行動経済学の基本を理解するとともに、フィットネスクラブ経営に役立てる方法について紹介する本連載。前回までは、なぜフィットネスクラブで運動を続けることが難しいのか?について説明したが、その際に、人間の意志決定プロセスには、ヒューリスティックが使われること多いことについて触れた。今回はこのヒューリスティックについて、フィットネスクラブ以外の例も含めて、深堀りしていく。

■ヒューリスティックは、いくつかに分類される

 これまで、ヒューリスティックについては、直感的かつ経験的に判断され、ミスを起こしやすいという点について説明してきたが、そもそも、なぜ人はヒューリスティックを使うのだろうか? 本来であれば、システマティック(意識下で熟考的な思考)で物事の選択ができれば、ミスや不合理な行動は起きにくいはずである。しかし、人間の脳は、ラクにかつ迅速に判断をすることで、自動的に疲労することを回避し、バーストすることを防ぐという性質を持っている。実際に人間も、ヒューリスティックを用いることで、快適に生活が出来ている。「ビジネスはシステマティックに!」という経営者や上司も多いだろうが(そうであるべきではあるが)、実際にはヒューリスティックを使っている人も多い。今、なぜそうしている?と聞かれたときに、論理的に説明ができないものがあれば、それはヒューリスティックによる決定という可能性が高いため、今一度考え直してみると良いだろう。

ヒューリスティックはミスやエラーが起きやすいと説明したが、具体的にはどういった傾向があるのか? タイトルにもあるようにヒューリスティックには種類がある。本記事では、「代表性ヒューリスティック」「利用可能性ヒューリスティック」の2つを紹介していく。

■代表性ヒューリスティック

代表性ヒューリスティックとは、過去の経験や思想から、連想し物事を判断してしまうことを指す。あるもの(人)が特定のグループやカテゴリに属する確率を、そのもの(人)が、対象となるグループやカテゴリの典型的な特徴をどれだけ持っているかに基づいて判断するのである。つまり、「見た目」や「感じ」がそのグループやカテゴリに似ているほど