公共施設のデジタル化を「hacomono」が支える
草津市が2021年より、PFI方式で開発を進めてきた「インフロニア草津アクティクスセンター」(以下、インフロニア草津)が、2024年8月1日に開業した。施設利用登録、利用料のオンライン決済には「hacomono」のシステムを採用。PFI事業の特定目的会社で、開業後は指定管理者として運営に当たる草津シティPFIサービス株式会社の小橋正貴氏に、公共スポーツ施設運営のデジタル化について訊いた。
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インフロニア草津アクティクスセンター草津シティPFIサービス株式会社総括責任者小橋正貴氏
公共施設の運営と、サービスを向上し、管理者の利益も安定化させる
インフロニア草津は、13,700㎡の敷地に開発された鉄筋コンクリート造2階建て(地下1階)の建物内に、西日本初の通年利用できる50mプール、25mプール、飛込競技用プールがある。温水プールの計3面、トレーニングルーム、スタジオなどがある。2025年9月28日から開催される「第79回国民スポーツ大会」の水泳競技会場として使用されるなど設備面が充実する競技プールとなっている。特に飛込競技用プールについては、室内で通年利用できる施設が西日本にはなかったため、西日本で活動する選手には待望の開業となった。飛込競技者が陸上で練習できるドライランドも地下1階に国内最大規模で設置されるなど、充実した練習環境を整えている。
同施設の運営に当たる小橋正貴氏はPFI参加企業の一社である株式会社ビバから出向し運営に当たっている。ビバは大津市、草津市、枚方市に総合型クラブを経営するほか、28箇所の指定管理を受託。公共施設運営に豊富な経験と実績を有している。
インフロニア草津の運営においては、2024~2025年度は、県や国の大会による施設利用が長期間あることから、2年間は使用料型で運営を行い、2026年度から利用料金型へと変わる契約になっている。2年後から大規模なプール施設の管理費を補う収益を得るには、効率的でありながら市民サービスも向上する必要があった。そこで着目したのがデジタル化の導入で、施設工事中から検討が行われてきた。
草津市も先進的な考えを持ち、行政サービスのデジタル化を推進中だ。インフロニア草津のデジタル化の運営方針に期待を示してくれたという。
必要とされたサービスは、スマートフォンを利用しての「利用登録」「利用券の購入」「入館」で、これらすべての機能が包括され、他社機能と連携も容易な「hacomono」が採用された。
入館者の90%はデジタル利用
実際のサービス内容を見ておきたい。公共施設の利用に必要な利用者登録は通常、来館して手続きするのが一般的だが、インフロニア草津では利用者が「hacomono」を利用してオンライン上で24時間いつでも登録手続きが可能となっている。運営側は、施設で対応するスタッフの配置が不要となり省人化を可能とした。
施設利用料の支払いについてもオンライン決済が可能となった。券売機、入退場・セキュリティゲートシステム(全て株式会社Fujitaka製)と「hacomono」が連携することで、決済後に発行されるQRをスマートフォンに表示し、ゲートにかざせばスムーズに入退館できる。これまで入退場ゲートに配置されていたスタッフも他業務に当たることができ、施設側の現金管理の負担も軽減できる。またスマートフォンの利用で、利用券の紛失や破損もなくなり、他人への受け渡しなどの不正利用も防止が可能となった。
もう1つ導入したサービスが、インフロニア草津のホームページとAPI連携し、館内の混雑状況を可視化したことである。混雑状況がリアルタイムでわかるため、利用者は施設を快適に利用できるようになっている。
このように公共施設がデジタル化へと移行することは、利用者・運営側相互にメリットがあることは明確であるが、果たしてすべての市民がストレスフリーで利用できているのだろうか。
小橋氏は「デジタル化で一番危惧したのは、スマートフォンをお持ちでない方や操作が難しい方が多いのではないか、公共性に欠けるのではないか、ということだった。紙の利用券や回数券、利用登録証も残してスタートしたが、実際には90%以上の方が、デジタル利用で来館されている。利用者登録も当初の見込みより多かった。月当たりの利用人数は8月16,000人(大会利用者含む開催)、9月1万人と、見込より2割程度増えている」という。
こうした登録者は2年後から始まる利用料金型の顧客になる可能性が高く、利用状況をデータ分析して、適正なサービスを提供していきたいという。
考えているサービスは、スイミングやヨガ、体操教室などのスクールだ。「hacomono」の利用で、利用予約もできるため、スクールに活用していく方針という。またプールの貸切予約など団体利用も「hacomono」から空き枠を予約できるので、スタッフが電話やメールで個別の調整を行う必要もない。「デジタル化によりスタッフがサービスに集中できることは大きなメリット。公共サービスの向上にもつながってる」と小橋氏は語ってくれた。