2022年7月27〜29日に、SPORTEC東京2022が行われた。約500にも上る出展者が、afterコロナを見据えたフィットネスの未来を示した。年々規模が拡大されてきたが、3日間の合計来場者数(速報値)は、約30,000人となった。今後、フィットネス事業者には、既存のマーケティングを見直すことが求められよう。また、いかにエンドユーザーのニーズを掴めるかが成否を分けることになるだろう。
過去最大規模での開催
東京ビッグサイトにて行われた SPORTEC東京2022。前回は2021年12月と変則的に開催されたが、今回は例年通り夏の開催となった。
展示規模を拡大し続けてきたことを受け、開催前日には来場者予測が50,000人とされていたが、3日間とも気温30度を超える猛暑とあって、合計来場者数(速報値)は、約30,000人に落ち着いた(表1)。
加えて、「ヘルス&フィットネスジャパン」、「スポーツニュートリションEXPO」、「スポーツサイエンステクノロジーEXPO」、「フレイル・介護対策EXPO」など、計10のカテゴリーが同時開催された。withコロナがノーマルとされつつあるなか、ゆるい健康やウェルネス、ウェルビーイングといった市場が拡がりを見せ、フィットネスに参加していない97%をいかにして取り込んでいくのか、afterコロナに向けた取り組みが見られた。
ウェルネス体験イベント日本でも拡がる
国際スポーツ&ウェルネスウィークエンドのブースでは、2022年9月16 日〜 18日に開催される「ウェルネスウィークエンド」について紹介された(写真1)。同イベントは、6年前にフランスで始まったソーシャルイベントで、昨年までに133ヶ国が参加している。日本では、今年、初開催となる。
ウェルネスウィークエンドでは、ウェルネス、ウェルビーイングにつながるライフスタイルを啓発し、運動を始めたりウェルネスを意識したりするきっかけを提供している。日本では、全国にいる60人のエリアアンバサダーが行う、100以上のウェルネス体験クラスやイベントが企画されている。
コロナ前か、コロナ後か
SPORTEC東京2022では、61のセミナーが開催された。主にコロナ禍におけるフィットネスクラブ運営企業の取り組みなどについて取り上げられ、満席となるセミナーもあった。
これまでのフィットネスクラブ運営企業の動きを下記にまとめる。
・会員種別の見直し
・会費の値上げによる在籍者数とそのセグメントの変化
・値上げに対応した付加価値の提供、利便性の向上
・初期定着を促すプログラムの開発・諸届やスタジオ予約のデジタル化
・上記に伴うオペレーションの変更
・収支構造の見直し
・不採算店舗の撤退
・新業態の模索
・FC展開の強化
・指定管理事業の獲得
各クラブとも、最重要経営課題に何を掲げたかがマーケティングに表れた。コロナ後を見据えているクラブとコロナ前の収益を目指すクラブとの差が決算にも出ている。
特に、入会獲得がしにくいことから、会員の初期定着に主眼を置くクラブがほとんどだ。コロナ前から初期定着に無頓着だったクラブは、未顧客の潜在的なニーズや会員(元会員)のニーズの変化を捉えた動きが鈍くなっている。
収支構造では、水道光熱費の高騰がコストを圧迫することは間違いない。会員に価格転嫁をしても、会員と高いエンゲージメントが構築できているクラブは、さして大きな影響を受けないかもしれないが、そうでないクラブは対応が急務と言えよう。
さらに、できることをやり尽くしコロナを乗り越えつつあるクラブとそうとは言い切れないクラブとでは、目的や目標への求心力やチームとしての一体感が異なる。フィットネスの本質的な価値を訴求するべく、経営陣が明確な姿勢を示し早い意思決定をすることで、スタッフ一人ひとりが改めて自らの存在意義に確信をもつことができ、オペレーションにも腹落ち感をもて、機能するチームになれた一因と言えよう。この手掴み感は、トライアンドエラーの勇気を促進し、小さな実験ドリブンを回す潤滑剤となり、しなやかな企業風土を醸成した。政府がフィットネスクラブを不要不急とした痛みを私たちは忘れてはならないだろう。
エンドユーザーを知れ
初めてフィットネスクラブ運営事業に参入する異業種のプレイヤーは業界に未知数の可能性を感じている。
成否を分けるキーのひとつに、経営をサポートしてくれるサプライヤーに出会えるかどうかが挙げられる。サプライヤーには、クラブの対象顧客が解決したい課題を把握し、それを解決するソリューションを示せるかどうかが求められ、それがクラブの成否に直結する。フィットネスクラブ運営企業と良い関係を構築しているサプライヤーは、エンドユーザーの動向を把握し、それに対応できている。
今、フィットネス事業者は、エンドユーザーとこそ、つながるべきなのではないだろうか。さらに、エンドユーザーに関係ないところで生じるコロナの影響もチェックしておこう。例えば、日本では、海外製のマシンが多く流通している。一部のマシンメーカーでは、製品価格の改定を検討・実行する動きや納期の遅延がみられた。
この背景には、海外での材料の不足や物流の人材不足、コンテナ不足、中国の電力不足による工場稼働率の低下、為替高騰など複数の要因が絡み合っている。製造コスト・物流コストなどを圧迫し、これらが製品価格に転嫁される事態となっている。サプライヤーにおいてはバリューチェーンをどれだけ整えられるかが試されることになるだろう。
フィットネスを拡げよう
下半期を迎えるにあたり、コロナからの回復〜成長するべく、既存のフィットネス事業者は、オペレーション→マーケティング→イノベーションの順で取り組み、そのそれぞれに適切な配分でリソースを投じていくことが必要だ。
マーケティングの視点はフィットネス事業者の誰にでも求められる。知ったかぶりをせず、謙虚にマーケティングとは何かを捉え直して実務で結果を出そう。