ヒアリングとメニュー作成のDXで メンバーとのコミュニケーションの量と質を高める

鈴木 猛氏
フィットソリューション株式会社

熟練トレーナーのヒアリングと運動メニュー作成をデジタル化

株フィットソリューション株式会社では、代表の金山哲也さんを筆頭に、フィットネス業界での指導経験を豊富に持つメンバーが、フィットネスマシンやソフトの開発を手掛けてきている。

ここ数年、24時間ジムが急増し、コロナ禍で総合フィットネスクラブでも、スタッフの省人化と会話の制限により、メンバー一人ひとりに効果的なトレーニングメニューが提供できる環境が少なくなってきている。この状況に課題意識を持ち、ヒアリングから運動メニュー作成サービスのDXにより、定着率の高い、持続可能性の高いクラブを実現しようと、2022年5月、『ハード』『ソフト』『システム』を融合させたフィットネスジム『FREELYGO(フィリーゴー)』をオープンした。メンバー一人ひとりとコミュニケーションをとり、効果的なメニューを提供していく。

トレーニング効果を提供するサービスの核となるのが、ウェブアプリ「トレーニングアプリ」。フィットネスクラブでの熟練トレーナーのヒアリングノウハウをデジタル化。ウェブページに表示される項目を、メンバーの状況や要望を聴きながら入力していくことで、一人ひとりのメンバーにパーソナライズされたトレーニングメニューが、そのクラブの設備·備品に合わせた内容で作成される。熟練トレーナーの知識や知恵が凝縮されたウェブアプリを活用することで、質の高いヒアリングとメニュー作成が行えるため、新人トレーナーでも自信を持ってメンバーとコミュニケーションが図れることになる。

トレーナーのお助けツールとしての本質的なコミュニケーションを促す

「トレーニングアプリ」を活用したヒアリングとトレーニングメニュー作成ステップには、同ウェブアプリ開発に携わった代表の金山さん(フィットネス業界歴40年)や他のメンバーが、現場で培ってきた経験と知恵が活かされている。ウェブアプリの画面操作も、シンプルでわかりやすい。

最初に、メンバーの年齢や性別が入力された画面に、身長、血圧、安静時心拍数、体重、体脂肪率などを入力していく。運動の目的は、ダイエット、ボディメイク、バルクアップ、筋力の向上、健康維持増進の5つから選び、この目的によって入力必須項目も追加され、脂肪重量や筋肉量なども、必要に応じて入力していく。トレーニングメニュー作成にあたって、まず選ぶのが、「トレーニングの経験値」である。「導入期」「基礎期」「強化期」などから選ぶことができ、運動初心者であれば「導入期」を選ぶことで、初心者や経験値の少ない方でも、何よりも安全で簡単な、ベーシックなメニューが作成される。

また、的確なメニュー作成に欠かせない質問項目として、「どの部位を鍛えたいか」「週に何回トレーニングに来れそうか」「1回のトレーニング時間は何分程度か」を、聞いていく。メンバーと話しながら選んでいくことで、そのメンバーにとって無理なく効果的なメニューが導きだされる。同じ年齢層や目的でも、トレーニング経験値や運動頻度などに合わせて、適切なメニューが自動的に選ばれるようにアルゴリズムが組まれている。さらに、トレーニングメニューは、クラブに配備されているマシンと備品で行えるものだけが選択肢として表示されるように設定できるため、作成されたメニューをメンバーが実施するうえでも、迷うことがなく、トレーナーにとっても指導しやすい内容となっている。

自動で作成される筋トレメニューの前後には、ウォーミングアップと有酸素運動についても推奨の内容が付加されて、PDFでダウンロードできるようになっている。ウォーミングアップのエクササイズメニューも、そのメンバーのトレーニング経験値と目的に応じて自動的に作成される。

筋トレ後の有酸素運動についても、体組成などのデータと目的、1回の運動時間などから、推奨の強度と時間が設定される。現状クラブの指導現場では、このトレーニングメニューをプリントアウトし、そのままトレーニングカルテとして利用している。トレーニングシートにはQRコードが表示されており、やり方を動画で確認することができる。トレーナーが指導する場合は、それを見ながらポイントを説明したり、トレーナーがいない場合でも、メンバーが自身で確認してトレーニングが行えるようになっている。

メンバーとのコミュニケーションの量と質で競争力を高める

フィットネスサービスのDXでは、トレーニングや生体データの履歴をデジタル化するケースが多いが、FREELYGOでは、ヒアリングをDXでサポートすることで、人が介するサービスの拡充を目指している。トレーナーがメンバーとコミュニケーションをとることこそが、フィットネスクラブの体験価値に繋がると考えるからだ。適切なコミュニケーションがあるからこそ、メンバーが運動を継続でき、運動効果を出せることでメンバーの定着率が高まり、持続可能性の高いクラブ運営ができることになる。

トレーニングアプリの導入コストも安価で、初期費用10万円〜。クラブの環境に合わせた初期設定やトレーニング動画の作成も50種目まで含まれる。月額も3万円からとなっている。コロナ禍の影響で、限られたコストや人員での運営体制でも、質の高いコミュニケーションとトレーニングで競争力を高めるDXが実現できる。