スポーツ庁・経済産業省による15兆円産業化に向けた具体的方策

2016年に立ち上がった第一期スポーツ未来開拓会議では、スポーツ産業を成長産業化するため、「2025年までに市場規模を15兆円に拡大」という目標を掲げた中間報告を公表。当該目標を維持した第3期スポーツ基本計画(2022年3月策定)をふまえ、15兆円産業化に向けた具体的方策を検討し、中間報告がまとめられ、2023年7月5日発表された。

「みる」スポーツと地域スポーツの好循環を創出し、スポーツ産業の成長を実現

中間報告の大枠は、図に示す通り、少子化が進むなか、「みる」スポーツと地域スポーツの好循環(機会創出=市場拡大=魅力向上)を創出することによりスポーツ産業の成長を実現することにある。

報告書では、まず全般的な方向性として、「エンターテインメントの選択肢が拡大しているなか、みるスポーツのさらなる拡大には、観戦体験を高度化する新たなサービス展開やホスピタリティビジネスの拡大により、より一層のコンテンツの魅力拡大が必要。さらに、急速な少子高齢化をふまえ、国内市場のみならず海外に市場展開することは急務。これらの取り組みを支える人材の育成も重要な課題」としている。

スタジアム・アリーナ改革の方向性としては、「近年、民間活力を活用した『指定管理者制度』『PFIコンセッション方式』、『企業版ふるさと納税』制度の活用などによる施設整備の事例も増えてきているが、引き続き資金調達の支援制度等の在り方の検討が必要」であり、「特に、海外では、医療・福祉施設の併設による健康づくりや、企業・大学等との協業に貢献する新しい公共財としての施設機能を付与させることで投資を呼び込む動きが注目されていることもふまえ、スタジアムやアリーナが持つ社会的価値の可視化に向けた算定方法の検討も進める必要がある」としている。

地域スポーツの発展では、まずスポーツツーリズムの活性化が挙げられ、以下の方向性が示されている。

「訪日外国人旅行者の増加、地方への誘客、消費額の増加促進が重要とされており、我が国の強みを生かしたスポーツツーリズムを引き続き推進」するとともに、「国内居住者の国内宿泊旅行に伴う消費額は訪日外国人の3倍以上であるなか、アウェイツーリズムなど、プロスポーツコンテンツのポテンシャルを活用した取り組みを推進しつつ、地域へ誘客促進することが必要」「ほとんどの観光客は複数の目的を持って観光行動を行うなか、スポーツをこの目的の1つにいかに組み込むかという戦略を競技、リーグ横断で連携し検討することが必要」となっている。

さらに、地域スポーツの環境整備についても、「少子化等によって子どもの運動機会が減少し、将来にわたってスポーツを『する』者が減っていくことは、スポーツ産業の持続可能性という観点でも危機的状況」との認識のもと、「地域スポーツ環境の再構築に向け、企業に対する学校体育施設等の開放などにより、プロスポーツチームや民間スポーツ関連企業等の多様な主体の積極的な参入を促すとともに、スポーツ機会を保証する方策を財源と共に検討することが必要」と、その方向性を示している。

2030年以降も見据える

本会議はこの後も分科会として続き、本年度内には2030年以降も見据えたスポーツ産業の在り方を「スポーツ産業ビジョン」としてまとめて、発表する予定である。建設的な意見やアイデアがあればFitness Business編集部までお寄せいただきたい(fb.customer@fitnessclub.jp)。