近年、健康意識の高まりやインフルエンサーを筆頭とした筋トレ・ダイエットの流行により、主に若年層のジム利用者が増えている。
それに伴い、ジムの規模を拡大しようとフランチャイズ展開を行う企業が増えているが、実際に店舗を経営するフランチャイジー側は、何に注意して経営すべきなのだろうか。
ジムのフランチャイズ経営を始めるうえでの事前知識
まず、フランチャイズでジムを経営するにあたって、最低限網羅しておくべき情報を整理してみた。
フランチャイズで得られるノウハウ
フランチャイズでジムを経営することによって、本部側(フランチャイザー側)の持つノウハウを得ることができる。
ジムを安定して経営するため、集客施策や退会防止策などのマーケティング知識はもちろんのこと、売上・コスト管理などのファイナンスにまつわる知識を蓄えることも可能だ。
費用感
開業における費用感は、規模(業態)や知名度だけでなく、サポートの充実具合や用意する物件(基本的には条件に合ったものを自分で探す必要があるが、紹介をしてくれる企業もある)などによっても様々だ。
1,000万円台で開業できるジムもあれば、8,000万円以上かかるところもあるため、自分の予算や理想に合ったフランチャイザーを選ぼう。
資格・免許
ジムを経営するのに、特別な資格や免許は必要ない。それは、フランチャイズであっても同様だ。むしろ、本部のサポートを直接受けることができるという点で、フランチャイズ経営の方が参入のハードルは低い。
しかし、参入障壁の低さは、それだけ競争率が高いことを意味する。書類選考〜面接と、いくつかの工程を経てフランチャイジーは選ばれるため、フランチャイザー側に「この人であれば安心してジムの経営を任せることができる」と強く印象づけられるような資格や経歴、経験はあったほうがよい。
ジムを経営するうえでの能力や資格については、こちらの記事にまとめているため、参考にしてみてはいかがだろうか。
フランチャイズでジムを経営するメリット
フランチャイズでのジム経営は、個人で一からジムを経営するよりハードルも低く成功しやすいが、それは以下のようなメリットがあるからだろう。
1.ジムオーナーの経験がなくても参入できる
既述のように、フランチャイジーはフランチャイザーの持つノウハウを活用しながら経営を進めていくことができるため、必ずしもジムオーナーの経験がある必要はない。
また、研修制度が充実している企業では、スタッフだけでなくオーナー自身もトレーナー研修を受けることができるため、事前に業界の知見を深めることも可能だ。
実際に、ゴールドジムを運営するTHINKフィットネスでは、「ゴールドジムアカデミー」というオンライン研修を提供している。
運動生理学や機能解剖学、マシンの使い方、介護予防、栄養学など月に15回ほど開催し、直営・FCに関わらずスタッフは自由に参加可能。
新規で始める企業には、開業前にオペレーションやトレーニングの研修を行う。場合によっては、オーナーが直営店に来て1〜3ヶ月程度学ぶこともできる。スタッフに対しても直営店で2週間~3ヶ月程度研修を行う。
2.ブランド力を集客に利用できる
ジムを開業するにあたって、最も困難かつ重要な要素が「集客」だ。特に個人開業だと、知名度もなければツテもない場合がほとんどのため、入会を伸ばすのは難しい。
しかし、フランチャイズであれば、規模にもよるが、フランチャイザーがこれまで培ってきたブランド力をそのまま利用することができるため、最初の集客にも弾みが生まれるだろう。
フランチャイズでジムを経営する際の注意点
フランチャイズでジムを経営する際に、いくつか気をつけなければならないことがある。
1.情熱を持てるブランドを選ぶ
ジムオーナーの経験や業界の知見がなくとも良いとは言ったが、自分が経営するジムのブランドに情熱を持てなければ、長続きはしないだろう。
実際に、THINKフィットネス 取締役の田代誠氏も、「直営では出店が難しい地域で、同じ理念と情熱をもって経営してくださる方でないとFC店舗を任せることはできない」と話している。
「より多くの人にこのブランドを知ってもらうためにどうすればよいか」を真剣に考えることができるようなブランドを選ぶべきだ。
2.ブランドに頼りすぎない
ブランド力を利用できるのは、たしかにフランチャイズでジムを経営するメリットではあるが、そこに胡座をかいてはいけない。
実際にジムを経営するのは自分であり、ブランドはあくまでも付加価値の一つだと捉えるべきだ。個人でジムを経営するのと同じくらいの覚悟をもつ必要がある。
3.募集条件や出店エリアの確認
基本的なことではあるが、条件や出店エリアなどの募集要項は、事前にしっかりと確認しておこう。
特に、あまりに近いエリアで複数店舗展開すると店舗同士でカニバってしまうため、同じエリアにFC店舗を2店舗以上置く企業はほとんどない。
