スタジオの効果的な活用方法を得るセミナーを開催

新型コロナウィルスの5類移行を目前に、クラブには会員が戻ってきており、各クラブが、会員の継続利用促進に向けた施策に取り組んでいる。コロナによって明確になった「スタジオプログラムの重要性」について、雇用、売り上げ、会員継続、品質など、様々な視点から解説するセミナーを開催した。スタジオ運営に秀でるスポーツスパアスリエ(以下、アスリエ)を運営する株式会社文教センターと、株式会社ルネサンス(以下、ルネサンス)の2社よりスタジオ運営担当者を講師として招き、スタジオ運営についてお話いただき、効果的な活用方法を伺った。

CRM による分析を強化し
プログラムのポジショニング戦略を

コロナをきっかけに、現状のサービスを見直し、デジタルソリューションの活用を進めてきたルネサンス。コロナによって、スタジオ運営の課題と存在価値がより明確になったと言う。これまで、「会員がスタジオプログラムに参加する理由を『定性的』にしか捉えていなかった」と同社のフィットネス事業チームでプログラムの運営や管理・分析を担当する東氏は話したうえで、次のように続ける。

「CRM(会員関係管理)システムを導入し、データ分析をより細かくすることを進めました。すると、あるお客さまは、このプログラムにしか参加していないとか、インストラクターの好みによって選ばれるとか、入会して3ヶ月以内の人が多く参加しているなど、いわゆる『プログラムのポジショニング』が可視化でき、選ばれる根拠が見えるようになりました」

ルネサンスがコロナ下にスタートを切ったオンラインRENAISSANCE Online Livestream®(ROL)でも、この分析を活用。顧客の退会抑止と、インストラクターの収入や活躍の場の確保につながっている。

有料のスタジオプログラムで課金ポイントをつくる

既存のフィットネスクラブでは、月会費を払えば、スタジオプログラムは利用し放題というところが主流であるが、ルネサンスでは、有料のプログラムも用意している。開発チームの熊田氏が、有料プログラムの作成を担う。

「会費内で利用できる基本的なプログラムは原則45分までとしています。一方、インストラクターのスキルに大きく依存し、かつ集客が見込めるプログラムについては、時間を60分にして有料にしています」

会員は月会費に追加で税込6,600円(非会員は税込8,800円)を支払うことで、この有料プログラムに月4回毎週参加することができるようになる。2つの課金ポイントを用意したことで、収益アップも見込めている。

対して、アスリエは、全スタジオプログラムの有料化を実現したクラブだ。さらに「集客数によるインストラクターフィーの決定」という、業界では初めての取り組みも実施している。株式会社文教センターでプログラム管理を務める五十嵐氏は「インストラクターの業務委託費を変動費にすることで、自社の持ち出し費用がほとんどゼロになり、有料レッスンによる売り上げが増えました」と説明する。会員は有料のため、より良いプログラムを求めるようになり、インストラクターは集客のためプログラムの質を高める努力をする。

「インストラクターがレッスン前後の時間に集客に向けたアクションを起こしてくれたり、会員さまが、受けやすいレッスンにするためのご意見をくださったりと、インストラクターや会員さまの姿勢が変わりました」

有料レッスンは、税込550円~インストラクターとのすり合わせでレッスン単価を設定。1レッスンのフィーがコロナ前よりも2~3倍になったインストラクターもおり、Win-Winな関係性を築いている。

プログラムの品質管理と多様化する価値の提供

今後スタジオプログラムをより良いものにしていくために、両社に注力していく点について訊いた。

ルネサンスは、プログラム自体の品質、そして、レッスン参加後のフォローという2つの側面から顧客の体験価値を高めていくことを徹底していく。同時にインストラクターの貢献度を評価できる指標をつくることでインストラクターが働きやすい環境づくりにも着手していくと言う。

アスリエは、新規入会者でレッスンに参加したことがない方への参加誘導に力を入れる。入会後のサポートを強化し、スタッフからのスタジオレッスンへの誘導はもちろん、スタジオプログラムの一部を、あえてジムエリアで実施することで、「スタジオには入りにくい」という阻害要因を取り除き、未顧客層を取り込む工夫も実施していく。

コロナ禍で利用が制限されたスタジオプログラムを戦略的に立て直し、成功を収めている両社の取り組みに学ぶことは多い。スタジオの重要性は、これからもまだまだ高まりそうだ。