株式会社TSGJapan(以下、TSG)はグローバルシステムソリューションを手がける企業で、ニュージーランドに本社を置く日本法人である。会員制ビジネスおよびフランチャイズビジネスと相性抜群なソリューションに強みをもつ。このたび、日本でもエニタイムフィットネスへの導入が3月から始まることとなった。

TSGのグローバルシステムと日本のマーケットについて

TSGはパートナー会社のMembrFitnessとともにシステムを開発している。MembrFitnessは英国を拠点とする優れたCRMを備えた企業だ。世界各地の多くのフィットネスクラブに広く導入されており、使い勝手のよさに定評がある。

TSGとMembrFitnessJapanは、顧客の希望をヒアリングし、協力して日本のクラブにフィットするCRMシステム開発を続けてきた。

国内ではすでに日本発祥のペイメントシステムやCRMソリューションが利用されているなか、ニュージーランド発のグローバルシステムを導入するまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

難易度の高い国内プロジェクトを成功へと導いた軌跡

経緯は2018年にまで遡る。日本法人を設立したが、一向にプロジェクトは前進しなかった。

理由は2つ。1つ目は、すでに日本で使い慣れているシステムに比べて、シンプルなグローバルシステムのローカライズが難航したことだ。

店舗数も多く、すでに導入しているシステムの変更は顧客にとってチャレンジで、ローカルシステムとの溝を埋めることに時間を要した。

2つ目は、リーダーの不在である。そこで白羽の矢が立ったのがオリーヴィエ・ヴァンダーキャム氏(以下、オリーヴィエ氏)だ。同氏を’19年12月にアジアCEOとして迎え入れてから、プロジェクトが前進した。

同年、TSGはAdventInternationalというグロース投資を得意とする世界有数の投資会社の傘下に入ったことも、プロジェクトを後押しした。キャッシュが潤沢になったところで、TSGは世界のヘルスケア・フィットネスサービスを複数傘下に収めることに成功。グループ全体の規模を拡大させていき、グローバルカンパニーとしての地位を確かなものにしていった。

人材面の体制が整ったところでプロジェクトがさらに加速していった。

TSGの手掛けるシステムを導入するベネフィットとは

この、TSGのグローバルシステムを利用するメリットは5つ。

まずはグローバル基準の顧客管理を行えるため、海外進出を容易にする。近年日本初のフィットネスクラブのアジア進出は加速傾向にある。TSGはグローバルの強みを活かして、海外進出のサポートを強力に行うことが可能だ。

直営およびフランチャイズビジネスのサポートも充実しており、柔軟にビジネス構想を行える。

コストも大幅に削減できる。完全クラウドを実現し、スタッフの日々の業務量削減を実現する。効率が向上し、運営コストも抑えることが可能だ。

最後は、海外で活用されている同社の傘下にあるサービス、主にアプリケーションを導入できる点だ。

これだけのメリットを享受できれば、手間のかかるシステム変更にも重い腰が上がるのは頷ける。TSGのソリューションは以下の画像のようになる。

TSGは今後もフィットネスを中心として、会員制ビジネスのサポートをアジアに拡大していく。

今回、日本でエニタイムフィットネスを展開する株式会社FastFitnessJapan(以下、FFJ)の1店舗目で納品が完了した直後に、同社社長の土屋敦之氏と、TSGJapanでCEOを務めるオリーヴィエ氏を迎え、導入の経緯および今後の展望について訊いた。

TSG Japan CEO オリーヴィエ氏(左)、Fast Fitness Japan 代表取締役社長 土屋氏(右)

(以下、敬称略)

土屋:米国のAnytimeFitnessからは共通のCRMシステムを利用する方針を以前から示されていました。マスターフランチャイズ側が新しいアプリを導入しても、CRMシステムが共通でない日本では導入ができなかったからです。それが今回のTSGのソリューションによって解決できるので、会員さまにより利便性の高いグローバルサービスを提供できるようになりました。

オリーヴィエ:加えて言えば、完全なクラウドシステムなので、コストメリットが大きいです。これはフランチャイジーも喜ぶ点です。AnytimeFitnessは米国発祥ですが、グローバルなカンパニーであり、全世界に店舗を展開しています。

土屋:もうすぐ全世界で5,000店舗が見えてくるところまで来ています。

オリーヴィエ:日本でも、そのグローバルなサービスを導入することで、会員さまに利便性を感じていただけます。

土屋:導入の経緯は、’19年12月にオリーヴィエさんがプロジェクトリーダーに就任してくれたことです。彼のリーダーシップ、言語面でのサポートに大いに感謝しています。3月に導入した店舗でシステムが動き出した瞬間は感慨深いものがありました。

オリーヴィエ:元々土屋さんとは関係がありました。まずミーティングからスタートし、その後に開発パートナーであるMembrFitnessがあるイギリスへ飛びました。その結果、まずはFFJとTSGがそれぞれプロジェクトチームを組成することになりました。重大な意思決定は土屋さんと私で行うという体制で進めていきました。たいへんな仕事だったからこそ、今回の導入は大きな達成感を得られました。

土屋:やっとの想いで1店舗にシステムが入りましたが、そこから導入店舗数が増えていくにつれて、TSGとの関係性が今後さらに深まっていくことを期待しています。

オリーヴィエ:最初は2人で進めていたものが、今はチームとして関係性を築くことができました。そこが1年間のプロジェクトのなかで一番の進歩だと思っています。これがないと次のステップには進めません。

土屋:次のステップとして、新規出店する店舗にシステムを速やかに導入していきます。もちろん、既存店のシステムについても、従来から利用しているものから新システムへ移行(マイグレーション)していきたいと思っています。そうすることで、エニタイムフィットネスがずば抜けて素晴らしいと言えるサービス提供ができると思います。

オリーヴィエ:日本の経営者のなかでも、土屋さんはイノベーターですから、今後もフィットネス業界で革新的な取り組みを続けてくれると思っています。

土屋:そう言ってもらえると嬉しいです。さらなるイノベーションを目指し、FFJは昨年末IPOをしました。資金調達はもちろんですが、ブランディングにより重きを置いて上場を選択しました。元々’20年3月の上場予定を新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響で一度延期しましたが、上場後も新規出店を加速させていくつもりです。

オリーヴィエ:まずは上場おめでとうございます。たった10年でここまで会社を大きくできるところはほとんどないと思います。

土屋:ありがとうございます。私はコロナの影響で、かえって運動したいという機運は日本全体で高まったと思います。コロナ初期は自宅での運動が流行りましたが、日本の住宅事情では限界があります。そういう人たちがしっかり運動をできる場所を提供していきたいと思います。

オリーヴィエ:私も同意見です。コロナ前の生活に完全に戻ることはないですね。

土屋:フィットネス参加人口が低い日本ではまだまだ成長余地があります。

オリーヴィエ:利便性を兼ね備えた低価格のフランチャイズビジネスがさらに加速していくでしょうね。

土屋:そうですね。FFJが今後もエニタイムフィットネスを運営し、24時間ジムのナンバーワンブランドの地位をしっかりと固めていきたいと思います。