毎年夏に水難事故が報告されている。着衣で水難事故に遭遇した場合、少しでも対処法の知識があれば、助かる命もある。
水難事故から命を守ろうと、7月3日、フィットネスクラブ企業7社、株式会社COSPAウェルネス、JR東日本スポーツ株式会社、株式会社スポーツオアシス、スポーツクラブNAS株式会社、株式会社ティップネス、野村不動産ライフ&スポーツ株式会社、株式会社ルネサンスが合同で、啓発イベントを「スポーツオアシス赤塚24Plus」実施した。
イベントには競泳金メダリストの萩野公介氏がゲストで参加し、自ら着衣で入水し対処法を実演した。水中では横向きになり、歩幅を狭くすると負荷が減ること、救助を待つときのキーワード「浮いて待て」を、あおむけの体勢で腹部を意識的に上げることで、安定して浮くことができること、衣服に空気を入れたり、ペットボトルがあれば浮き具として利用できるなどを体験。萩野氏は「知らないことが多かった」と対処法を学ぶことの必要性について述べていた。
7社は、各社の施設で、個別に啓蒙活動を実施
COSPAウェルネスは関西を中心に15施設で「着衣水泳体験会」を実施、JR東日本スポーツも「ジェクサーキッズスクール着衣泳イベント」を9施設で開催、スポーツオアシスは15施設で着衣泳の体験会を開催、スポーツクラブNASは7月7日から28日まで全施設で着衣体験イベントを開催、ティップネスは7月15日に日本赤十字社埼玉支部、イオンモール川口と共催で「ティップネス イオンモール川口」で開催する。野村不動産ライフ&スポーツは16施設で開催、ルネサンスも「水難事故防止レッスン」「着衣泳教室」を実施していく。
なお編集部では、水泳をより活発なスポーツにしたいとする、萩野公介氏に単独インタビューを行った。
単独インタビュー
萩野公介氏に訊く
水泳競技を「見る楽しみ」「健康になる身近なスポーツ」へと啓蒙していきたい
母親がママ友を求めて、スイミングスクールのベビースクールに入会したことで水泳を始め、小学校2年生の時に全国大会に初出場、そこからいままで水泳を続けている。自分の意思とは関係なく始まった水泳ではあるが、これまで様々な経験をさせてもらい、学びをもらってきた。
今回の着衣泳イベントで、少しでも命が救われ、また、多くの方に水泳に興味をもってもらえたらと参加した。私自身、十数年ぶりに着衣泳を体験したが衣服が身体にまとわり、通常水着でプールに入る時とは異なる経験となった。
水泳競技は、少子化に伴って競技人口は徐々に減ってきているのは事実。ただ最新の研究でも水泳は根強い人気があり、子どもたちの習い事ランキングでは、男の子は1位、女の子は2位に入るなど、親しまれている。トップ選手が競う水泳だけでなく、普段通うスイミングスクールで、楽しい水泳ができる状況を作ることが継続にもつながり大事だと思う。
今、私は、水泳が、どうやったらより活発になるかということを考えている。これはスイミングクラブの経営方針だけで達成できるわけではなく、水泳に関わる競技者も含め、施設、コーチ、研究者などが全員で1つの方向を向いて、何か行動を起こそうという意識を持つことが、まずは第1段階だと思っている。
その行動の一つに、競技スポーツとしての水泳の在り方を考えること。直近で感じたことで言うと、パリオリンピックが今年あり、その代表選考会が3月にあったが、観戦者は少なかった。水泳は、会場に来て「見る」という価値観が日本の中には備わっていない。試合やっているから見に行こう、というよりは、テレビで見る意識が強い。野球やサッカー、バレーボールとの大きな違いだ。水泳が見ても楽しいスポーツにしていけないかと思っている。
スイミングプールは、日本全国どこにでもあり、身近なスポーツであることは強み。この強みを活かし、水泳を見てもらう機会をつくり、自らも泳いで楽しむというように、1人でも多くの人に興味を持ってもらいたい。
現在私は大学院で研究活動をしているが、研究を通じて、1人でも多くの人に水泳が魅力的だと感じてもらえるような研究ができればいい。水泳の仲間と一緒に、水泳の普及活動をしていきたい。
(談/7月3日「スポーツオアシス赤塚24Plus」にてインタビュー)