株式会社サップス(以下、サップス)は2021年4月16日より「六甲山アドベンチャースクール」をスタートした。六甲山観光株式会社(以下、六甲山観光)と業務提携契約を結び、4月3日にオープンした「六甲山アスレチックパークGREENIA(グリーニア)」でプログラムを提供している。子どものみならず、大人も一緒になって楽しめる大自然でのキャンプも展開する同社の新たな取り組みに迫る。

  • 岩下卓仁氏
    岩下卓仁氏
    株式会社サップス 施設事業部チーフ兼六甲山アドベンチャースクール
  • 柳楽 晃氏
    同 施設事業部サブマネージャー兼六甲山アドベンチャースクール

兵庫県神戸市の大自然 六甲山での取り組みの歴史

サップスの六甲山での取り組みは’11年にまで遡る。スキースクールの運営を受託開始し、’16年には六甲山カンツリーハウスに出向を開始し、アウトドアウエルネスプログラムを六甲山観光と共同で運営してきた。

そして、’21年4月3日に日本最大級のアスレチック施設としてスタートを切った六甲山アスレチックパークGREENIA(以下、GREENIA)がグランドオープン。アスレチックがなんと164種類あり、大人も童心に帰って楽しめる。人気動画クリエイターであるフィッシャーズが監修する水上アスレチックも人気だ。

そこでのプログラムは、前身となる六甲山カンツリーハウスの延長線上にある。今回の取り組みでは業務提携契約を結び、従来と変わったのは運営スタイルだ。共同でプログラムを運営していたのを、サップスは運営、六甲山観光は施設の提供というかたちの分業体制へと移行した。

『アドベンチャー6』やキャンププログラムがリニューアルスタートしたが、実は前身時代からのリピート客が多いという特徴がある。ファミリー向けのみならず、キャンプ初心者もソロで安心して参加できるように設計されている。六甲山の大自然が人々を虜にするのは想像に難くない。

アクティビティから始まるキャンププログラム

プログラムは2種類ある。日帰りのデイキャンプと、1泊2日のキャンププログラムだ。そのなかに、各種アクティビティや六甲アドベンチャー6が組み込まれている構成だ。自然豊かな六甲山でのウエルネスプログラムという位置付けになっている。

まず、GREENIAか六甲山天覧台に集合し、トレッキングからスタートする。そのコースには、兵庫県屈指のパワースポットである「六甲比命神社」や、日本最古のゴルフ場である「神戸ゴルフ倶楽部」などがあり、見どころが満載だ。トレッキングのほか、マインドフルネスヨガを大自然で楽しむオプションも用意している。

キャンプでの醍醐味はアウトドアクッキングだ。デイキャンプの場合は昼ごはん、キャンププログラムの場合は晩ごはんと朝ごはんを調理する。曜日毎にカレーかBBQを屋外で食べる。道具の用意はすべてスクールで行うので、参加者は手ぶらで参加できるようにすることで、初心者にもハードルを下げている。テントの設営も行う。家族や子どもたち同士で力を合わせてテントを組み立てるのは、貴重な経験と思い出になる。

多様なライフスキルを育む六甲アドベンチャー6

今回取り上げるなかでメインとなるのは、プログラムのなかのひとつである六甲アドベンチャー6。コンセプトは「六甲山で知る・楽しむ・生きるココロとカラダで感じる場所へ」。このプログラムは子どもたちに様々なライフスキルを、遊びながら仲間たちとともに体験学習を通じて身に付けてもらうことを目的にしている。六甲アドベンチャー6という名称からも読み取れるように、そのライフスキルは6つある。

  1. 知る力「自己認識と共感」
  2. 考える力「創造思考と批判思考」
  3. 人と関わる力「コミュニケーション」
  4. 行動する力「意思決定」
  5. ストレスとうまく付き合う力
  6. 『わくわくドキドキ』の力

1~5までは、’94年にWHO(世界保健機関)が提唱した5つのライフスキルを基にしており、それにプラスして『わくわくドキドキ』の力を育むことで、子どもたちは人生を楽しむ力を身に着けることができる。

このプログラムは、大きく分けて4つのステージで進行される。まずはアイスブレイキングステージ。心と体の準備と相互理解を促す段階だ。初めて出会う仲間と自己紹介し、ニックネームをつけ合う。このとき、インストラクターはマスクの下であっても表情をしっかりとつくり、子どもたちの心を開くように心がけているという。

次がコミュニケーションステージ。2人組から始めて、徐々にグループの人数を増やしていきながら、協力・協同を助長する活動を行う。

そして、トラストステージ。子どもたちに少しずつ難しい挑戦をさせながら集団での信頼関係の構築を促す。例えば、5cm幅のベルト状のライン上を綱渡りのように歩く「スラックライン」などだ。バランス感覚や集中力が必要で難しい。得意な子と不得意な子が現れるが、お互いに声がけをして乗り越えられるような力を育む。多様性と価値観の共有、共感も生み出す。

最後がイニシアティブ・課題解決ステージ。参加者全員がグループで挑戦する。例えば、人間椅子(ヒューマンチェア)だ。全員が同時に呼吸を合わせて取り組まないと達成できない。目標達成能力、意思決定力、リーダーシップやフォロワーシップといった多様なスキルの習得を目指すプログラムとなっている。

主なターゲットは学校団体だ。大人数で参加すればするほど、課題の難易度も高まる。それを達成できたら、子どもたちも成長を実感できるわけだ。さらに、この夏は「ナイトアドベンチャー6」を新たにスタートする。

三密を避け、アウトドアで非日常な体験を提供

ただ、兵庫県における緊急事態宣言の発令が重なってしまったことで、実は当初予定していたスケジュールより後ろ倒しでのスタートとなった。GREENIAも5月11日まではパーク自体がクローズした。そこから緩和があり、実施自体は行えるようになったが、依然として自粛ムードが強かった。

しかし6月以降は風向きがやっと変わり、徐々に参加者を集めることができている。もちろん、前身時代からのリピーターも多く参加する。コロナで学校行事が軒並み中止になった学校団体など、1,000人規模の団体から問い合わせが増えてきている。コロナを気にせず遊べるエリアとして脚光を浴びつつあるのだ。

子どもたちは楽しみにしていた修学旅行などを我慢しなければならず、ストレスを抱えている。そういった子どもたちに六甲山の豊かな自然のなかで、思いっきりアスレチックや六甲アドベンチャー6で遊ぶことが、どれほどのストレス発散になるだろう。子どもたちの身体的健康とメンタルヘルス、いわばウエルネスの問題を解決する重要なパートナーとなっている。

六甲山の多くの資源を活用し兵庫県の魅力の発信源に

「この六甲山を中心に、兵庫県の魅力をもっと多くの人に伝えていくことが私たちの目標です」と岩下氏は熱く話す。それは子どもたちに限らず、大人にとっても同じだろう。人間、建物のなかに閉じこもってばかりいたら、身体も心も健やかではなくなってしまう。たまには太陽や風、新緑の森や池といった自然と触れ合い、十分な距離を取ったうえでマスクを外して綺麗な空気を吸い、おいしいごはんを仲間とつくって食べる非日常も、生きるうえで必要なことだ。

ぜひ一度、六甲山に足を運んでみて欲しい。GREENIAや六甲山上のケーブル駅で、温かくお出迎えしてくれるはずだ。もし子どもを一度でも連れて行ったら「また行きたい」とせがまれるに違いない。