「ヤング層」と「男性」に、カーブス市場を拡大
「シニア層」への運動習慣の価値啓発と非接触型サービスで、さらなる市場開拓へ
2022年、ウィズコロナの環境変化により、フィットネス業界の市場環境も大きく変化した。フィットネスクラブ各社も、徐々に回復の兆しが見えてきている。2023年は、さらなる回復に向けて、どのように今後の動向を予測し、キャリアを築いていけばよいのだろうか?業界を牽引するリーダーたちに訊いた。今回は、国内で圧倒的な店舗数を誇る株式会社カーブスジャパン。
2022年はどんな年でしたか?
「断続的に来るコロナ感染者数増の波に、影響を受け続けた年でした」
カーブスは店舗数1,947軒で、JCSI(日本版顧客満足度指数)調査のフィットネスクラブ業種において、8年連続の顧客満足第1位を獲得。コロナ禍以前と比較して、チェーン全体の売上高で▲10%、会員数で▲7.4%と、アフターコロナに向けて、堅調にビジネスを回復させてきている。
だが、カーブスの主力顧客層である「シニア層(65歳以上)」へのコロナ禍の影響は2022年も続いたという。コロナ禍により、人々の健康意識は高まっているものの、感染者増の波が断続的に来る中で、家族や地域社会が、高齢者の行動を制限する状況にあり、高齢者自身も、コロナ禍で獲得した、外出制限に対応した生活様式に定着してしまっていることが予想される。
「エイジズム」も危惧されている。エイジズムとは、年齢による偏見や差別を意味する言葉で、「高齢者は重症化しやすい」という年齢に基づく固定概念による偏見から、高齢者が外出することに、ネガティブな感情を持つ人が増えている。それにより高齢者自身や、高齢者の家族も、外出を控えるようになってしまっている状況もあるという。
2023年に向けて始めたことは?
「ヤング層へのマーケティングと、非接触型サービスの開発を進めました」
カーブスでは、2022年8月期決算発表において、広告宣伝費を前期比4.6億円増やすなどして「ヤング層(50~64歳)」を対象に積極的に集客活動し、会員数が6万人純増したと報告。テレビやWebを中心としたメディアミックスで、ボディメイクや姿勢改善などで、外見が若々しく美しくなる効果を訴求したことが、奏功した。
また、カーブスの主力顧客層である「シニア層(65歳以上)」の新しい生活様式におけるインサイトに対応して、非接触型サービスの開発も強化している。2022年時点で会員数2.1万人となっている「おうちでカーブス」についても、サービスを拡充していく。
これまでに「店舗+オンライン」でのハイブリッド型サービス利用者の定着率は、店舗のみ会員の2倍 という実績もあることから、店舗のみ会員に「おうちでカーブス」の利用を促進して定着率を高めるとともに、外出することに抵抗を感じている方々向けに、オンラインのみでの非接触型健康サービスとしても訴求を進めていく。
また、2022年9月には、会員向けにカーブスアプリもリリースし、カーブスに通うことや、運動を習慣化することをサポートするサービス開発も進めている。
2023年はどんな年になりそうですか?
「ヤング層や、男性へのマーケティングを進めつつ、シニア層へは、『健康二次被害予防コンソーシアム』での産学官連携により、過剰な外出自粛の危険性を粛々と啓発していきます」
「ヤング層」へのカーブスのマーケティングに加えて、男性専用のスポーツジム「メンズ・カーブス」のマーケティングも進めていく。男性には「筋トレ」の重要性を訴求することが有効で、同じカーブスのトレーニングでも、男性は筋トレ効果が出やすいことに加え、メンバー自身も効果を実感しやすく、高い定着率に繋がっている。
「シニア層」については、2021年に立ち上げた『健康二次被害防止コンソーシアム』で、コロナ禍での過剰な外出自粛がもたらす健康被害について、産学官連携で啓発を続けていく。これまでに、全国115の自治体と、258の企業・団体が会員になっており、さらに啓発に協力している自治体や、企業・団体、個人も増えている。
このネットワークを通じて、外出を控えているシニア層に運動の重要性を啓発すべく、自治体の掲示板や自治体の取り組みとして情報を発信したり、生命保険の訪問販売や、牛乳配達時に健康二次被害予防に関するリーフレットを届けてもらうなど、運動の啓発活動を草の根活動的に継続している。
2023年は、20~25店舗のカーブス出店と、5店舗のメンズ・カーブス出店を計画しており、店舗数、会員数、売上高ともに、コロナ前の状態へと戻し、さらなる顧客満足度向上を目指している。