株式会社HGプランニングが運営する「StudioTRIVE(以下、トライブ)」は、大阪市中央区の大阪メトロ本町駅から徒歩1分ほどの場所にある。これまでスタジオのみ展開していたが、今年3月に拡張し、24時間ジムをオープン。プリコーが運用している、運動施設のネットワーク化を支援するテクノロジー「Advagym(以下、アドバジム)」を導入している。

山根敦史氏
株式会社HG プランニング マネージャー

スタジオ型施設に24時間ジムを追加
新たな顧客層へアプローチ

トライブは、2017年にレズミルズプログラムに特化したスタジオとしてオープン。ビルの1階にフロント、7階にロッカールームとシャワーブース、8階と9階にスタジオがあった。30〜60代の女性を中心に月会費会員約320名、都度利用会員約500名と順調に運営していたが、新型コロナウイルス禍により、スタジオのキャパシティを大幅に減らさざるを得ず、スタジオを拡大することにした。同時に、以前から展開したかったマシンジムを6階にオープンすることとした。

「スタジオは密になりやすく、生き残るために新しいものが必要だと考えました。私自身、長く総合フィットネスクラブで働いていて、マシントレーニングの必要性を感じていました。既存のお客さまとは異なる層の獲得につなげたいと考えています」。山根氏はジムをオープンした理由についてこう話す。

ストレングスマシンを中心に
短時間で効果が出やすいラインナップ

マシンジムは延床面積約65坪。マシンはすべてプリコーで、ストレングスマシンは背中を鍛えるものを中心にラインナップした。フリーウエイトエリアを充実させる一方で、有酸素マシンは自走式のランニングマシンとバイク2台のみ置いている。

「有酸素運動はスタジオでできるので、マシンジムでは、ウエイトトレーニングをしてほしいと考えています。また、有酸素マシンを使うと滞在時間が長くなってしまうため、短時間の利用で回転率を高くしたい思いもありました。プリコーのマシンを選んだのは、アドバジムが利用できることと大きさやラインナップがちょうどよかったこと、黒いマシンを用意してもらえることになり描いていたジムの雰囲気に合うと考えたためです」(山根氏)

ジムの内装は、床は濃い色の木目調で壁はグレーとレンガ風、天井は黒とブルックリン風だ。黒いマシンが施設のかっこよさを際立たせている。

クラブと会員さまをつなぐデジタルソリューション「アドバジム」

アドバジムは、プリコーがソニーと提携して運用しているデジタルソリューションだ。

マシンに設置した専用のセンサーにアプリをダウンロードしたスマートフォン(以下、スマホ)をかざすと、トレーニングの内容を自動的に記録できる。センサーは既存マシンにも搭載可能で電源施工も不要だ。利用者はアドバジムを利用することで、トレーニング内容を自分のスマホに自動的に記録でき、トレーニングデータをいつでもアプリ上で確認できる。アドバジムが搭載されていないマシンや屋外でのトレーニングデータを手入力することも可能だ。

一方、施設運営者はマシンの使用状況を把握できるようになる。また、アプリには動画配信機能もあり、マシンの使い方やトレーニングメニューの動画が準備されている。施設で独自に追加することも可能だ。また、スタッフやパーソナルトレーナーから会員さまへトレーニングプログラムやプロモーション、メッセージの配信もでき、施設外でのコミュニケーションツールとしても活用できる。

動画を活用し対人コミュニケーション減
パーソナルトレーニングの価値を向上

アドバジムに魅力を感じたのは、対人のコミュニケーションを減らせること。

「マシンの使い方を教える程度であれば、スタッフではなくシステムで十分対応できます。今は皆当たり前のように動画を見る時代ですから、マシンの使い方が動画による説明でも抵抗を感じる人はほとんどいないでしょう。初心者でも動画を見れば問題なく使えると思います。今は海外のインストラクターがトレーニングしている動画がプリコーから配信されていますが、今後トライブのスタッフが日本語で説明しているものを自社でつくる予定です」

