2023年末のフィットネス参加率は、23.7%と世界第1位、さらに利用率も対前年比で9.7%増と伸びているアメリカのフィットネス市場。ここには、日本のフィットネス事業者も、大いに学べることがありそうだ。だが、きらびやかに見える表層の現象的なことをそのまま真似しても、あまり価値はない。アメリカのフィットネス市場が成長している、本当の理由を知ったうえで、アメリカ市場でニーズが顕在化してきているフィットネス業態・サービスのファクトを実査を通じて押さえ、さらに、アナロジー的に抽象化したり、アブダクション的に仮説推論したりしながら、日本では?と考え、最適な取り組みを考えていくことが大切になろう。
編集部なりに、アメリカ市場から日本の事業者が学び、成長していくための要諦を5点、抽出した。
揺れる、アメリカの政治・経済
共和党のトランプ氏が大統領に再選される前の民主党は、伝統的に自由主義的な経済政策を推進してきていた。
これが格差の拡大や社会の分断を招いたという批判があり、特に経済的に苦しい立場にある人々から、「民主党の政策では自分たちの生活は改善しない」
と感じる声が挙がっていた。民主党は、多様な背景を持つ支持層を抱えており、それぞれの層のニーズや価値観を統合することが難しいという課題も抱えていたが、特に、白人労働者層と都市部のリベラル層との間には、経済政策や社会問題に対する考え方に大きな隔たりがあり、そこを直近の大統領選でも、上手く突かれた感がある。では、トランプ氏が二期目の大統領となり、国民の暮らしが豊かになったかというと、そうではない。周知のとおり、インフレの影響で、食品や住居費などの生活費が上昇。これに対処するために、家計の見直しを行う家庭が増えた。
また、コロナ禍の影響もあり、デジタルの進展やSNSの利用、リモートワークの普及があり、人々の価値観やライフスタイルが多様化し、環境問題や貧困問題、社会的な分断が大きくなるとともに、人々の間で社会的な公正に対する意識も高まってきている。
そうした不安を覚える政治的、経済的な背景もあり、生活者・勤労者のストレスが高まっており、そのため健康やウェルネスに対する関心が高まり、フィットネスやメンタルヘルスに注力する人が増加している。2023年末のフィットネス参加率は、23.7%と世界第1位、さらに利用率も対前年比