ジム・スタジオ型のフィットネスクラブ「スポレッシュ」を高崎(群馬)、太田(同)、に展開し、来年1月には国内初となる完全個室型のフィットネスクラブ「Majesty(マジェスティ)」を東京・御成門にオープンする予定のNEXUS株式会社。アミューズメント事業を主軸とし「遊び」と「癒し」をテーマにしたさまざまな事業を運営している同社のフィットネス事業の現状や今後の展開、経営に対する考え方などについて、同社取締役代表執行役員星野敏氏にインタビューした。

星野敏氏
NEXUS株式会社 取締役代表執行役員

(訊き手 本誌編集長 古屋武範、以下敬称略)

古屋:貴社は、アミューズメント事業を中心に、飲食事業、フィットネス事業、温浴事業、インターネットカフェ・カラオケ事業、コンビニエンスストア事業、コインランドリー事業、託児施設運営、フェンシングクラブ運営と、たいへん手広くサービス事業に取り組まれていますが、もともとは、「群馬県の物流業者・片品運送のアミューズメント部門として、1995 年7 月に群馬県沼田市にて1号店を開店。2004年にカタウン(片品運送より社名変更)より分社する形でNEXUS 株式会社を設立」(Wikipedia)されたそうですね。

また、先の東京オリンピック・パラリンピック2020 で活躍されたフェンシングの見延和靖選手の所属先としても有名ですね。どういう経緯で分社独立し、今日の姿にまで成長されてきたのでしょう。

星野:学生時代から実はずっとフェンシング競技を続けてきました。全日本選手権で優勝し、オリンピック出場を目指しましたが、もう一歩で夢がかないませんでした。

卒業後、実家の片品運送(当時、現カタウン)に入社したのですが、最初はトラックの運転手をしたり、経営の勉強をしたり、新規事業を色々と模索するなかで、パチンコ遊技業に出会い、これを事業化しようと決めました。私自身はパチンコをした経験はまったくなかったのですが(笑)。

たまたま新規事業関連のセミナーに参加したら、隣に座った方がパチンコ遊技業の関係者で、その盛況ぶりについて教えてくれました。当時はパチンコ全盛期で、そこに魅力を感じました。

ただ‘95年に1号店を開店したときが、業界全体のピークで、そこから市場は右肩下がりとなっていきました。この年に、パチンコ遊技場は、18,000店舗を超え、百貨店などの大手流通企業や日本を代表する交通運輸のインフラ企業はじめ、上場企業がこぞって参入したのも、この時期です。

古屋:なるほど、フェンシングなどのスポーツの支援をされている理由がわかりました。ただ参入すると同時に、パチンコブームが去り、市場がダウントレンドとなっていき、焦りを感じたのではないでしょうか。

星野:当時はゲームセンターなどの事業にも一時参入を試みましたが、結果的に今でもパチンコ遊技場が、経営的には安定しています。

古屋:(パチンコ遊技場業界は)勝ち組、負け組と二極化しているのでしょうか? そのなかで貴社は勝ち組なのですね? その要因はどこにあるのでしょう?

星野:駅前の大型店ということが、共通しているのではないでしょうか。郊外の小さな店舗は、厳しい(経営状況だ)と思います。当社のパチンコ遊技場の経営は、おかげさまで安定的に推移してきているのですが、やはり経営の柱となる事業が何本かあるほうがいいと思い、まず飲食店事業を、そしてフィットネス事業を立ち上げたのです。

古屋:高崎(群馬)、太田(同)に出店しているジム・スタジオ型のフィットネスクラブ「スポレッシュ」は、堅調に経営を続けているようですが、来年1 月オープンを予定している新業態の「マジェスティ」(東京・御成門)は、どのようなクラブになるのでしょうか?

星野:実は、その建物は、3年前にホテルとして開業したのですが、コロナ禍で低稼働率を余儀なくされ、何か別の事業に転換できないか?と考えました。そこで思い浮かんだのが、感染リスクが低い完全個室型のフィットネスクラブでした。テクノジムの最上級マシン「バイオサーキット」などを配置したトレーニング専用ルーム43室を設け、さらにこれに今人気のサウナを組み合わせたら、喜んでいただけるのではないかと考えました。

そこで、日本最大となる21室のロウリュウサウナを設置。加えて、スチームサウナやセルフエステ、完全女性のみのフロアや食材一つひとつから健康と安全にこだわり抜いたFood&Drinkコーナーを設置しています。

お客さまは、スマホから使いたい部屋を予約しさえすれば、24時間いつでもお好きな時間に利用できるようにしました。既存の「スポレッシュ」は客単価が8,000円前後/月なのですが、「マジェスティ」は、客単価が30,000円になるように設定しました。

したがって、施設も器具も食材もすべてハイグレードにこだわりました(写真参照)。

古屋:フィットネスサービスを事業化していて社会的価値を感じられることはありますか?

