手法寄りになりつつある マーケティングに、危機感

ネスレ日本株式会社在職時代、 ファンとの共創によるコーヒーのオ フィス向け宅配サービス「ネスカ フェアンバサダー」を立ち上げ、そ の後も数々の新規事業の立ち上げと 自社ECサイトの運営を統括。その後、 ファンベースカンパニーに創業メン バーとして参画した津田匡保氏。佐 藤尚之氏らとの共著で昨年11月に 刊行した『ファンベースなひとたち』(日経BP社刊)では、同社が提唱する「ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期に売り上げや事業価 値を高める」というファンベースの考え方について、10の成功事例を 挙げてわかりやすく解説している。

そして企業の一方通行の思い込み、ある意味強引なマーケティングを仕かけるのではなく、熱量の高いファンにじっくりとかかわり、善循環をつくり出していこうとする考え方について説明する。津田氏にフィットネスクラブのリ・マーケティングについて、「ファンベース」的な視 点からキーポイントを教えていただくことにした。

まずは、津田氏が考えるマーケティングの定義について伺った。「マーケティングという概念が誕生してから100年ほど。時代とともに変化してきています。ですから、時代の潮流に合わせて、顧客が求めるものや情報をきちんと提供し、それによって人や社会を幸せにしていくことが私の考える正しいマーケティングです。ただ少し残念に思うのは、この間にマーケティングが手法寄り になってきてしまっていることです。ここに危機感をもっています。本来、マーケティングは手法ではなく、考え方だと思うのです。しっかりと環境や顧客の分析をし、時代や顧客の感情に寄り添った取り組みをして顧客の態度変容を生み出し、社会をよりよい場所にしていくことが重要です」

コロナ禍により時代が大きく変化 してきているなか、こうしたマーケ ティングの考え方のもと、企業はどのような取り組みをしていくことが 大切になるのだろうか? 「マーケティングの役割という意味 では、顧客のライフスタイルや価値 観が大きく変化しているので、それに合った情報やサービスをタイミン グよく適切に提供していくことが大 切になりますね。とはいえ、大きな 潮流はコロナ前から起こ