株式会社Fast Fitness Japanが経営するエニタイムフィットネスを筆頭に、昨今急激に増えてきている24時間営業のジム。最近では、総合型のジムを24時間化する動きさえも見られている。
そこで本記事では、24時間型のジムが急増している背景と、経営におけるメリットやポイントを網羅的に解説する。
24時間営業のジムを経営する企業が増えた背景
なぜ今、24時間型のジムが増えているのか。その理由はいくつかあると考えられるが、大きな背景としては情報の入手が容易になったことが挙げられるのではないだろうか。
今やネット検索やYoutube、SNSなどで「筋トレ」・「ダイエット」と調べれば、その方法を解説しているブログや動画は無限に出てくる。若者(元々スポーツをしていた人は特に)であれば、実際にそれらを見ながら家やジムでトレーニングを行うことで、ある程度の成果を得ることはできるだろう。
そうなれば、もはやジムに必要なのは器具だけでよく、セキュリティさえしっかりしておけばスタッフをおく意味もほとんどない。スタッフを常駐させる必要がないのであれば、時間の制限をなくし、ジムをただトレーニングができるスペースとして24時間開放しておくことで、比較的安価で様々な生活習慣の人が利用できる。
また、タイムリーな話だと、新型コロナ禍でなるべく人との接触を避けたいと考える人が増えているというのも背景にあるだろう。
24時間営業のジムを経営する3つのメリット
では、24時間型のジムは、事業者側にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
若年層への集客効果
既述のように、若年層はトレーニングできるスペースさえあればよいと考える人が多いため、余計な設備やスタッフの介入を排除した24時間型のジムは彼らにとっても都合がよい。また、総合型と比べて会費も安価で手を出しやすいため、昨今の筋トレブームと相まって若年層から高い支持を得ている。
コストがかからない
24時間営業のセルフサービス型ジムは、必要なスペースもそこまでないため、ジムを経営するうえで最もコストのかかる「家賃」を抑えることができる。また、お客さまの属性上、最低限の設備もマシンとシャワーだけでよいことが多く、初期費用・維持費ともに比較的安価で済むとされる。
新しい生活様式にもマッチ
24時間営業のジムを経営するメリットとして、新型コロナ下における新しい生活様式に非常にマッチしていることも挙げられるだろう。
スタッフとの接触もほとんどなく、24時間営業のため比較的人の少ない時間帯(早朝や深夜)を利用客自身で選択できる。
また、総合型やスタジオ型と違い、コロナ禍で制限される設備がない。総合型では、感染者が増えればまず最初にプールやサウナを閉鎖する必要があり、スタジオ型も閉鎖とまではいかなくとも大幅に人数を制限する必要がある。
上記のような設備・サービス目当てで通っていた利用客にとっては、ジムに通う目的を失うことになるので、次第に休会/退会していき、家賃を含む施設維持費は変わらずに売り上げだけが落ちてしまうことになる。
一方で、元々ジムスペースだけを目的として入会している層が多い24時間型では、制限にとらわれることがないため、利用客の期待を落とすことなく営業できる。
24時間営業のジムを経営するうえでの不安要素
24時間営業のジムでは、ジムのセキュリティはもちろんのこと、トレーニングをしているお客さまの安全性の担保や治安の維持が課題とされる。
スタッフが常駐していれば、危険なマシンの取り扱いやバッドマナーに対してもすぐに対応できるだけでなく、スタッフの存在がある意味での抑止力になる。
しかし、スタッフがいない深夜〜早朝にかけての時間帯では、監視カメラやお客さまからの報告などのみでしか問題に気づけず、対応が後手に回ってしまう。
実際に、ダンベルやマシンのプレートを使いっぱなしにしたり、長時間のマシンの独占、ほかのお客さまへの迷惑行為などが、決して低くない確率で発生しているとよく耳にする。
24時間営業のジムを経営する3つのポイント
24時間型のジムを経営するうえで、重要となる点は何なのだろうか。
他店との差別化
24時間営業のセルフサービス型ジムの市場はすでに飽和しており、他店のコピーではもはや集客が難しい。
例えば、一般的に24時間型ジムの男女比は8:2で男性が圧倒的に多いため、男性を捨てて女性専用クラブとしてプランニングすることで、競合とバッティングすることなく企画をすることができるのではないだろうか。
利便性の徹底
既述の通り、24時間型のジムを利用する層は若年層が多く、比較的ネットリテラシーも高いため、入会の手続きにリアルでの対面が必要なことを億劫に感じてしまう人もいるだろう。
また、コロナ下において、スタッフとの接触がないからと24時間型ジムを選ぶ人もいるなかで、入会の際には必ず対面しなければいけないというのもナンセンスだ。
「hacomono」などのシステムを導入することで、お客さまは空いた時間にスマートフォンで手続きでき、スマートフォンやICカード1枚ですべて完結できるため、利便性の向上につながる。
既存サービスとのミックス
すでにスタジオ型やサーキット型など別業態として経営しているジムであれば、上手く24時間化することで集客アップを期待できる。
これまでのデータから予約や来店が多い時間のみスタッフを常駐させてこれまでどおりのサービスを提供し、それ以外の時間帯はひとまずスペースと設備だけを提供し、スタジオを自由に使
いたい方や深夜にサーキットマシンをサクッと利用したい方に開放することで、新規層の開拓および単価向上を狙うことができるのだろう。
24時間営業で経営するジムの成功事例
いくつかある24時間型ジムの成功事例として、株式会社HGプランニングが運営する「StudioTRIVE(以下、トライブ)」を紹介する。
トライブは、2017年にレズミルズプログラムに特化したスタジオとしてオープン。30〜60代の女性を中心に月会費会員約320名、都度利用会員約500名と順調に運営していたが、新型コロナウイルス禍により、スタジオのキャパシティを大幅に減らさざるを得ず、スタジオを拡大することにした。同時に、以前から展開したかった24時間型のマシンジムを6階にオープンすることとした。
フリーウエイトエリアを充実させる一方で、有酸素マシンは自走式のランニングマシンとバイク2台のみ置いている。有酸素運動はスタジオで、ウエイトトレーニングはジムエリアで行ってもらうという算段だ。
プリコーがソニーと提携して運用しているデジタルソリューション「アドバジム」を導入しており、動画によりマシンの使い方を説明したり運動履歴の蓄積やコミュニケーションのツールとして活用することで、ほかの24時間型ジムと上手く差別化している。
まとめ
24時間型のジムは急増しており、その市場はすでに飽和しかかっている。同業態のメリットとして、比較的小規模でコストがかからないことを本記事で挙げたが、独自の価値を生み出すためには、従来よりもコストや手間をかけて上手くほかのジムとの差別化を図っていくことが必須となるかもしれない。