株式会社ワールドプラス(以下、ワールドプラス)は24時間ジムのワールドプラスジムを中心に3業態のフィットネスブランドを合計150店舗展開している。設立は2017年と若く、その成長速度は著しい。2022年より、ヘルスケア領域のDXやマーケティングに精通する上口泰正氏が新代表に就任。翌2023年1月に導入を決めたのが、ウェルネス/運動施設向けのオールインワン・マネジメントシステム『hacomono』である。新規顧客獲得や地方店舗の人材戦略に貢献している。
-
株式会社ワールドプラス代表取締役社長上口泰正氏
利便性を高めストレスを軽減すれば顧客獲得の機会損失をなくせる
「8月25日に、弊社が展開するブランド全店舗に、『hacomono』を導入します」。こう、上口氏は宣言する。
今年の1月より新店を中心に試験導入し、そこで顧客の獲得数を増やすことに成功したからだ。店舗のホームページを訪れる人数に対する見学予約数は、従来の2.2倍になった。
「とことん顧客の気持ちに寄り添い、来店予約のオペレーションを改善しました。そもそも、24時間ジムを運営しているのに、有人時間しか初回来店できないことに、不便さを感じる人が多かったことは、今回の数字を見ても明らかです。予約の手続きそのものについても同様です」と上口氏は分析する。
従来は、各店舗に問い合わせ後、メールにて来店日時を決めてもらい、当日入会する場合は会員登録の手続きに45分掛かっていた。それが、人手も掛けずに、わずか13分に減少。それ以前に、絶対的な申し込み数の増加と、来店までに離脱する人数の減少も実現。
なぜなら、アクセスしたページから希望の日時を選び、予約するだけで済むようになったからだ。
予約をしたら、発行されるQRで入館できることも、見込み顧客の心理的なハードルを大きく下げている。
「24時間ジムには、指紋認証や顔認証など、様々な入館方法があります。しかし、弊社で独自のアンケートを取ったところ、これらのセキュリティに安心感を覚える方は約2%しかおらず、不安を覚える人のほうが多いことがわかりました」と上口氏は言う。自身の生体データは個人情報とも言える側面があり、それをジムに渡すことに抵抗がある人も中にはいるのだ。
それらをクリアしつつ、来た初日から自由にいつでも店舗に入れるQRが選ばれ、せっかく体験に来ようと思っていたのに、気が変わって来なくなってしまうような機会損失を極端に減らすことにつながった。
人口減少が続く地方店こそDXによる省人化と最適化が急務
ワールドプラスの『hacomono』導入の目的は、先ほど述べたような顧客獲得数(率)の改善。特に集客したい店舗のweb広告出稿数を増やす施策と組み合わせて結果につなげている。
それに加え、人材リソースの最適化が、顧客にも従業員にも好影響をもたらしている。まず、来店予約が有人時間帯に入った場合、顧客セグメントによって最適な人材に案内を担当してもらうシフトを組むことで、入会率の向上に取り組めるようにした。
次に、従業員目線の話に移るが、上口氏は衝撃的な効果を口にする。
「トレーナーの離職率が約1/9にまで激減しました。『hacomono』導入前、彼ら彼女らの業務時間のうち、8割は入会などの事務作業や掃除に割かれていました。それが、1人あたり月に40時間の事務作業時間の削減に成功し、掃除も外注に切り替えたことで、業務時間のうちの1割になりました。これにより、スタッフの定着率も格段に高まりました。そして、その余った時間を、本来のトレーナー業務やコミュニケーションに費やせるようにしたことで、会員さまの退会率も月間4.5%から3.2%にまで減らすことができました」と上口氏は胸を張る。
今、日本は人口減少の真っ只中にあり、特に地方ではその傾向が顕著だ。
ワールドプラスは地方店が多いため、この課題も解決するために、DXと向き合った。その結果、人手を介する必要がある雑務を減らし、トレーナー業務に集中できる環境を作り出すことに成功。地方は都心部に比べて採用が難しい。だからこそ、人材の定着が必要不可欠なのだ。
「おかげさまで、今後さらに出店を加速できる体制が整いました。なぜなら、人材が集まっていない段階から、先にテナントを決めることに対するリスクが減ったからです」と上口氏はさらなる事業拡大に精を出す。
独自のセグメントで顧客の行動をビッグデータ化し、継続を促す
ワールドプラスは自主的に、顧客の入会目的や年齢・性別、さらには店舗までの距離などを変数とした顧客セグメント分けを実施している。今後、『hacomono』に期待することは、顧客の来店頻度や来店数のビジュアライズ化だと言う。
「セグメント毎に、いつ頃来店頻度が下落し、退会につながりやすいかというデータを蓄積しています。それに対して先回りし、顧客にアプローチできれば、さらに退会率を抑えられると考えています。現在は、自社システムと掛け合わせて手作業で行っているのですが、例えば1ヶ月来店がないお客さまへ自動的にメールを送る機能などが実装されれば、さらに嬉しいですね」
と上口氏は語る。顧客の体験価値を高めるDXは、まだまだ続く。