2024年に向けて、完全復活へ

コロナ禍とその風評被害によって、大きなダメージを負ったフィットネス業界だが、確実に回復してきている。今期末には、ピーク期より売上高で1割減、利益で1/2の水準まで回復できそうだ。2023年は、’24年に向けて土台をつくる年にしたい。

通期で、ピーク期の売上の1割減 利益は1/2の水準まで回復へ

主要各社の2023年3月期第2四半期の取り組みと決算概要をまとめたが、会員数はピークよりもまだ2割ほど少ない状況である。例えば、セントラルスポーツの’19年3月期は43.7万名だったが、この’22年9月期の会員数(上期平均)は34.1万名だ。

主要各社は、この間にリアル+オンラインでのハイブリットでのサービス提供や会費の値上げなどによって、売上高をおよそ前年比1割ほど増加させてきているが、水道光熱費の上昇が想定以上に利益を圧迫したため、利益については前年割れする企業が多くみられている。とはいえ、ほぼすべての企業が、黒字を達成。今後は、afterコロナの環境下で、価値観や行動様式を変えた生活者・勤労者の生活文脈に寄り添ったマーケティングに取り組み、会員の運動習慣のサポート、そして入会の促進といった順で取り組み、在籍会員数を増加させつつ、会費単価も高めていくことを目指すようになるのではないか。

各社は、通期での予想も発表していたが、’19年3月期の数字と比較すると、売り上げで1割減、利益は1/2くらいのイメージ(表)。

◆表 主要プレイヤーの業績推移と見通し

ということは、売上高と利益の水準がコロナ前に戻るのは、普通に考えると’24年3月期になりそうだ。でも、少しでも前倒しで業績を回復させられるように、各社ごとに皆で一丸となって、また業界としてもまとまって、マーケティング活動をしていきたいところである。

入会者が継続できる体制づくりと未顧客マーケティングを推進

フィットネス業界売上ランキングの推移は、グラフ1となっている。

◆グラフ1

ほぼすべての企業が、売上高を漸増させてきていることがわかる。

売上高や会員数の推移を丁寧に見てみると、ここ1年かけていずれの数字も好転して、その後さらに良化していっていることも窺える(グラフ2、3)。

◆グラフ2
◆グラフ3

休会者や退会者も減少し、ようやく在籍会員数が安定化してきたところだろう。

さらなる安定化に向けて、メガロスやルネサンスが導入したようなフィットネスビギナーである入会者がきちんと運動習慣を持て、クラブライフを楽しめるような仕組みを整えたうえで、フィットネスの未顧客やライトユーザーへのアプローチもしていくことが求められよう。

人がサービスに介在しない24時間ジムは、フィットネスビギナーが利用するには不向きなため、こうした対応がきちんとできるフィットネスクラブが、今後は成長していけるようになるのではないか。

デジタルの活用も大事だが、それ以上に大切なことは、対象顧客が、体験価値を得られるようにするサービスデザインをどのように描くかであろう。

DXのDより大事なのは、Xのほうなのだ。まだまだ手を抜いてはいけない。目指す企業のイメージを解像度高く描き、共有し、着実にそのイメージを現実のものとしていくことが大切になろう。