Les Mills Japan合同会社(以下、レズミルズ)はLES MILLS Virtualを数年前より提供を開始。レズミルズの提供するプログラムを会員さまに映像プログラムとして提供できるサービスだ。その活用方法が24時間ジムの普及や新型コロナウイルス(以下、コロナ)の蔓延によって多様化している。今回は、同サービスの日本での展開や有効な活用事例をカスタマーエクスペリエンスマネージャーである横溝氏に詳しく訊いた。
令和のLES MILLS Virtual は新たな次元へ
LES MILLS Virtualは会員さまがフィットネスクラブのスタジオで、プロジェクターなどで映し出された映像プログラムを見ながら効果的なフィットネスを楽しむことができるコンテンツである。
11種類のプログラムが用意されていて、各プログラムは3ヶ月に一度のペースで新しい映像が更新されるようになっている。フィットネスクラブに通われる会員さまは飽きることなく、いつも新鮮なプログラムを楽しむことができる。
レズミルズと言えば、プレコリオのプログラムを提供できる認定インストラクターを育成する研修に対してグローバルに力を入れてきたわけだが、そのときから研修の模様を、まるで映画の撮影をするかのような機材で収録してきた。
この撮影した動画素材をベースに、さらにフィットネスクラブの会員さまへご提供できるよう日本語吹替し、よりわかりやすくなるよう編集したかたちで、2017年頃より始まった。それこそがLES MILLS Virtualである。
コロナ前からフィットネスクラブに拡大してきたわけだが、コロナ後にはさらに勢いを増して普及が進んでいるうえに、サービスそのものも進化し続けている。
初心者層を中心に心地よい顧客体験を創出
プログラム映像は、従来の大型イベントスペースにおける撮影のみならず、大自然の中でドローンによる空撮を取り入れたスタイルをも取り入れるようになった。都会のフィットネスクラブにいながらも、まるで自分が海外にある選りすぐりの絶景のなかでトレーニングをしているかのような体験ができる。
さらに、利用者として想定されているターゲットは初心者層。彼らのインサイトをうまく反映したサービス設計の神髄を、横溝氏はこう話す。
「私がインストラクターだった時代は、会員さまにプログラムに参加していただくことにやりがいをもっていたこともあり、積極的にお声がけをしていました。しかし、初心者の方にはそれがかえってプレッシャーとなっていることもあるのです」
では、バーチャルプログラムではどうなのか? 入退場は自由で気軽に楽しめるし、万が一プログラムの映像通りに動けなくても、暗闇のなかにいるので恥ずかしい思いをしにくい点が初心者には安心できるようだ。
加えて、プログラムは大自然の映像にアップグレードされ、非日常を味わう体験にもなる。人気な理由に異論はないだろう。
「理想的なのは、まずバーチャルレッスンを入口として利用していただき、慣れてきたところでインストラクターによるプログラムを受講していただくことです」と横溝氏は話す。
日本のフィットネス市場におけるバーチャルプログラムの展開
日本において、総合型フィットネスクラブでの導入は引き続き継続されているなかで、近年破竹の勢いで店舗数を増やしている24時間ジムへの導入が急速に進んでいるという。その結果、LES MILLS Virtualを採用しているジムの店舗数は、総合型と24時間ジムでおおよそ同水準にまで増えている。
コロナの影響で、自宅でYouTubeなどの映像を見ながらトレーニングをするというカルチャーが根付いてきたおかげで、スタジオでの取り組みにも抵抗感が減っているようだ。
このバーチャルプログラムの配信環境の整備によって、思わぬ副産物が得られていることをご存じだろうか?
