多くのトレーナーにとって、「ジムを経営するために資格は必要か否か」は、気になるトピックの一つだろう。何らかの資格がなければ法律的に運営できないのではないか、集客にとってもマイナスに働いてしまうのではないか、などの不安を感じている人も少なくない。

そこで本記事では、ジム経営のための資格について言及し、その必要性についてまとめた。

ジムの経営に特別な資格は必要か

意外と知られていないことだが、ジムの経営をするために特別な資格は必要ない。自身が「トレーナー」と名乗れば、営業できてしまう。

しかし、病院や介護施設などからも信頼のある「健康運動指導士」や、アメリカでは国家資格となっている「NATA-ACT」のほか、NESTA、JATI、NSCAなどをはじめ、様々な企業や団体がフィットネス関連の資格を発行しているため、どれかを必ず取得しなければならないと考える人も少なくない。

実際には資格による集客への影響はそれほどないことが大半だが、自身が提供したいサービスに適した資格の内容を学ぶことで知識を体系化できるというメリットは少なからずあるため、取得しておいて損はないだろう。

資格は不要!ジム経営で重要な能力3つ

既述の通り、ジムの経営に特別な資格が必要ないことは明らかであるが、現場でのスキルとはまた別の「経営」という点において、求められる能力がある。それは、主に以下の3つだ。

  • フィットネスの専門性
  • マーケティング力
  • 人材マネジメント力

フィットネスの専門性

ジムを経営するにあたり、フィットネスへの理解はとても重要な要素の一つ。

それは、運動生理学や解剖学・栄養学などの、実践的/指導的な知識はもちろんのこと、フィットネスの歴史/成り立ちや、フィットネスという言葉の定義を正しく理解していることも意味する。

そしてその確かな専門性は、クライアントへの指導だけでなく求人という観点からも非常に役に立つ。この業界は良くも悪くも規模が小さいため、フィットネスに対する理解が圧倒的に高い人物には、能力の高い人が集まりやすい。

業界内でのプレゼンスを高めるという点でも、常に情報感度を高くし、専門性を高めていくことが必要だ。

マーケティング力

トレーナーの時とは違い、ジムを経営するためには基本的なマーケティング力が必要不可欠だ(もちろんトレーナーのときから意識すべきことではあるが)。

市場の流れや業界トレンドの把握、ビジョン/コンセプトづくり、具体的なターゲティング、集客のいろは、正しいプロモーションなど、継続して経営するための仕組みを学び、それを実践できる力を身に着けなければならない。

人材マネジメント力

ジムの経営を安定して行うためには、マネジメント能力も高くなければならない。

開業するジムがパーソナルジムで、自分がオーナー兼トレーナーとしてずっと続けていくといった方向性もあるが、それだとクライアントの数にも限界があり、店舗拡大などの事業のスケール性も低い。

プレーヤーから離れてなるべく経営にフォーカスするためには、必然的にマネージャーとしての力が必要だ。

クライアントを安心して任せることのできる良質な人材を育成(もしくは引き抜き)し、彼らに継続的に勤めてもらうための環境づくりや適正な評価システムを整備しなければならない。

ジム経営に役立つ国家資格「FCM技能検定」

ジム経営に特別な資格は必要なく、あくまでも上記の能力に長けていれば問題はない。そしてこれらの能力を養うためには、大手クラブなどで着実なキャリアステップを踏むことが最も一般的だろう。

しかし、実際に自分がジムを経営できるだけの能力を養うことができたかどうかは、自分では一概に判断できない。

そこで、自分が大体どのくらいの知識/スキルがあるのかを確かめることのできる資格がある。それが、「フィットネスクラブ・マネジメント技能検定(FCM技能検定)」だ。

FCM技能検定

FCM技能検定は、フィットネスクラブを通して日本の健康産業の発展を担う方々に向けた国家資格。1級・2級・3級と、3つの階級分けがなされており、それぞれ受検対象や重視すべき点が異なる。