そのため、自分が出店したいエリアにすでにほかのFC店舗がないかどうかは、必ずチェックする必要がある。
ジム経営のためのフランチャイズの選び方
自分が情熱を注ぐことができるジムを選ぶのは大前提として、それ以外での基準としてどのようにジムを選ぶべきだろうか。
一つ言えるのは、なるべく小規模なジムを選ぶ必要があるということ。
規模が大きすぎるジムは、開業するのに莫大な費用がかかるため、ほとんどが個人ではなく企業のフランチャイジーを募集している。
また、小規模であればあるほどコンセプトやターゲットが明確である場合が多いため、たとえ業界未経験だったとしてもお客さまを想像しやすくサービス/コンテンツを設計しやすいだろう。
現在フランチャイズ加盟店を募集しているジム5選
最後に、現在フランチャイジーを募集しているジムを5つ厳選し、下記にまとめた。
1.エニタイムフィットネス
運営会社は、株式会社 Fast Fitness Japan。日本のマスターフランチャイジーとして急速に全国展開しており、その数は現在800店舗以上にのぼる。
独自に開発した入館管理システム・セキュリティシステムによって24時間営業を可能にし、ジムエリア・シャワーのみの設備にすることでイニシャルコスト・ランニングコストともに大幅に抑えている。
開業までの流れとして、まず個別の事業説明会(オンライン)に参加し、同クラブのビジネスモデルや事業計画、開業までの手順などを理解する。事業の開始時には、物件確保(自社所有・テナント入居)やFC契約、店舗施工、スタッフ採用・研修などのいくつかのステップを、担当者のサポートを受けながら進めていき、開業。
2.オレンジセオリー
運営会社は、オレンジセオリー・ジャパン株式会社。エニタイムフィットネスと同様日本のマスターフランチャイジーとして、関東を中心に展開している。
ウェアラブルとフィットネスを融合させた、心拍数に基づく高強度インターバルトレーニング(HIIT)を提供するフィットネススタジオ。「グループパーソナル」を指導コンセプトとしており、グループで行える楽しさと一人ひとりへのフィードバックで、高い人気と継続率を誇っている。
高級感のある雰囲気・デザインの再現や最高水準の遮音性を確保するため、開業費用は7,000万〜8,000万円と高めではあるが、標準的な投資回収期間は3~4年に設計されたビジネスモデル。その抜群の投資回収率と収益安定性などが高く評価され、米国経済誌『アントレプレナー』の「フランチャイズ500ランキング」では25位を獲得しているほどだ。
3.アルペンクイックフィットネス
「女性専用30分フィットネス」をコンセプトとしている、サーキット式のトレーニングスタジオ。トレーニング内容がシンプルで価格設定も低めのため、主に40〜60代の主婦層に人気を誇っている。
わずか30坪から開業可能で、内装や設備にもそこまでコストがかからないかつ少人数でも運営できるため、開業費用は1,000万円台と、業界内でも一段と低めだ。
開業費用/運営費用をともに抑えられるため、損益分岐点到達まで約半年程度(試算モデルベースのためこれより早い/遅い場合もあり)と、黒字転換が早いが、法人のみ加盟可能なため注意が必要だ。
4.FIT-EASY
「24時間型の総合フィットネスクラブ」を目指すFIT-EASY。そのビジョン通り、24時間営業にも関わらず、マシンだけでなくスタジオ・バイクレッスン・タンニングマシン・ボルダリングマシン・女性エリア・酸素ROOM・卓球・ラウンジなど、様々な設備を完備している。
しかし、設備が充実している分、必要坪数は最低でも100坪以上、開業費用は敷金・礼金など物件賃借にかかる費用を除いても4,000万円〜5,000万円ほどかかり、契約は法人のみと若干条件は厳しめだ。
5.スポーツクラブアクトスWill_G
アクトスWill_Gの特長は、なんといってもその月会費。2,970円(税込)と、同業態の競合クラブと比べても約2分の1だ。初心者の方をメインターゲットとしており、設備・人件費ともに最低限に抑えているからこそこの価格が実現できているのだろう。
また、お客さまに初心者の方が多いことで、お客さまと一緒に自分も成長できるような感覚も得られるため、業界未経験のオーナーにとってとりわけ最適なクラブとなっている。
まとめ
フランチャイズでのジム経営は、フランチャイザーのブランド力やサポートがあるため、たしかに個人で一からジムを経営するよりハードルも低くリスクも少ない。
しかし、同時にフランチャイザーへの責任があるだけでなく、経営スタイルにも制限がかかり自分のビジョンを達成することが難しくなるかもしれない。
ジムの経営を考えたときに、自分の理想がそもそもフランチャイズで実現できるのか、どこのフランチャイズに加盟すればよいかを、本記事を参考によく検討していただければ幸いだ。