(1)アメリカのフィットネスクラブの回復ぶりなど、現状は?
アメリカでは、2020年に、ゴールドジムや24アワーフィットネス、タウンスポーツインターナショナルなど大手8社が、連邦破産法第11条を申請。同年、収益が、前年比58%も一気に減少。100万人以上の従業員が失職した。
さらに、今日までに、業界の25%が永久閉鎖、ブティック業態については30%が永久閉鎖となった。
アメリカの現在の会員の戻りの状況は、ピーク期の60~120%。平均すると、80%程度。REX(ラウンドテーブル)に参加している優良企業は、ピーク時に比べ85.3%まで会員が戻ってきている。その中には、月会費が70~100ドル、120ドルのところもある。したがって、価格帯により、戻りが異なるという見方は、早計。また、早く運営を再開できたクラブほど、戻りが早いということも言える。業態・ビジネスモデルにより、戻りが違うかというと必ずしもそうではなく、対象顧客の期待にきちんと応えてきたかどうかが最も影響している。
月会費が30ドル以内の低価格のクラブ(バジェットクラブ)は、REX所属のクラブと同じレベルで会員が戻ってきている。会費の高いクラブでも、ファミリー層を対象としたクラブは、戻りがよい傾向が伺える。家族で健康に投資しようと考える人が増えているからだ。あまり会員が戻ってきていないと言われる30〜80ドルの中価格帯のクラブでもうまくいっているところはある。そうしたクラブは、コロナ禍以前から、企業文化や、適切な戦略を持っていたクラブだ。コロナ禍以前に、クラブの文化やアイデンティティを持っていなかったところは苦戦している。経営環境が厳しくなっているからである。
グループエクササイズの戻りは、非常にゆっくりとしている。パーソナルトレーニングも同様。クラブには十分なパーソナルトレーナーがおらず、対応ができていない。一人でトレーニングしている人が増えている。また、クラブを離れたパーソナルトレーナーも、それぞれが自身で、アウトドアやオンラインで指導サービスを提供するようになった。そうした業界環境のなかでも健闘しているのがバークラスとピラティスである。
ブティックスタジオやHIIT系ジムは、戻りが遅い傾向がある。特に、スタジオ単体の業態は、会員の戻りがきわめて厳しい。人々は、狭い密室空間で、お互いに近いて激しいエクササイズをしたくな