フィットネス業界に限らず、多くの組織が「誰がやるのか」という問いからスタートしてしまう。しかしそれこそが、成長を阻む最大の罠だ。未顧客時代の経営論から組織変革の本質まで、今感じていることを率直に書いてみたい。
「フィットネスをしていない経営者」が武器になる時代
フィットネスをしていない経営者が、これから最も必要とされる時代が来るかもしれません。
逆説的に聞こえるかもしれませんが、フィットネス業界が本気で未顧客を取りに行こうとするなら、「なぜ運動しないのか」を身体で知っている人間の感性こそが武器になるんじゃないでしょうか。
と言って、何もしようとしない経営者のことは、肯定しません。
ただそこで言えるのは、入会へのためらい、施設に踏み込む心理的なハードル、「続かなくて当然」という感覚—これらは教えて身につくものではないということ。むしろ”経験したくてもできない”ことが資産になるのです。
サブスクモデルの本質——「ドアを開ける」と「居続けてもらう」は別の話
ただし、そこには大きな落とし穴があります。
フィットネスビジネスは、サブスクリプションモデル。ドアを開けることと、ドアの中に居続けてもらうことは、必要な感性がまったく異なるんです。ここが、分かっていない人が多い。
前者は未顧客の心理への共感力、後者は継続体験の設計力—習慣化のプロセス、停滞期のフォロー、小さな達成感の積み上げ—であり、これは自分自身が続けてきた経験から来るものが大きいんです。つまり、未顧客感覚を持つ経営者と、継続体験を知る現場スタッフの融合が、本来最も強い組織をつくるということ。
イノベーターのジレンマと「長いものに巻かれろ」という罠
では、なぜその融合が難しいのか?
ここでイノベーターのジレンマが立ちはだかります。現場のベテランスタッフが「今の会員を大切にしたい」と思うのは自然で、間違っていません。問題は、その優秀さそのものが変化を阻む構造にあることです。既存の強みを守ろうとする力学が、新しい方向への舵取りを無意識に妨げます。
こうした場面でよく聞かれるアドバイスがあります。
「まず長いものに巻かれて内部に入ってから、自分の意見を言え」というもの。
しかし、これは、聞こえは現実主義ですが、実態は思考停止の合理化に過ぎません。組織に染まって終わるケースの方が、圧倒的に多いのです。
成長できない組織の真因は、ここにあります。科学的思考を