コロナでソーシャルディスタンスを保たなければいけないなか、フィットネスクラブではトレーナー陣が研修を行う際、各店舗のスタジオにあるプロジェクターを用いてリモート会議が行えるようになったのだ。
身体を動かしながら行う研修については、自宅からパソコン経由で参加するよりも圧倒的に生産性が高いと好評を博している。
タイムテーブルを改善しスタジオのフル活用を実現
ここからはLES MILLS Virtualの活用事例をいくつか紹介するが、まずはスタジオのタイムテーブルがどのように変化するのかを見ていきたい。図1、2(某海外フィットネスクラブの事例)からもわかる通り、有人のプログラムのみではカバーしきれなかった時間を、バーチャルプログラムが埋め尽くすかたちで変貌を遂げているのがわかるだろう。
総合型クラブを主力とするメガロスやオージースポーツでも、同様の効果が生み出されている。例えば、早朝や深夜といった時間にしか足を運べない会員さまは、今までであればレッスンに参加したくてもインストラクターがおらず難しかったが、バーチャルのおかげで代替できるようになった。
そのほか、コロナの影響で働き方が多様化し、会員さまの来店される時間帯が分散される傾向にあるなかで、バーチャルプログラムが常時利用可能な環境があると、会員さまのエンゲージメントは高まりやすい。特に、スタジオが複数あるフィットネスクラブでは、AスタジオとBスタジオで別々のプログラムを提供でき、会員さまにとっては時間軸とコンテンツ軸の選択肢の幅が大幅に増える。
さらには、入会のオリエンテーション終了後、バーチャルプログラムへ誘導するオペレーションを徹底することで、会員さまの継続率向上にも寄与することがわかってきている。このように、タイムスケジュールの活性化がもたらすメリットは、フィットネスクラブでの顧客体験を劇的に進化させることがわかるだろう。
無人営業×バーチャルプログラムがつくりだす新たなコミュニティ
24時間型フィットネスクラブFITEASYでは、多くの店舗にLES MILLSVirtualを導入している。元々はマシンジム型として展開していたが、もっと特色をつけたいと策を模索していたなかで、同サービスを見つけたときに「これだ!」と直感的に思ったという。
その導入後、ポジティブな変化として、女性会員の数が一気に増えた。マシンオンリーだとどうしても男性会員に偏りが生まれやすい一方で、スタジオを加えるとそれが緩和されることが見て取れる。
24時間型フィットネスクラブでインストラクターをまったく配置していない場合、このバーチャルを朝から晩まで利用するケースが多くなる。
一方で、課題もあった。スタジオを利用するのは会員さまが自発的に行動を起こす必要がある点である。
そこで企画されたのが、LINE公式を利用したスタンプラリーキャンペーン。北海道からスタートして日本を縦断するというゲーム要素を組み込んでおり、仕組みとしてはプログラムに参加して250kcal消費するごとに次の都道府県へ進めるというものだ。ランキング表示、各県庁所在地へ到着したときや消費カロリーの節目に到達したときに表示されるメッセージによって、会員さまがプログラムに参加するモチベーションを高めることに成功。なかには日本を何周もした猛者も現れた。
たまたま同じスタジオでバーチャルプログラムに参加した会員さま同士で仲良くなるケースが増え、従来型の24時間ジムでは生まれづらかったコミュニティが形成されるきっかけにもなっている。
斜め上の発想から生まれた新たな顧客体験の実現
最後の事例はZoam FITNESS(ズームフィットネス)。こちらも24時間ジムとして展開しているが、一味違った方法でLES MILLS Virtualを有効活用している。それは、スタジオの完全個室化である。
いわゆる、ひとりカラオケのような使い方をバーチャルプログラムに応用。自分のプライベートの空間で、大声で叫びながら運動することで、周りの目をまったく気にせずにトレーニングに熱中することができる点が、会員さまにとってこの上ない体験を生み出しているようだ。
自宅で動画コンテンツを見ながらトレーニングをする場合であっても、近隣への騒音や振動、さらには同居人に配慮する必要があるが、個室バーチャルスタジオはすべてをクリアできるうえに異空間を演出できる。
Zoam FITNESSではこのサービスを会員種別にまで反映。付加価値をつけることで、顧客単価のアップにつなげている好事例だ。
バーチャルプログラムの活用方法は無限大
「多種多様のバーチャルプログラム活用事例がございますが、レズミルズ側としても想定していなかった活用方法で会員さまが満足するサービスを提供するフィットネスクラブが増えています」と横溝氏はにこやかに話す。次は、あなたの運営するクラブが、想像を上回るような使い方を提案してみてはどうだろうか?