ACSM(アメリカスポーツ医学会)は、毎年、世界のフィットネストレーナ―、インストラクターにアンケートを行い、フィットネス指導に有効なプログラムトレンド調査を続けている。2022年に、世界4,500人以上のフィットネス指導者がトップトレンドとして挙げたのが「ウェアラブルテクノロジー」。日本でも活用できるウェアラブルテクノロジーの注目機能について、月刊ネクスト編集部が取材した。
あらゆるウェアラブルのデータを集約して可視化世界1億人が利用する、最大のフィットネスSNSが、モチベーションを高める
STRAVAは、世界195ヶ国、1億人以上のアスリートが利用する、コミュニティアプリ。モバイルアプリでGPSを使った運動データを記録できる他、あらゆるウェアラブルデバイスからのデータを集約して可視化、独自のSNSで共有して励まし合うことで、トレーニングやフィットネスの継続やパフォーマンス向上をサポートしている。2009年に「人を動かすのは人」をコンセプトに、ハーバード大学のボート部仲間で創業。
サイクリングやランニングなどを中心にユーザー数を伸ばし、コロナ禍でPelotonやlululemonStudioMirrorなどインドア向けのコネクテッドフィットネスデバイスが増える中、ユーザー層が全方面に広がり、ウォーキングからサッカーまで40種類のスポーツに対応するに至っている。世界のフィットネスやスポーツを楽しむ人が、場所情報も共有していることから、その情報をもとに、お勧めのトレイルやランニングルートなども検索でき、フィットネスやスポーツの楽しみを広げることにも繋げている。
サイクリストやエンデュランスアスリートのパフォーマンスをサポートトレーニングによる疲労度の可視化で、コンディショニングや試合へのピーキングにも
Wahooは、サイクリストやエンデュランスアスリートに特に人気のブランド。インドアではスマートトレーナーで、アウトドアではパワーセンサー搭載のペダルで、ユーザーの出力(脚力)の計測が可能。腕に装着できるウェアラブルデバイスが、肌にフィットして正確に心拍データを測定し、GPS機能もついていることから、心拍数やスピード、時間、距離なども同時に計測できる。これを、StravaやTrainingPeaksなどのアプリと連携することで、持久的なパフォーマンス分析や、疲労度も可視化することができ、あらゆるスポーツのトレーニングやコンディショニング、試合に向けたピーキングのために活用できることが注目される。
Wahooは2009年にiPhoneにつける通信センサーで、フィットネスセンサーからのデータを取得し、エクササイズパフォーマンスを可視化するデバイスを開発。2013年にはWahooの代名詞といえるスマートトレーナーを発表し、特にコロナ禍でインドアサイクルのバーチャルゲームユーザーも増え、オンラインで多くの人と競争しながらフィットネスを楽しむ人々にも、新たなモチベーションを与えている。
精度の高いGPSと耐久性、最大46日間のロングバッテリーが特長光学式センサーで心拍変動によるストレス度や、VO2Max計測による免疫力まで
ガーミンは、1989年に航空・船舶・自動車領域のGPS機器メーカーとして創業。BtoB市場で求められる、精度の高いGPS機能や、アメリカ国防総省が定める標準規格であるMIL-STD-810(耐熱、耐衝撃、耐水)をクリアした耐久性、ガーミン独自のソーラー充電技術「DualPower」、そして最大46日間のロングバッテリー※が特長。アウトドアスポーツのアスリートや、ランナーに広く支持されている。高精度な6つのセンサーからなる光学式心拍計により、24時間を通して心拍変動をモニタリング。スポーツパフォーマンスからヘルスケアまで、科学的なデータ分析が可能なFirstbeatとともに、ストレスやVO2Max、呼吸数などさまざまなデータ解析機能が付加され、フィットネス領域での活用可能性が大きく高まった。
※『Enduro2』のスマートウォッチモードで、1日中着用し、野外の50,000ルクスの条件下で1日3時間置いた場合
コロナ禍で、免疫力への意識が高まる中、VO2Maxと免疫力が相関する論文も出てきており、ストレス度も計測できることから、健康経営などへの活用可能性も高まる。また、コロナ禍で人気が復調しているゴルフシーンにも利用が広がっている。GPS機能で、一打ごとの飛距離ログがとれたり、ラウンド中にピンまでの距離を表示する機能などが支持されている。健康づくりへの新たなタッチポイントとしても、期待される。
チームメンバー全員の体調をモニタリングできる機能を、健康経営やデイサービスに応用三大栄養素別消費エネルギー分析や、睡眠データによる体調の可視化も
ポラール・エレクトロは1977年にフィンランドで創業、クロスカントリー用に、世界初のワイヤレス心拍計を開発して以来、ウェアラブルデバイスの先駆者として広く支持されている。ウェアラブルの特性を活かして、いち早くチームスポーツでの選手一人ひとりのパフォーマンスや体調を、監督やコーチが一つの画面でモニタリングできるシステムを開発。その機能が、健康経営や、デイサービスでの体調管理に応用され始めている。
日本ではトラック運転手の体調を、運転中もリアルタイムで確認できたり、リハビリ型デイサービスなどでは、利用者一人ひとりの運動強度をモニタリングすることが可能となる。個人の健康管理機能も進化させている。消費カロリーを、心拍数から得られる運動強度データから、脂肪、炭水化物、タンパク質に分けて燃焼された割合を可視化。睡眠に関しても、睡眠時間や深さのデータをもとに、次の日の身体と脳の活性度が時間帯別に可視化され、体内リズムが把握できる機能も搭載し、健康づくりに新たな示唆を与えている。
アクティブログを、フィットネスのコミュニティづくりに活用オンラインレッスンでも、心拍数の可視化で新たな体験価値を創出
マイゾーンは、2011年にフィットネス業界のデジタルソリューション企業としてイギリスで設立。ウェアラブルで取得される心拍数のデータを、リアルタイムで館内のモニターにタイルとして表示する機能や専用アプリを通じたコミュニティの構築が支持され、HIITトレーニングブームとともに、世界中のフィットネスクラブやブティックスタジオに導入が進んだ。そうした経緯から、現在も「人とのつながりをつくるためのDXデバイス」として、フィットネスクラブや、自治体などを通じて、利用者が増え、オンラインでのコミュニティづくりにも活用されている。コロナ禍で広がったオンラインフィットネスでも、活用が広がっている。
マイゾーンでは、2020年にZoomと連携したことで、オンラインレッスン参加者の画面に、心拍数が表示できるようになった、これにより、オンラインでも、ブティックスタジオでのグループ指導さながらに、一人ひとりの参加者の心拍数を確認しながらタイムリーに適切な声掛けができる。レッスン中の運動履歴も残り、レッスン後にオンラインでのコミュニケーションがとれることから、オンラインレッスンにも新たな継続モチベーションを付加し、運動の継続を促すことが可能となっている。