「孤独は1日15本の喫煙に匹敵する健康リスクだ」―この言葉を耳にしたことのある方は多いと思う。
その出典のひとつが、ヴィヴェック・マーシー氏の『孤独の本質 つながりの力(原題 Together)』(英治出版)だ。
著者はオバマ政権下で第19代米国公衆衛生局長官を務めた医師。本書は、コロナ禍に入る2020年に刊行された。
読み終えてあらためて感じたのは、孤独はもはや個人のメンタルの問題ではなく、フィットネス・ウェルネス事業のど真ん中の経営課題だ、ということだ。
ここでは、本書の論旨を整理したうえで、私たちの業界に何を意味するのかを考えてみたい。
◆公衆衛生局長官が全米を回って気づいた「共通項」
執筆の発端は、マーシー氏自身が公衆衛生局長官として全米を回り、生活者の声を直接聞くなかで気づいたことにある。ここがまず素晴らしいのだが―疾患の背景に、富や学歴、社会的成功に関係なく共通して存在していたのが「孤独」だった、という気づきだ。
そして本書が刊行される直前に、世界はコロナ禍に襲われる。期せずして、世界がその主題の切実さに直面する直前のタイミングで世に出たことが、よりこの問題の深刻さを際立たせることになった。
邦題のとおり、本書は「Making Sense of Loneliness(孤独を理解する)」と「Building a More Connected Life(よりつながりのある人生を築く)」の二部構成。著者の主張は、私なりに整理すると以下の5つに集約できる。
◆ 著者の主張、5つのポイント
(1)孤独は公衆衛生上の重大リスクである
マーシー氏は、孤独が心血管疾患、認知症、不安症、うつと関連していることを示し、アトゥール・ガワンデ氏の推薦文が端的に表現するように「喫煙に匹敵するほど健康に有害で、かつはるかに蔓延している」公衆衛生上の流行病として位置づけている。アルコールや薬物依存、暴力、うつ、不安の根本原因・助長要因でもあると論じる。
(2)孤独には3つの層がある
孤独は「親密な(intimate)孤独」「関係的(relational)孤独」「集団的(collective)孤独」の3層に分類できる―これが本書の中核概念のひとつだ。パートナーの不在、友人関係の希薄、所属するコミュニティの