岐阜県可児市に本社を置く株式会社アクトス(以下、アクトス)は「すべての人々を健康で幸せにしたい」というコンセプトのもと、スポーツクラブ「アクトス」の運営のみならず、地域(自治体)・職域(企業)の健康政策をサポートするヘルスケア事業を行っている。今回は、介護予防に寄与する取り組みを中心に訊いた。時代に合わせ、オンライン活用に着手している。
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福澤厚史氏株式会社アクトス 営業本部 アクトス事業部 次長
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吉岡大海氏同 健康事業推進部 次長 兼 ヘルスケア事業課 課長
10年以上におよぶ健康事業推進部の取り組み
アクトスの健康サポート事業が誕生した経緯は10年以上前まで遡る。当時からスポーツクラブを運営するなかで、近隣の企業や自治体からの「運動教室の講師をお願いしたい」というニーズに応え、インストラクターを派遣するようになったことがきっかけだ。
その後も同様の問い合わせが増加し、専門部署である健康事業推進部を発足。愛知、岐阜、三重エリアを中心に、年間約100団体、およそ20の自治体から業務を受託してきた実績を誇る。
現在提供しているサービスは、多岐にわたる。まず、出張運動教室は企業の社内運動会や市町村の健康啓発イベントといった場に対し、体力測定および体組成測定といった「健康づくり」のエッセンスを加えて運営している。
スポーツクラブ運営ノウハウを利用し、企業向けに「フィットネスルームコーディネート」も行っている。
介護予防プログラムは自治体からの委託事業を中心に運営。多いときでは30人程度の高齢者が地域から参加されることもある人気プログラムだ。
提供するプログラムの内容は「運動器の機能向上」「転倒予防」「栄養改善」「口腔機能向上」「認知機能低下予防」などであるが、画一的なプログラムではなく、各自治体の要望や参加者の属性に合わせて提供する。
身体的な健康増進のみならず、参加者同士の交流をとおして精神的な健康や「閉じこもり予防」といった社会的な健康にまで好影響をもたらしている。
ヘルスケア事業とスポーツクラブ運営の連携
ヘルスケア事業は主軸事業のスポーツクラブ事業にも相乗効果がある。
これまでスポーツクラブへの入会に無関心もしくは関心はあるが二の足を踏んでいた層は、ヘルスケアプログラムへの参加をきっかけにスポーツクラブを身近に感じることができる。
ときには、プログラム参加者に対して施設利用券の付与やキャンペーンを企画し、健康づくりが継続するよう背中を押すことで入会にもつなげている。
自治体の高齢者向けの介護予防事業も同様だ。運動習慣がなかった高齢者は、同社が提供するプログラムに参加すると効果を実感しやすい。さらに、体力測定、体組成測定を通じて数値としても変化を確認できる。気持ちの部分も前向きに変化し、外出が増える。この好循環のなかで、アクトスへ目を向ける人々が増えていくのである。
‘21年4月からはアクトス全店でWBI(体重指示指数)を測定するキットを設置。大腿四頭筋を伸展させる力を体重で割った数値だ。WBIが1.0で正常、それ未満になっていくと徐々に生活に支障をきたし、0.4未満に減少すると歩行は困難になるとされる。
この数値は、外出自粛の影響で運動頻度が低下した者では顕著に悪化し、スポーツクラブでの運動再開によって回復したというデータをアクトス独自で調査し、公表している。
高齢者は特に、この数値を参考にしながら介護予防に励める。
介護予防プログラムのオンライン化を推進
昨今の新型コロナウイルス(以下、コロナ)の蔓延により、従来のようにリアルの場で大人数が集まるようなプログラムの開催が難しくなっている。その背景からヘルスケア事業は、特に困難が予想される介護予防の事業においてもオンライン化に舵を切る。
「もちろんフォローは必要ですが、スマホを利用する高齢者も以前より格段に増えています。我々の方から『高齢者には無理』と決めつけずに、Zoomなどの操作方法の説明やリハーサル機会の提供までをサービスとして、事業展開にチャレンジしていきます」と吉岡氏は話す。
オンラインだからこそ、細心の注意を払う必要が出てくる。すぐにスタッフが駆けつけられる形式ではないことをふまえ、画面越しのコミュニケーションを通じた細やかな配慮や、万が一の事故に備えた安全管理フローの構築が必要不可欠だ。
スポーツクラブに通っていない人にもアクトスをきっかけに健康になってもらいたいという同社のDNAが引き継がれた事業へと成長していくだろう。