現在トレーナー・インストラクターとして働いている人の中には、将来独立して自分のジムを経営したいと考えている人も少なくないだろう。

その理由として、単に儲けたいというだけでなく、自分のビジョンの実現や社会課題の解決などを目的にする人も多い。

特にフィットネス業界自体が、人の健康を預かるという点で後者の目的と結びつきも強く、だからこそそれをビジネスとしてお金を稼ぐことを卑しいと感じる人も一定数いる。

しかし、生活する上でお金というのは最も重要であり、特に経営するとなれば社員・スタッフへの給与も発生するため、「個人」ではなく「ジム/企業」として年収を増やすことに尽力し続けなければいけない。

ジム経営で得られる年収を解説

最初に、ジムの経営を主業とする企業の実際の収入高や業績についての調査について簡単にレポートする。

総合型も含めた調査となっているため、規模感の違いからすべての数字を参考にできるわけではないが、しっかりとポジショニングをとった新興企業の小規模型ジムの経営が、どれだけ追い風の傾向にあるかが分かるだろう。

ジムの収入高合計推移

ジムの経営を主業とする企業の2017年度の収入高合計は前年度を4.0%上回る5,968億300万円となった。

過去10年間における収入高合計の推移を見ると、2009年度(4,542億3,800万円、前年度比1.0%減)以降は2年連続で前年度を下回ったものの、2011年度(4,593億2,500万円、同1.5%増)以降は7年連続で前年度比増加が続いている。

健康志向の高まりで、ジムの会員数は増加傾向で推移しており、2017年度は過去10年で最高を記録した。

業歴別のジムの経営動向

2017年度の収入高動向を業歴別にみると、増収の構成比が最も高かったのは「10年未満」(40.7%)で唯一4割を超えた。

2010年に設立されテレビCMで話題の“結果にコミットする”ジムを手掛ける RIZAP(株)や、中四国でスーパーストアを展開している(株)フジが 2013年に設立した(株)フジ・スポーツ& フィットネス、2010年に設立され、低価格型で 24 時間営業の“エニタイムフィットネスクラブ”を運営する(株)AFJ Project など、業歴10 年未満の新興企業の増収が目立った。

ジム経営での年収を高める3つのポイント

ジム経営で年収を高めるためには、以下の3つのポイントを抑えておくと良いだろう。

  • 何でも小さく始めてみる
  • 余分なコストをカットする
  • 成功しているジムを真似る

何でも小さく始めてみる

マシンの仕入れや打ち出す施策、出稿する広告にしても、まずは小さく始めて市場やクライアントの反応を見ながら進めていくことが重要だ。

最初に大きく投資をしてしまうと、後々の回収が難しくなる。今後の見通しが不明なことがほとんどである以上、リスクマネジメントを怠らず、堅実な経営を目指すべきだろう。

余分なコストをカットする

単純に考えると、「利益=売上―支出」となるため、売上を伸ばすもしくは支出を減らすかのどちらかを行えば収益はその分増える。

一般的に売上を伸ばすことだけに目がいきがちだが、それよりもまずは、自分たちの管理の中で「無駄な支出」を減らすことが重要かつ手軽に行えるのではないだろうか。

例えば、ハイエンドなマシンだけでなく比較的安価なOEMを検討したり、広告に関してもターゲットや出稿範囲を限定したりなどが挙げられる。

成功しているジムを真似る

最後のポイントは、成功しているジムを真似ること。しかし、自分たちの持つリソースや再現性を考慮せず、ただモノマネするだけでは意味がない。

成功しているからといって、業態もターゲットも全く異なるジムをそのまま真似ても、むしろ逆効果にしかならないだろう。

自分たちのジムと似通ったコンセプトを持つジムであれば、一度同じ施策を試してみてもよいが、あくまでも、どのような意図でコンセプトづくりやサービス設計を行っているかなどの考え方を真似するだけに留めておくべきだろう。

年収の高いジムの収支構造例

ここでは、あるマイクロジムの収支構造をマトリクスで説明する。売上やコストの内訳にどのようなものがあるのか、ぜひ参考にしてみてほしい。

前提条件

出店形態 マイクロジム
会員数 700名
平均客単価/月 7,000円
面積 90坪
面積単価 15,000円
入会数/月 40人
体験者数/月 0人

料金体系

会員種別 入会金(円) 登録料(円) 月会費(円) 備考
フルタイム 0 5,000 7,000  

初期支出

項目 金額(円) 備考
敷金 13,500,000 10ヶ月分
保証金+礼金 0 0ヶ月分
仲介手数料 1,350,000 1ヶ月分
開業準備費 8,000,000 加盟金・開業監修費・研修費・人件費
宣伝広告費 700,000 1000円/人
マシン機器 25,000,000  
内装工事+設備 45,000,000  
合計 93,550,000  

