住友不動産エスフォルタ株式会社(以下、住友不動産エスフォルタ)が手がける高級ウェルネス施設の新ブランド「MITA GARDEN CLUB」(以下、MGC)。その「上質な顧客体験」をシステム面から支えるのが、株式会社hacomono(以下、hacomono)が提供するウェルネス/運動施設向けオールインワン・マネジメントシステム「hacomono」だ。導入を推進した住友不動産エスフォルタ 企画管理部 事業推進課で課長を務める土田士司氏と、施設の構想段階から伴走し続けるhacomono VP of Enterprise 大澤桃子氏に、hacomonoが新たに開発した顔認証システムの導入経緯や、データ活用による新たな顧客体験のあり方について訊いた。
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住友不動産エスフォルタ株式会社 企画管理部 事業推進課 課長 土田士司氏(右)
株式会社hacomono VP of Enterprise 大澤桃子氏(左)
パーソナライズされたサービスと快適性を追求するMGC
住友不動産エスフォルタでは2022年、運営する総合フィットネスクラブ「エスフォルタ」の基幹システムとして「hacomono」を採用した。現場の混乱を抑えるために一部店舗から導入を開始し、2024年10月には全店舗への展開を完了している。
「hacomono」によるDXは、業務効率の大幅な改善だけでなく、同社が施設運営において大切にするポリシー「お客さま一人ひとりに寄り添った対応」や「快適な顧客体験」の実現にもつながった。
今年に入り、同社が手がける施設として最上位ブランドであるMGCにも導入。MGCは、hacomonoが新たに開発した顔認証システムの導入第1号施設ともなった。さらに、同社が開発したホワイトボードをデジタル化する機器「予約ボード」も導入し、見学受付から入会、チェックイン、予約、会費決済までをシームレスにつなげることで、洗練された顧客体験を実現している。
MGCでは「予約ボード」をプールにおける貸し切りレーンの予約管理に活用。従来のホワイトボードで起こりやすい消し忘れや、誤って他人の記載を消してしまうといったトラブルの解消につながるだけでなく、景観の美しさの維持にも寄与している。
顔認証で実現する“ハンズフリーな来館体験”
チェックインに顔認証システムを採用した理由について、土田氏は次のように語る。
「hacomonoにより、会員カードからスマートフォンでのチェックインへとDXが進みました。さらにその先を見据えたとき、スマートフォンすら不要のハンズフリーな体験を提供できないかと考えたのです。ただ、抵抗感も根強い顔認証のみに絞ってしまうのは、当社のポリシーにもそぐわない。カードやスマートフォンと並ぶ、あくまでも選択肢の1つとして用意しています」
土田氏より顔認証システムの開発について相談を受けた大澤氏は、当時を振り返り、次のように述べる。
「上質な顧客サービスを追求する企業さまとして、理想とする顔認証のあり方について明確な要件があったため、実現するには自社で開発する必要があると判断しました。施設の構想段階からメンバーに加わらせていただいたことで、早い段階から準備に取り掛かることができましたが、開発にはそれなりの時間が必要です。なんとかオープンに間に合わせることができ、ホッとしています」
現在はチェックインゲートのみ顔認証を設置しているが、将来的に利用エリアごとに区分けする場合は、顔認証を活用したアクセス制御にも対応できる設計となっている。開業時から将来のサービス拡張を見据えた仕組みを構築している点も、同施設の特徴だ。
データ活用で“おもてなし”を実現
土田氏が、一人ひとりの顧客に寄り添った対応を実現するうえで特に重宝している機能が「メンバータイプ」だ。これは、会員属性や行動履歴に応じて、「入会〇日以内」「〇月誕生日」などのタグを、設定した条件によって自動で付与できる仕組みであり、タグごとにデータを抽出し、対象者にメールを送ることもできる。
タグの条件は自由に設定できるが、むやみに増やしても意味がない。大澤氏は、「MITA GARDEN CLUB」オープンにあたっても次のようなアドバイスを送ったという。
「まずは『どういう接客を実現したいのか』を考えることが重要です。そこからひも解いて必要なデータを見極めることで、必然的に設定すべき条件が見えてきます」
実際にMGCでは、親会社である住友不動産株式会社が運営する高級賃貸マンション「ラ・トゥール」にお住まいの方であるのか、「エスフォルタ〇〇店」の会員であるのかが分かるよう、タグを設定したという。
「タグをきっかけに、例えばエスフォルタの会員さまが見学に来られた際、施設内で『所属店のスタッフに案内をお願いしたほうがいいのでは?』『そうすると、つい所属店の話ばかりになってしまうかもしれない。ほかのスタッフにしよう』などという会話が生まれます。このようなコミュニケーションが増えることがとても重要であり、結果的に個々の方により深い対応ができるようになると考えています」(土田氏)
データを蓄積すること自体が目的ではない。データを活用し、お客さま一人ひとりに合わせたサービス提供へとつなげることこそが、重要なのだ。
DXがもたらす業務効率化とリスク低減
「hacomono」は、事務作業における人の介入を減らすことで、顧客満足度の低下につながりやすい人為的ミスの抑制にも貢献している。
「メール配信でとりわけ起こりやすいのが、誤送信や送信先アドレスが表示された状態で複数の方へ送ってしまうミスです。『hacomono』により、そのような個人情報漏洩につながるリスクを抑えることができ、情報セキュリティ対策にもつながっています」(土田氏)
フィットネスクラブのなかには、会員管理とメール配信を別々のシステムで運用しており、メール配信の度にデータのエクスポートおよびインポートを実施している施設も多いだろう。土田氏は、その際にも「1行ずれたり、数字が欠けたりとデータに齟齬が起きやすい」と語る。一連の作業を『hacomono』内で完結できることも、ミスの抑制につながっている。
共創が切り拓くフィットネスクラブの新たな可能性
今後もhacomonoでは、MGCを含めたフィットネスクラブに必要と思われる機能について、その優先順位を見極めながら積極的に開発を進めていく意向だ。同社はこれまでも、導入店舗の声や時代の変化に合わせ、年間で数百にもおよぶ無料アップデートや機能追加を実施している。
「メンバータイプ機能も、当初は手動でタグ付けを行っていましたが、アップデートにより、今では自動で一斉に付与できるようになりました」と、導入後も操作性が向上する点を土田氏も評価する。
大澤氏は、住友不動産エスフォルタとの関係性について、「施設運営に必要な機能に関して、新たな視点を与えてくれる存在であり、一緒に成長させていただいています。ともに日本のフィットネスを変えていく同志として、大切な存在です」と語る。
土田氏の描く未来構想は止まらない。施設内にあるレストランの支払いを月会費と合わせて精算できる仕組みや、その先にある顔認証による決済の実現など、さらなるハンズフリー体験の提供を見据えている。
「顔認証による決済まで実現できれば、お客さまはより快適に施設をご利用いただけるようになるはずです」と土田氏。
現時点で構想を実現するのは容易ではないだろう。しかし、両社の対話から生まれる新たなアイデアが、今後のフィットネスクラブ運営のスタンダードを変えていく可能性もある。住友不動産エスフォルタとhacomonoが描く未来に、引き続き注目したい。