台湾最大の国際スポーツ用品見本市「TaiSPO」が、2025年3月26日から29日まで台北で開催された。毎年、世界中から企業や参加者が集まり、スポーツとフィットネス業界の最新トレンドを一堂に見ることができるこのイベント。
総来場者数は9,142名、海外バイヤー数は1,723名(うち、日本からの来場者は236名と最多)、出展企業数は220社を記録した。メディア向けに開催されたツアーでは、各企業の最新技術や製品が紹介され、その詳細が明らかに。台湾はフィットネスマシンの製造が盛んな地域であり、今後さらにそれが加速すると予想される。特に、年間7%以上の成長を見せるイクイップメント販売は、業界の成長を象徴する数字だ。台湾政府もこの分野を重要産業として後押ししており、その成長には大きな期待が寄せられている。多くの企業が欧米を主な市場としてビジネスを展開しており、日本国内でもOEMをはじめ、輸出企業のトップを誇る企業が数多く見られる。TaiSPOには、FIBOやHFAにも出展している企業があり、国際的な規模での競争が繰り広げられている。今回のツアーを振り返り、いくつかの注目企業を紹介する。
■JOHNSON HEALTH TECH. CO., LTD.

最新ランニングマシン「ONYX Treadmill」は、AIによるパーソナライズ機能で最適なトレーニングを自動生成し、衝撃吸収技術で関節への負担を軽減する。プレミアムモデルには大画面、フルスペクトルライティング、ブランドカラーのカスタマイズが可能。
新機能「コンシェルジュボタン」でタオルや水のリクエストも簡単にでき、ハプティックフィードバックやワイヤレス充電など、細部までこだわった設計が特徴だ。
Johnson Health Techのトレーニング哲学と市場への影響をBen Wilde氏は、「“健康でアクティブなライフスタイル”を理念に、ONYX Treadmillはフィットネスを日常の一部にすることを目指している。デジタル接続機能により、クラウドでトレーニングデータを管理し、パーソナルトレーナーやジム運営者にも利便性を提供する」と話す。
また同氏は、テクノロジーの進化により、個別ニーズに応じたトレーニングが容易になり、AIとデータ活用が進化することでユーザー体験が向上する、とフィットネス業界の未来を予測している。
■TUNG KENG ENTERPRISE CO., LTD.
最新モデル「Alpha Runner AR22」は、メンテナンス不要のスラットベルトを採用し、高耐久・静音性・衝撃吸収性に優れた設計だ。従来の木製ランニングベルトと比較し、足への負担を大幅に軽減。さらに、スレッドプッシュモードにより、ユーザーは体重と足の摩擦を活かしながらスピードを自在に調整できるという。
AR22は、Virtual Active、ワークアウトアプリ、Netflix、ミラーキャストなどを搭載し、エンターテイメント性の高いトレーニング体験を提供。マルチタッチ対応インターフェースと強力なACモータードライブシステムにより、快適かつ効率的なワークアウトを実現する。
TUNG KENG ENTERPRISEはフィットネス業界への影響と未来展望を「30年以上の実績を誇り、カーディオ機器やウェイトトレーニング機器の分野で世界的評価を獲得してきた。高機能ウェアラブルデバイスとの連携も強化し、次世代フィットネスのリーダーとして市場を牽引している。Alpha Runner AR22は、耐久性・快適性・デジタル機能を融合した革新的なランニングマシンとして、今後のフィットネス業界のスタンダードを塗り替える存在となるでしょう」と語る。

■DYACO INTERNATIONAL INC.
室内でハイキングを再現する革新的なトレーニングマシン、新型「H95 Hiking Machine」。その特徴は、多様な傾斜設定により、実際の山道を歩くような体験が可能、かつ直感的なインターフェースと高耐久性を備え、長期間使用しても高パフォーマンスを維持できるところにある。
DYACOは、Spirit、SOLE、Xterraなど、世界的に認知されるブランドを展開する企業で、特に総合格闘技やアスリート向けのトレーニング機器で知られている。
デザイン性と機能性を兼ね備えた製品ラインを展開し、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズ可能なトレーニング機器を提供しているが、今後も革新を追求し、フィットネス業界のリーダーとしての地位を確立していきたいと今後のビジョンを掲げる

■GEE HOO INDUSTRIAL CORP.
台湾では、高齢者向けフィットネス市場が急成長しているという。
「I Care Gym」アプリは、ユーザーの運動データをリアルタイムで記録・分析し、個別最適化されたプログラムを提供する。医療×フィットネスの融合が進むアジア市場の最新動向は、日本でも導入が加速化している。
同社開発の「Todal Bod Trainer Pro」は、ゲーム要素を取り入れた高齢者向けフィットネスマシン。リズム運動や視覚的課題を通じて、脳活性化と身体機能向上を同時に実現するのが特徴の1つだ。欧米市場でも注目を集め、日本の高齢者施設やフィットネスクラブでも導入が進んでいる。
アジアでは、高齢者の健康寿命延伸を目的としたフィットネス・テクノロジーが進化している。GEE HOOは、脳トレ×運動の革新的アプローチで市場をリードしているが、日本のフィットネス業界も、この潮流を活かし新たなビジネスチャンスを見出すことができるだろう。

■MÜVON WELLNESS. INC
台湾の大手フィットネス機器サプライヤーが2023年に立ち上げたMove On Pilatesは、「人生の次のステージへ進む」をコンセプトに、短期間で10店舗を展開。マンツーマンからグループレッスンまで多彩なプログラムを提供し、2024年にはフランチャイズ展開を開始した。今後、ウェルネス関連サービスの拡充も進めていく。
また、オンラインと対面のハイブリッド型プログラムや、AIによるフォーム解析を駆使したパーソナライズされたトレーニングで、初心者から上級者まで効果的なサポートを提供。
「どこでも・誰でも・続けやすい」ピラティスを提案しているといえる。
Move On Pilatesは台湾国内で急成長し、müvon Pilatesはシンガポールや香港、台湾で拡大中。それぞれフランチャイズや提携ジムを通じて市場を拡大しており、オンラインとオフラインを融合させた運営モデルが、日本市場にも新たなビジネスチャンスを提供していくと予測される。

■AQUIVIO Co. Ltd.
AQUIVIO Co. Ltd.は、フィットネス施設やオフィス向けに、水素とアルカリを注入したプレミアム水を提供している。栄養成分やフレーバーをカスタマイズすることが可能で、ゲストやメンバーに革新的な水分補給体験を提供ることにより、施設内での体験を向上させるとともに、健康意識の高い顧客を引きつけている。
施設運営者向けには、AQUIVIOのシステムがフィットネス管理ソフトと連携し、メンバーシップやチャレンジへの報酬、個別のドリンク販売が可能になっている。これにより、顧客のロイヤリティを高め、会員の維持率を向上させることができるという。
台湾を拠点に多国籍展開を進めるAQUIVIOは、シンガポールやタイ、サウジアラビアなどでパートナーシップを結び、急速に成長している。日本市場への展開も視野に入れ、フィットネス業界に新しいビジネスチャンスをもたらすと期待されている。

フィットネス業界の未来を形作る革新的なトレンドと技術が集まったTaiSPO。AI活用、シニア向けフィットネス、デジタル連携の進化による競争力向上戦略は、今後のフィットネス市場に大きな影響を与えるはずだ。日本のフィットネス業界は、これらのグローバルな動向を踏まえ、テクノロジー導入と顧客体験の価値向上に注力することで、競争優位性を確立し、時代の変化に対応する企業として、持続的な成長と業界内でのリーダーシップを確立することができるだろう。