株式会社JR東日本スポーツが手掛けるJEXERブランドの店舗において、フロント業務の改善がコロナ禍をきっかけに急務となった。

いかに会員の混雑時間帯における待ち時間を減らしつつ、フロントスタッフの業務を効率化するかが課題であったが、2021年にはキャッシュレス券売機、2022年にはセルフレジを導入し、それらを実現。

その取り組みについて、同社の後藤氏および井上氏に話を訊いた。

  • JR東日本スポーツ株式会社
    事業推進部門 マーケティング・オペレーション部 運営管理グループ
    グループリーダー
    後藤利章氏
  • JR東日本スポーツ株式会社
    事業推進部門 マーケティング・オペレーション部 運営管理グループ
    サブグループリーダー
    井上 篤氏

フロント業務の責任者を経て本部にてデジタル化を推進

井上氏はフロント業務の経験が長く、必要となる作業量の多さを日々感じていた。その折、2020年に本部へ異動。

コロナ禍とタイミングが重なり、まさに変革期でフロントの声を反映させるチャンスが訪れた。混雑時間帯になると会員がフロントに列を作ることも珍しくなかったなか、まずはキャッシュレス券売機を導入。2021年のことである。しかし、ある課題が残っていた。

「会員さまが商品を誤購入してしまう、そもそも何を買っていいのかもわからないということも多かったのです。また、会員管理システム(ATOMS-V)への売上入力作業や、購入品によっては結局フロントでスタッフが対応する必要がありました」

と井上氏は当時を振り返る。

そこで次に導入されたのが、両備システムズが提供するATMOS-Vのセルフレジソリューションである。今や、コンビニでも利用できる店舗が増えつつあるセルフレジが、フィットネスクラブにも普及しつつある。

「いわゆるコンビニなどのセルフレジは、1台あたり500万円の初期投資が必要だったりします。しかし、ATMOS-Vについては1/10程度の価格でしたので、導入がしやすくて助かりました。店舗数が多いクラブほど、この点は嬉しいと思います」と、グルー
プリーダーを務める後藤氏は話す。

キャッシュレス比率は今や8割を超える

セルフレジの導入によって、QR会員証をかざすと自動で支払うべき料金が表示されるようになった。

例えば、あらかじめパーソナルトレーニングの予約をしている会員についてはそれも反映されるため、選択を間違えるということがなくなった。さらに個人で入会された会員のみならず、法人契約された会員情報の会員証とも紐づいて反映されるという。

「セルフレジ導入以降、大塚の店舗ではセルフ購入比率が88%になり、キャッシュレス券売機のときよりもはるかに上昇しました。さらに、板橋店では98%になっており、そもそもレジ締めという作業自体がなくなりました。私がフロントにいるときに、これがあれば…と強く思います」と井上氏は笑いながら話す。

これにより、フロントの混雑は緩和され、配置するべき人員数も3人から1人に減った。特に現金を扱うとヒューマンエラーが発生しやすい作業が多く、とはいえミスが許されないため時間がかかることは避けられなかったが、キャッシュレスの実現によって解決された。

会員管理システムと決済の即時連携が可能に

左から井上氏と後藤氏。 セルフレジがないフロントには、もう戻れない

セルフレジが活躍するのは、実はフロントよりもバックヤードのほうが大きい。これは、ATMOS-Vが会計システムも担っているためだ。現金決済が行われた会員の情報を手作業で入力するなど、これまで多くの工数をかけていた会員管理とフロント決済の連携を
リアルタイムで実現できるためだ。

「フロントは事務作業をする場所ではなく、お客さまへの様々なご案内ができる場所であるべきだと思います。フロントスタッフじゃないとできない作業は、もう無くせるというところまで見えてきました」と後藤氏は言う。

フロントスタッフを作業から解放する

これまで、2段階の進化を続けているJEXERのフロントだが、もう1段の進化も間近だ。

「まずは、セルフレジを全店舗に配置したら、次は遠隔接客が可能なセルフ受付も導入していこうと考えています」と井上氏。

導入できれば、1人の本部スタッフが複数店舗の接客を対応できるようになる。セルフレジに慣れていない顧客のフォローなどに活用していくという。

「フロントスタッフを作業から解放し、よりフィットネスクラブらしいサービスを会員さまへ提供できる環境を模索し続けたいですね」

と語る両氏は、まだまだ歩みを止めない。