星野:トレーニングすることによって、仕事に対しても趣味に対しても取り組むモチベーションが上がります。身体も健康になり、さらにスタイルがよくなると、ファッションも楽しめるようになります。何に対してもプラス思考になっていきますので、社会的にも様々な面でとてもいい効果があると思います。

日本は、フィットネスクラブへの参加人口が、まだ世界の先進国と比べると低いので、伸びしろがあると思います。その分、社会に貢献できると思っています。

古屋:NEXUSは、現在、売上高2,475億円(2021 年6月実績)、従業員数1,347 名(2021年4月現在)であり、毎年のように成長してきていますが、組織づくりについて、何か工夫されていることはありますか? 社員一人ひとりが常に新しいものを吸収し成長していくために、どんなことに気を付けているのでしょう?

星野:従業員が、店長、支配人を目指してもらえるような仕組みづくりが必要です。それには、店長、支配人が、スーパー店長、スーパー支配人でなければいけません。スタッフ皆から憧れられる存在となり、皆が彼ら彼女のようになることを目指すようにすることが大事です。

仕事ができるだけではダメで、人間的にも成熟していないといけないでしょう。そのための研修制度など育成システムをしっかり整えています。加えて、待遇も納得できる水準にしています。

さらに言えば、店舗展開を継続していけるようにすることです。出店していないと、ポストもつくれません。実力が多少足りなくても、店長のポストに就くことで、役職が実力を高めてくれることもあります。

古屋:これまで、何か苦労された経験はありますでしょうか? もしあるとしたら、それをどう克服してきたのでしょう?

星野:苦労と言えば、無数にあるのですが、お金さえまわるようにしていけば、いい循環ができるようになります。やはりキーポイントは、いい人材を集めることでしょうか。

古屋:イノベーションにつながるようなアイデアは、どのように発想するのですか?

星野:ずっと考え続けていますよ。でも、たいてい朝方、夢うつつの状態のときに、アイデアが湧いてくることが多いですね。おそらくそういう状態のときだからこそ、常識が取り除かれるから、「これは」というアイデアが自然に湧き出てくるのだと思います。脳が既成概念から解き放たれ、自由になるのではないでしょうか。

古屋:イノベーションというのは、いわば、非常識の常識化ですからね。常識から発想しようとすると、誰もが思い浮かべるものにしかたどりつかないでしょうから。

星野:たまに会議で発言すると、ポカーンとされることもありますよ(笑)。

古屋:最後に、挑戦的な課題や構想、ビジョンなどについてお話しいただけますでしょうか?

星野:来年1月にオープンを予定している「マジェスティ」を成功させ、ビジネスモデルを確立し、できれば全国の主要都市に1店舗ずつ展開していけたらと考えています。ですが、コアユーザーが対象になりますので、店舗数はそれほど多くつくることはできないでしょう。

1号店はホテルのコンバージョン(事業転換)ですが、今後はホテル以外の建物でも対応できるようにしていきたいと思っています。

古屋:ユーザーからは、厳しいフィードバックがあるかもしれませんが、だからこそサービス品質が磨かれ、優れた組織知が蓄積されていくのかもしれません。

星野:成功すると後から追いかけてくる企業もでてくるでしょうが、そうした企業に負けないように、仕組みをきちんと構築し、それを機能させられるようにしたいと思っています。

古屋:各地に、「マジェスティ」ができていくと、トレーニングすることによって、身体も心も健康になり、何をするにもモチベーションが高まり、プラス思考になっていける人が増え、その街が、そしてその先で日本が、元気になっていきますね?

星野:そうですね。これまでのフィットネスクラブに無い新しい価値を提供できる施設に育てることを実現したいと思っています。

古屋:NEXUS は、「(社員の)幸福度No.1 企業」を目指していますが、「マジェスティ」に勤務するスタッフの方々も、活き活きと働けるようになるといいですね。サクセスフルなクラブになることを期待しています。本日は、どうもありがとうございます。