッセージの「ひと、とき、輝く。」でも、一番に「ひと」を挙げているように、実際の人事でも、アシスタントスタッフまで含めた全従業員を大切にしていることがわかる。とはいえ、…(続きは誌面にてご覧ください

  • 桜宮ゴルフクラブ株式会社 代表取締役社長 川﨑益彦氏
    一般社団法人日本能率協会が、ISO9001 を活用し、事業とマネジメントシステムを一体化させて優れた経営を実現している企業を毎年5社選んで表彰する「JMAQAAWARDS」。このアワードに2018年、サービス業から唯一選ばれたのが桜宮ゴルフクラブ株式会社。大阪・梅田駅から車で数分の場所にある都市型ゴルフ練習場(120ヤード93打席、貸切バンカー、無料パターグリーンなど)で、昨年12月からは低酸素トレーニングルームと高酸素スタジオもオープンしている。施設周辺のエリア人口の増加のほか、同社独自の従業員重視の運営から、練習場を含むゴルフ市場が低迷するなかでも好業績を維持している。

本文紹介>>…コロナ禍の影響を受けて、人事・組織や働き方という点で変えたところ、また変えなかったところについて、まず訊いてみた。

「コロナ禍で緊急事態宣言が出て、出勤者7割減の要請が出たためアルバイトには給与を100%支給し休んでもらうことにし、また従業員(正社員・準社員)を多能工化し、時短にすることで営業を継続しました。緊急事態宣言解除後はアルバイトを全員復職させ、社員については週休3日制にするなどの対応はしましたが、基本的な経営方針や会社の文化は変えていません」

川﨑氏はこう言い、現在、同社がよりどころにしている「顧客サービス基本方針」を示し、「お客さまが元気に楽しく練習できるゴルフ練習場」と謳っているところに特徴があると指摘する。

「上達できる」とか「うまくなれる」ではなく、こう謳うのは「元気に楽しく」利用してもらうことによって、お客さまと長く友好的につながっていたいと考えたからだ。「『うまく』と謳えば、一定のレベルまで上達したらつながりがなくなってしまうかもしれない」。こう同氏は考えたという。

ここまで説明した後、川﨑氏は「実は、この基本方針を支えるもう1つの方針があるのです」と語り、それが「従業員が安心して働けること」だと明かす。今では、「顧客満足よりも従業員満足のほうが重要」と言い切る同氏だが、なぜこれを確信するようになったのだろうか。川﨑氏が社長に就任した後も、しばらく同社にはアルバイトを含む従業員全員が納得できる経営理念がなく、年度目標も設定されていなかった。一貫した運営システムや教育システムなどもなく、従業員らはそれぞれに一生懸命働いているだけだったという。そこで、経営・運営の理念やシステムを従業員が積極的に絡んで構築~実行していけるように、同氏はアルバイトを含む全従業員の一人ひとりと年2回個別面談を行うことにした。

この面談が実にユニークで、川﨑氏は「インタビューゲーム」と呼んでいる。その方法は、…(続きは誌面にてご覧ください