売上高

項目 金額(円) 備考 売上構成比(%)
入会金 0    
会費 58,800,000 クレジット請求 96
体験利用料 0    
入会手数料 1,200,000 正規金額×50% 2.0
物販収入 0 0円/人  
その他収入 1,260,000 150円/人 2.0
合計 61,260,000 総売上高

費用

項目 金額 備考 売上構成比(%)
社員人件費 0 社員0名  
パート人件費 7,800,000 パート6名 12.7
フリー人件費 0    
法定福利費 0 社員人件費×13%  
電気代 2,400,000   3.9
水道代 2,400,000   3.9
物販仕入 0    
消耗品費 2,400,000   3.9
事業所税 0    
燃料費 2,400,000   3.9
広告宣伝費 3,840,000   6.3
施設管理費 0    
リース料 0    
家賃 16,200,000 月額家賃×12ヶ月 26.4
駐車場賃料 0    
保守管理費 0 警備システム  
障害・賠償保険料 105,000 会員数×150円 0.2
諸経費 6,677,250 全経費5%+ロイヤリティ 10.9
小計 44,222,250  
減価償却費 1,166,667 内装・設備・備品 1.9
借入金利 935,500   1.5
小計 2,102,167  
合計 46,324,417   75.6

利益

項目 金額 売上構成比(%)
店舗損益 14,935,583 24.4

かかる費用のうち、他に比べて圧倒的に高価な項目がある。家賃だ。立地はジム経営が成功する大きな要因のひとつだが、当然ながら立地がよければよいほど家賃負担は大きい。

ターゲットや市場の流れに合わせてここをどこまで下げることができるかも、全体的な年収を高めるためのポイント言えるかもしれない。

例えば、ビジネスパーソンをターゲットとしたジムの場合、駅近であることは重要だが、主婦や高齢者、子どもがターゲットであれば住宅地で何ら問題ない。

また、新型コロナ禍によって都心に人が集まらなくなっており、今後もリモートワークが増えればこの流れが続く可能性は高い。そうなれば、都心にジムを展開する必要がなくなるだけでなく、オンラインフィットネスをメインにしてリアルスペースは最小限にするという手もある。

いずれにしても、自分が理想とするジムに必要のない要素は、積極的に切り捨てる判断も必要かもしれない。

コロナ禍のジム経営で年収を上げるための+α

新型コロナ禍の現在、感染リスクを恐れ、積極的にジムに通う人は少なくなっている。新規入会者は減り、退会もしくは休会が相次ぎ、閉鎖を余儀なくされるジムも多いだろう。

そんななか、オンラインフィットネスを取り入れているジム、取り入れていなジムがあるが、コロナ禍でも継続して収益を上げ続けたいのであれば、積極的に取り入れるべきだろう。

新しい試みでノウハウがなく、失敗したときのリスクを恐れる気持ちも分かるが、高価なカメラやシステムなど、最初から完璧な環境で行う必要はない。

今やYoutubeやZoomなどの無料/低価格なツールでもそれなりのコンテンツは提供できるため、まずは小さく始めて徐々に環境を充実させていくことを推奨する。

見出しではあえて+αとしたが、いずれコロナウイルスが収束した後でも、オフラインとオンラインの二本柱がジムのスタンダードになるのは間違いない。

今のうちに仕組みづくりをしておき、確かな収益となるように準備をしておくべきだ。

オンラインフィットネスの成功事例はこちら

まとめ

ジムの経営者になるとどれくらいの年収を得ることができるのか気になる人も多いと思うが、経営者になるならば、「個人の年収」ではなくあくまで「ジム/企業の年収=利益」として考えるべきだろう。

そして、本記事ではその利益を上げ続けるためのポイントを簡単に紹介したが、中でも「小さく始めてみること」は日々状況が変わる現在では重要だ。オンラインフィットネスに限らず、良いアイデアがあれば、大きなリスクを負わない程度にまずは試してみてはどうだろうか。