2024年3月29日、株式会社コパン(以下、コパン)は、オープンイノベーションを得意とするITスタートアップの株式会社80&Company(以下、80&Company)との資本業務提携を2024年3月4日に締結したことを発表した。
資金調達やM&Aが目立ってきているフィットネス業界において、IT業界に出資し、新規事業創出を目指すコパンにはどのような狙いがあるのだろうか。コパン 代表取締役 市岡史高氏に取材した。

  • 株式会社コパン
    代表取締役
    市岡史高氏

事業譲渡から話が発展

社名のコパンは、フランス語の「友達」「仲間」に由来する。創業31年目となる同社は、中部・関西に67施設の直営スポーツクラブ・スイミングスクールを運営しており、「健康創造」をキーワードに、子どもから大人まで幅広い年代に、様々なサービスを提供してきた。

一方、80&Companyの設立は、2018年。テクノロジー領域を強みとし、京都を中心に多様な企業とオープンイノベーションによる新規事業共創を行なってきた。2社の関係は、80&Companyが運営するフィットネスクラブ「PRONO緑地公園」(大阪府吹田市)のコパンに対する事業譲渡協議から始まった。

「最初にお会いしたのは、施設見学のために伺った店舗ですが、知識や発想、得意領域の違いが面白かったため、事業譲渡で終わるのではなく、一緒に事業をしたら何か新しいことが出来るのではないかと思いました。IT業界は、合理的でクールなイメージをもっていましたが、人と人とのつながりを大切にしていたり、泥臭い仕事を地道に積み重ねている姿に共感しました」

その後、事業譲渡と並行して、コパンからの出資による資本業務提携を行うことになる。PRONO緑地公園については、2024年4月1日、コパンスポーツクラブ緑地公園としての営業を開始した。

リソースを持ち寄り新規事業を共創

新規事業創出の重要性は、フィットネス業界に限った話ではない。市岡氏は、こう話す。

「新たな売上をつくるためには、会員数を増やすか、客単価を上げる必要があります。入会獲得は常に取り組んでいる課題ですので、既存会員に対して商品や付加サービスを販売するほうが、短期的な成果にはつながります。しかし、それらの購入率・利用率も決して高くはないため、会員という大きな資産に対するROA(総資産利益率)は低いままになってしまっています」

コパンには、会員や施設などのリアルアセットと既存事業の運営ノウハウの蓄積はあったが、新たな領域の事業を0から立ち上げることは難しく、協業するパートナーの必要性を感じていた。

「社内で検討すると、出来ることや得意なことから発想してしまうため、目新しいアイデアは出てきません。また会員のニーズは当然、スポーツクラブ・スイミングスクールに関連するものだけではないため、全く関連のない領域から持ってくるアイテムのほうが響く可能性もあるのではないでしょうか」

そんなふうに考えた。また、テクノロジーの領域でも、メルカリなど顧客ニーズに応える様々なwebプラットフォームがローンチされているが、フィットネスクラブの会員が、必ずしもそれらを使っているわけではなく、存在すら知らない人もいる。

「webとリアルの間には、まだ手付かずの市場が残っていると思います。当社は子どもや高齢者との顧客接点が多いため、それらを活かして、webの利便性と顧客をつなぐリアルのプラットフォームとして、新たなビジネスができないかと考えています」

関連領域への投資

市岡氏は、今後も“自社と関連する領域”への投資を検討していくという。

「儲かりそうか否かではなく、相手の事業と自社の事業に重なりがイメージできる企業に出資をしたいと考えています。流行のAIやDXに飛び付くのではなく、自社や顧客のニーズに応えてくれそうな商品・サービスをもった企業と、パートナーとして共に成長できればと思います」

今回の投資をきっかけに、スタートアップ企業とのつながりが増えることも期待できる。横のネットワークがさらなるシナジーを生むことも十分考えられるだろう。

コパンスポーツクラブ緑地公園は、6月のリニューアルを予定している。既存会員のニーズを満たしつつも、24時間化やマシン更新により若年層を取り込むことを計画している。