食品メーカーに就職後、世界の食糧危機を知った梶栗氏。その後、蚕の可能性に目をつけ、蚕を原料とした機能性昆虫食「シルクフード」の研究開発を行うスタートアップ、エリー株式会社(以下、エリー)を創業した。蚕の魅力を用いてSILK FOODなどのブランドを展開し、様々なプロダクトを生み出しながら新たな食文化をつくり出していく、リーダーシップに迫る。 

梶栗さんは、将来起こりうる世界的な食糧危機に目をつけ、シルクや蚕を活用するビジネスを始められたのですね。あまり馴染みがないので、特徴を教えていただけますか?

まず、蚕という生物の説明から始めますね。蚕は、人類が5,000年間かけて家畜化を進めてきた昆虫で、野生には存在しません。日本は古くから養蚕業が盛んだったので、人々にとって身近で大切な存在として扱われてきました。「ゴジラ」に出てくるモスラのモデルとも言われていて、モスラが常に人間側として描かれているのは、そうしたことも背景にあるのかもしれませんね。

成長の仕方としては、卵から幼虫になって、その後、糸を吐き、白い卵型の繭を作ります。その繭を使って作り出されるものが、私たちが身に着ける「絹(シルク)」です。

エリーでは、食品だけでなく蚕全般を手掛けています。例えば、シルクが織り込まれたTシャツをつくりましたが、綿よりも柔らかくしなやかで、着心地が良いのが特徴です。

食品には、繭の中の蛹をペースト状にしたものやパウダー状にしたものを使っています。以前、運営していたハンバーガーショップでは、パティにペーストを使用しました。蚕の味は、ナッツに似た風味で豆っぽいと表現されることが多いのですが、人によって表現は様々で味の定義は難しいです。言うなれば蚕味です。

ほかにも、プロテインやチップスなどを商品化しています。蚕の食品としての魅力には、主にたんぱく質の性質が挙げられます。含有量は、牛肉や豚肉とほぼ同量、100gあたり15〜20%含まれています。ほかの昆虫と比較すると、たんぱく質の量ではあまり差がないですが、栄養素の種類が多く、62ものビタミンやミネラルなどが含まれています。

さらに、蚕はワクチンや手術の縫合糸などの医療分野にも使われています。組成がヒトに近いので、肌に馴染みやすいらしく、そういう点でも人に近しい生物です。

しかも、蚕から取れるシルクの長さは1頭で1,500〜2,000mにもなります。ミ