トライブでのジムは基本的にマシンジムでは接客は行わず、パーソナルトレーニングの利用者のみトレーニング指導を受けることができる。それにより、パーソナルトレーニングの価値を高めたいというのが山根氏の考えだ。入会者は全員、アプリをダウンロードしてアドバジムを登録する。入会時のオリエンテーションではアプリの使い方を教えるのみで、トレーニングメニュー作成を希望する場合は、有料で行っている。

フロント業務や清掃はスタジオのスタッフが必要に応じて行い、ジムにはスタッフは常駐していない。基本は24時間営業のジムと同じスタイルで、パーソナルトレーニングを重視している。

「コミュニティに価値を感じる人にはスタジオに参加してもらい、ジムはトレーニングの場としたいと考えています。コミュニケーションをとりたい人にはパーソナルトレーニングを受けるかスタジオを利用してもらいます。相互利用やパーソナルトレーニング利用によって客単価を上げることも目的のひとつです」

マシンと連動して、運動履歴を蓄積
トレーニング継続につなげる

もうひとつのメリットは、トレーニングデータを簡単にとれること。

「効果を感じるためには継続することが必要ですが、フィットネスクラブを退会する人のなかには、なぜ効果が出なかったのかもわからない人も多いと思います。実際、効果が出ない理由は負荷や頻度が足りていないのですが、履歴を見ることで原因がはっきりします。また、履歴を残すことで、自分の成長を可視化できるため、モチベーションアップにもつながると思います」(山根氏)

運動履歴を蓄積するシステムは複数あるが、マシンと連動していることがアドバジムの大きな特徴だ。トレーニング中も回数や休憩時間も教えてもらえるため、管理もしやすい。

プッシュ通知を配信し会員さまとのコミュニケーション強化

もうひとつ、山根氏が今後利用したいと考えているのがプッシュ通知だ。現在、スタジオ会員にはLINEforBusinessで代行のお知らせや営業時間についてなどを連絡している。登録者は会員数の8割以上と多いが、必要な連絡事項以外では活用できていない。

アドバジムのプッシュ通知では、トレーニングメニューやキャンペーンなど会員さまにメリットがある情報を配信していきたいと考えている。

「会員さまがジムに足を運ぶきっかけをアプリでつくりたいと考えています。また、パーソナルトレーニングの継続のために、トレーナーとお客さまのコミュニケーションツールとして活用していきたいと思っています。お客さまからの返信の可否も選択できるため、運用方法については、これから検討していきます」(山根氏)

110 名がアドバジムに登録
ほかの24時間型ジムと差別化図る

2月1日から3月20日まではスタジオ会員さま限定でジムをオープン。2月11日には内覧会とともにアドバジムの登録会も行い、2月15日時点で約110名が登録している。110名の内訳は、スタジオ会員の構成と比較して男性の割合が多く、同社の狙いにマッチしている。

4月からジム単体での集客を行い、会員数300名を目標としている。

「すでに24時間型ジムは増えていますが、これからさらに無人化のジムは増えると思います。動画でトレーニング説明できることによって、それは加速するでしょう。そのようななか、アドバジムはマシンの使い方がわかるだけでなく、運動履歴の蓄積やコミュニケーションのツールにもなり、差別化要因になると考えています」(山根氏)

ビル全体をブランディング
仕事と運動を両立できる場を提供

今後の目標はビル全体でブランディングを行っていくこと。同社は、現在ビル全体をリニューアルしており、8階のスタジオを拡張すると同時に2〜4階はコワーキングスペースとしてオープンする。中心地の駅近という立地を活かし、ビジネスマンが1日過ごせる場所としていく。

「仕事の合間に運動をして、仕事をしながら健康にも気を付けられる環境をつくりたいと思っています。スタジオはこれまで通り、運動を楽しみながらコミュニケーションをとる場所として、ジムは初心者から上級者までトレーニングに集中できる場所として提供していきたいです」

テレワークが進むなか、仕事と運動をひとつの場所でできることは、ビジネスマンにとって魅力的だ。アドバジムによって、より効率的にトレーニングを続けることも期待できる。トライブおよびコワーキングスペースがどのように活用されるか、今後が楽しみだ。