受検対象および重視される点

受検対象 重視される点
1級 クラブ運営に深く携わる経営層 人材戦略やリスクマネジメントなど実践的・総合的なマーケティング力
2級 店舗マネージャークラス 人材の教育・活用やプログラム、施設などの品質管理の知識、技能
3級 学生や就業間もないスタッフ 店舗運営などの基礎を理解していること

まさに、フィットネス業界への漠然と興味を持っている学生から、すでにクラブを運営していてさらなる店舗拡大や自らのスキルアップを目指す経営者まで、業界を担う者であれば必ず取得しておきたい資格となっている。

FCM技能検定を取得するメリット

「FCM技能検定を取得している」という結果自体には、ジムを経営するうえで特段有利になることはない(もちろんマーケティング力・マネジメント力の証明にはなるが)。

ここで特筆すべきは、FCM技能検定を取得するまでに至ったプロセスにある。

国家資格として認定されていることからも分かるように、同検定への合格は簡単なことではない。特に1級ともなると、受験資格を得るだけでも一苦労だ(6年以上の実務経験および2級の合格)。

現場でのサービスはもちろん、経営面の一翼も担う立場の人が持つべき知識と技能が求められるレベルの資格となっているため、合格するには膨大な量の知識と経験が必要不可欠となっている。

つまり、同検定の1級に合格できるほどの能力が備わっていれば、ジムを経営/運営するだけの最低限の力は持っていると言っても差し支えないだろう。

FCM技能検定に合格するには

ネットでのみ得た知識や日々漠然と業務をこなしているだけでは、たとえ3級でさえも合格するには不十分だ。

さらに、早くに独立し、個人でジムを運営している経営者にとっても、1級・2級を取得するのに、自社で培ったノウハウだけではどうしても不足する部分が出てくるだろう。

そこで必要となるのが、FCM技能検定の公式テキスト。業界を代表する各分野のプロフェッショナルが集い、知識・技術を集積し、それをもとに制作された、すべてのフィットネスクラブが有効に活用できるスタンダードともいうべきフィットネスクラブマネジメントの教科書だ。

検定試験と対応するように、ベーシック(基礎)・インターミディエイト(中級)、アドバンス(上級)の3冊構成になっており、成長に合わせて段階的に、また効果的に必要な知識・技術を学び、身につけられるようになっている。

FCM技能検定合格者の声

ここで、実際の検定合格者の声を見てみよう。

クラブ運営の全体像を把握した上で、自分の担当業務の役割を理解し、日々の業務に取り組むことが理想的ですが、限られた時間中ですべての業務を経験することは現実的には難しいと思います。FCM技能検定はフィットネス事業全般の情報が体系的に整理されているため、その学習を通じて短期間で全体像を俯瞰的に把握するのに役立ちました。また、今回の経験は、新規事業を生み出すという現在の仕事にも役立っています。

5年間のマネージャー経験を経て、新任の支配人の頃に受検しました。マネジメント業務については、問題や課題が発生したときに考え行動し身に着けてきましたが、その都度、「これで良かったのかな」と感じていました。このFCM技能検定2級に合格できて、自分の経験に関する原理原則を理解できたので、自信をもって部下にも伝えられるようになりました。

このように、合格のための学習に言及している点や、合格したことによる自分の能力への自信など、合格自体に価値を置いていないことが、実際の声からも分かる。あくまでも不足していた知識の埋め合わせや、力試しとして受検している人が多い。

FCM技能検定の詳細を確認する

まとめ

ジムの経営には、特別な資格は必要ない。しかし、現場で直接クライアントを相手にするプレーヤーと、その両者に気持ちよく指導して/されてもらうための仕組みづくりを行うマネージャーは、求められる能力もまるで違う。

今まで培ってきた現場の知識だけでジムの経営まで行おうとするのは、チャレンジングでやりがいはあるものの、大きな障害も多いだろう。

まずは自分が勤めているクラブでステップアップしていき、十分な力がついたと感じたら、自分に最低限の経営能力があるかどうかを見極めるためにもFCM技能検定などの資格に挑戦してみてはいかがだろうか。