株式会社ルネサンス(以下、ルネサンス)は2023年3月末時点で国内外に190施設を運営するフィットネス業界の雄である。店舗数が増えれば増えるほど、スタッフの教育・育成の負担が増えてくるが、株式会社スタディスト(以下、スタディスト)が提供するクラウドシステム『Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)』を導入し、時間的、場所的制約などからスタッフを解き放ち、生産性の向上に役立てている。忘れ物管理アプリに続き、紙を使った業務からの脱却を進める。

  • 株式会社ルネサンス
    スポーツクラブ事業企画部 スポーツクラブサポートチーム 課長
    松野輝美氏
     
  • 株式会社ルネサンス
    スポーツクラブ事業企画部 次長 兼 DX推進プロジェクトメンバー
    東 武史氏
     

マニュアルに特化したシステムで誰でも簡単に作成が可能に

店舗での接客サービスを提供する業態であるフィットネスクラブにおいて、人材の教育・研修は切っても切り離せない重要な要素である。この領域において改善が進めば、圧倒的に生産性を高めることができる。ルネサンスはその方法を模索し、IT部門の紹介を経て『Teachme Biz』と出会うことになった。

「紙ではないにしても、GoogleドキュメントやYouTubeなどの無料ツールを使って共有をすればいいのではないか?」という疑問が出てくるかもしれないが、Teachme Bizはマニュアル作成に特化したフォーマットを用意しており、パソコン以外にスマホやタブレットなどの端末でも簡単に短時間で文字が少ないビジュアル重視のマニュアルが作成できるところに強みがある。

先述のツールは無料かつ自由度も高いが、その代わり作成者によって完成度が大きく変わる。質にこだわれば時間も要するところを、考え抜かれたフォーマットの活用で、誰でもサクッと学びやすい動画・画像・テキストを組み合わせたマニュアルが出来上がる。

いつでもどこでも学べるため対面研修時間を1/4に削減

そのように作成したマニュアルは、クラウド上にアップロードしてしまえば、すぐに全店舗へ配信が可能である。「各店舗で紙のマニュアルを活用していた頃は、辞書のように分厚いマニュアルを何冊もキャビネットに収納し、更新があるたびに入れ替え、必要なときには取り出してスタッフルームで利用する、というようなオペレーションでした」と松野氏は振り返る。

まず、紙の印刷と廃棄が少しの改良でも全ページ行われることがなくなった。これは大きなコスト削減につながっているだろう。

また、マニュアルの該当ページを参照するにも探し出すのが大変であったところ、検索機能でアクセス性が向上し、スピードアップにつながっている。

さらに、スマホやタブレットでいつでもどこでも、そして何人でも同時に学習ができるという点でも利便性が高まった。その結果、対面での研修時間を8時間から2時間にまで短縮できた。

スタッフの習熟スピードを速めサービスを均質化

ここまで、マニュアルの作成・配布・閲覧についての効率化を見てきたが、その先にサービス品質の底上げによる生産性アップがもたらされる。

スタッフの習熟スピードが速まったと思います。まず、手順に沿った動画や画像を用いたマニュアルなので、誰が教えても同様の品質かつ、見るだけで細かいニュアンスまでわかりやすく伝えることができます。また、自分のタイミングで復習したり、場合によってはお客さま対応を端末のマニュアルを確認しながら行うことができるので、スタッフのよりどころとなっています」と東氏は導入の効果を実感する。

こうすることで、トレーニングのアドバイス方法、マシンの修理・メンテナンス方法など、経験の長いスタッフの熟練の技を、マニュアルを通じて標準化することができ、サービスのボトムアップにつながっている。それが、顧客満足度も高められるということは容易に想像できるだろう。

店舗数に比例して、このインパクトが大きくなることは言うまでもない。また、ルネサンスはベトナムにも店舗を構えるが、作成したマニュアルは16言語に自動で翻訳可能で、グローバル展開にも役立っている。

現在は、店舗のフロント業務を中心に『Teachme Biz』の利活用を進めているが、まだすべてのマニュアルに関して紙から脱却できているわけではないことが課題だ。順次移行を進め、さらなる生産性の向上につなげていく。

現場で働く人に、適切な業務を適切に伝える。当たり前のことのように聞こえるが、規模の大きい会社ほど実現のハードルは高くなる。金融業界などでも大手企業が導入を進める『Teachme Biz』は、そのハードルを下げてくれる新しい教育システムとして、日本全体の生産性を高めていくだろう。