今後、健康産業は成長していくのだろうか。また成長させるために何をすることが重要になるのだろうか。そして、前途有為な学生がそこで活躍できるようにするためには何が必要なのだろうか。本稿では、健康やスポーツの教育者に、健康産業の可能性とそこで学生が活躍するためにフィットネスクラブ運営企業がするべきことを訊いていく。第 26回目は、日本体育大学大学院 准教授岡田隆氏。

若年層の健康意識の低さ人材確保の難しさが課題

日本の健康産業の課題について、岡田隆氏は「自分自身で健康維持しようという意識が低いこと」を挙げる。「特に体育大学に進学するような学生は、健康であることを当たり前と思っています。日本は医療制度や介護制度によって、健康への関心がもちづらくなっているのです。

医療費や介護費を国が負担してくれるのは個人にとってはよいことかもしれませんが、これらが高額になれば危機意識が芽生えるのではないかと思います。運動している人が何らかのインセンティブを得られる仕組みを国がつくれば、若いうちから健康への関心ができるのではないでしょうか」

それまで運動習慣のなかった人が高齢になって急に始めるのはすごくハードルが高い。若いうちから運動習慣をもつことが大切だ。また、運動習慣があれば筋力が衰えにくくなる。若いときから運動をスタートするか否かで高齢になったときに介護状態になるかどうかが分かれる。

また、もうひとつ課題としてあげるのは「健康産業にいい人材が就く仕組みができていないこと」。「高齢者を元気にしたい、それによって健康寿命の延伸に寄与したいと考えていても、待遇がよくないのです。これは、フィットネスクラブ運営企業の課題ではなく、国全体の課題です。同様に、重要なはずの教育職、介護職なども待遇がよくありません。国の成長にとって必要なことは何か、そこにお金をかけるべきです」

運動と医療の知識をもつ質の高いトレーナーを育成する

自身もフィットネスクラブの経営に関わっていて思うことは、トレーナーの質を上げなくてはいけないということ。「高齢者が体力・筋力を維持するため、安心して身体を預けられるトレーナーを育てるというのが、今私が目指していることです。高齢者を教えるためには、トレーニングが好きというだけではできません。体育と医療の両方を学んだ人が担う