コロナ禍でも米国のジムの1月の会員数急増、背景にデジタルとリアルの融合したサービス

コロナ禍でも米国のジムの1月の会員数急増、背景にデジタルとリアルの融合したサービス

先日、Bloomberg(2021年1月19日/記者 ジャクリーン・ダバロス氏)に「コロナは、どのようにフィットネス業界を変えたのか―バーチャルクラスとメンタルヘルスサービスは、パンデミックによって急激に普及。フィットネスクラブチェーンの経営幹部は、今後もそれが続くと予想」と題する記事が掲載されていました。

アメリカのフィットネス市場の今がとてもよく理解できる内容でした。 アメリカでは、コロナウイルスの影響でフィットネスクラブの入場制限が行われ、さらに一部のエリアのクラブが完全に閉鎖されたにもかかわらず、2021年1月の会員数の急増は過去数年と同じ傾向にあり、さらにいえばいくつかの点で過去を上回っている数値さえもあり、その一つに、オンラインクラスの爆発的な増加があるとのことでした。

そして、オンラインクラスでは、肉体的な健康だけでなく精神的な健康も維持しようとする、消費者の動きが見て取れるとのことでした。 

記者は、高級ジム運営会社のデジタルプラットフォームの拡大を担当するEquinox Groupの子会社Equinox Media CEOのジェイソン・ラローズ氏の次の言葉を引用し、この記事を締めていました。

「未来のサービスはデジタルとリアルの融合にあります。一部のクラブが縮小しているという事実があるにもかかわらず、人々は精神的な健康と肉体的な健康のバランスを目指していますので、消費者の需要は活況を呈しています。今、フィットネス事業者へのステークス(評価)はより高くなっています」。

記事の中から、いくつかファクトを抜粋して示します。

  • 11月に米国のジム会員2,000人を対象にClubIntelが行った調査では、調査対象者の54%が会員権を凍結または解約していました。
  • 調査対象となった消費者の75%が、いずれは流行前のルーティンや実際のジムに戻ると答えていますが、消費者の多くはバーチャルワークアウトを維持すると答えていました。
  • MindBodyは、「バーチャルワークアウトへのシフトが進んだおかげで、新年は、例年同様30%の増加が見られ、とてもいい軌道を描けています」と述べています。より多くの顧客がマインドフルネスに焦点を当てたクラスを求めているため、プラットフォームのバーチャル予約の約50%がヨガになっています。
  • MindBodyによると、パンデミックが始まって以来、フィットネスユーザーの約80%がワークアウトをライブストリーミングで視聴していたのに対し、2019年はほんの7%でした。
  • 現在72%のフィットネスクラブがオンデマンドとライブストリームによるグループワークアウトを提供しており、この数値は2019年の25%から大きく増加しています。
  • 昨年3月のジム閉鎖のピーク時には、どこもクラスの予約が85%も減少しました。アメリカでは、州や地域によって制限が異なることもあって、対面式スタジオクラスへの復帰にはムラがあります。例えば、予約はニューヨークやカリフォルニアでは2019年の数字の約50%だったのに対し、アリゾナやジョージアなどの州では15%の減少にとどまっています。
  • ClubIntelによると、全米のフィットネスクラブの87%以上が、再開した9月までに会員の60%がジムに戻らない一方で、20%は完全にエクササイズをやめてしまっていたと言います。
  • Planet Fitnessは、インタラクティブ・フィットネス・プラットフォームであるiFitと提携し、よりプレミアムなワークアウト・コンテンツを開発しました。このサブスクリプションは誰でも利用可能で、Planet Fitnessの対面ジムのメンバーシップは必要ありません。実際、「アプリを持っている人の約20%は会員ではありません」と述べています。
  • 「私たちはパンデミックの始まり以来、マインドフルネスクラスへの信じられないほどの参加者の増加を見てきました」とラローズ氏は言います。彼は1月2日を終了日とする1週間週のマインドフルネスクラスは、通常時の25%増となったことを挙げ、その関心は2021年にも長らく続くと予想しています。
  • EquinoxやPlanet Fitnessのような大手ヘルスクラブは会員価格を上げていませんが、マッカーター氏によると、ブティックフィットネススタジオの対面クラスあたりのコストは平均で20%上昇しています。パンデミックに関連したキャパシティと運営費の制限が原因でした。しかし、バーチャルクラスの価格は約20%下落しました。

空気を読んでジムを20時閉店にするのは愚、コロナ禍の今こそフィットネスが大事だという空気をつくろう

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アメリカでは、フィットネスサービスは、「Execise is Medicine(EIM)」の言葉通り、エッセンシャルで、安全なものとして、IHRSAなどの業界団体が主張し、多くの人々がそのことを理解しています。

それが、先の記事にあった「2021年1月の会員数の急増は過去数年と同じ傾向にある」という結果に現れているということでしょう。

日本のフィットネスクラブの1月の会員数は、どうだったでしょうか?アメリカ同様に急増したクラブもあるでしょうが、残念ながら、ほとんどのクラブで「急増」はなかったのではないでしょうか。

日本では、二度目の緊急事態宣言が発出されると、飲食店でもないのに、政府や親会社、クレーマーを恐れ、大手を中心に午後8時での閉店を決めたフィットネスクラブが見られました。本日、緊急事態宣言が延長されることになりましたが、まだ午後8時閉店を続けるのでしょうか。

この判断は、どうなのでしょう?

フィットネスクラブの目的や役割は、少しでも運動を習慣化しやすい安全・安心な環境で地域の生活者・勤労者が効果的なトレーニングをすることができるようにサポートすることでしょう。

午後8時閉店では、通えなくなるお客さまもでるでしょうし、閉店間際は「密」になりがちで感染リスクが高まってしまいます。

医科学的なエビデンス(Chastin et al. Lancet 2020)によると、運動習慣者は、市中感染症リスクが31%低減され、感染症による死亡(主に肺炎)のリスクは37%減少します。

これらを含め、「自粛」による健康二次被害を防ぐため、筑波大学の久野譜也教授らが菅首相ら政府に提出した資料を下記に掲載しますが、ここにはステイホームが続き、運動をしなくなると、認知症やフレイル、メンタルヘルスなどにも悪い影響を及ぼすというエビデンスが示されています。

フィットネス産業は、コロナウイルスの感染リスクがある今だからこそ、多くの日本国民にとって不可欠の産業であり、重要なのです。十分な感染対策をして、正々堂々、早く通常通りの営業に戻し、多くの生活者の健康づくりを支援していきましょう。

今こそ、フィットネスクラブの価値を訴え、広くフィットネスの啓発をしていく時です。空気は、読むものではありません。つくるものです。

資料:自粛に伴う運動不足と社会参加の制限がもたらす「健康二次被害」のエビデンス

  1. 運動不足は免疫力を低下
    自粛による外出制限は、運動不足⇒免疫力低下 ⇒感染や重症化し易い状態に(Nieman MSSE 1994)
  2. 運動習慣のある人は感染と重症化リスクを低減
    運動習慣者は、市中感染症リスクが31%低減 され、感染症による死亡(主に肺炎)のリス クは37%減少 (Chastin et al. Lancet 2020)
  3. 高齢者の認知機能の低下とフレイルの進行
    ①高齢者の認知機能低下者増が止まらない 2020年11月時で高齢者の約40%で認知機能 低下の傾向が確認。5月時に比して約4倍に(久野譜也 筑波大 2021)
    ②高齢者の要介護度が全国的に悪化の可能性 2020年10月時で前年同月比23%増、増加し た自治体は9割 (時事通信調査 2021)
    ③フレイル者の増加<コロナフレイル> 約半年の自粛による身体活動量が低下した高 齢者は、歩行速度が低下した割合が3.4倍多 く、口腔機能低下を訴える者は3.7倍多いまた、筋肉量・握力・滑舌の低下例も多い (飯島勝矢 東大 2020)
  4. コロナと妊産婦のメンタルヘルスの悪化
    近年、妊産婦死亡における死因の1位が自殺 (森臨太郎 2018)
    コロナにより産後うつのリスクが前年比の2倍 (松島みどり 筑波大 2020)
    Copyright © 2020 Kuno Lab., University of Tsukuba. All Rights Reserved筑波大学 久野研究室

合わせて下記のバックナンバーもご覧ください 

フィットネスビジネス109号『ポストコロナの経営』
フィットネスビジネス111号『ポストコロナの組織づくり』