ローソンPB(プライベートブランド)のデザインリニューアルは波紋を呼んだが、そこには確かな意図があった。フィットネス業界における商品/サービスデザインにおいても、参考にするべき部分があるのではないだろうか。

外観だけではない デザインの存在意義とは何か

2020年5月より、株式会社ローソンが、同社PBの全パッケージデザインのリニューアルを開始した。その件に関して、ネット上は「見づらい」「商品の良さが伝わらない」といった否定的な意見で溢れた。特に、デザイナーを職業とする人々からの意見として多かったのが、「デザインの存在意義」を問うものだった。

デザインとだけ聞くと、多くの人が「かっこいい形」や「おしゃれな色」といった、いわゆる主観的な見た目のことを思い浮かべるのではないだろうか。しかし、それはあくまでもデザインの一片を切り取ったものであり、それだけですべてを語ることはできない。

デザインは、英語にすると「design」。これには、「図柄・模様」だけでなく、「設計」や「計画」、「意図」という意味さえも含まれる。その意味の比重としてはむしろ後者に重きがあり、決して外観のみを表した言葉ではないことがわかる。そして、ここにローソンPBのデザインが物議を醸した理由がある。

つまり、ローソンPBのデザインは、デザイン本来の目的・存在意義を考えていない、外観のみを重視したデザインであると揶揄されたのだ。

コンビニは、訪れる人も陳列されている商品も多様性で溢れている場所だ。だからこそ、「その商品が何であるのか」「どのような商品なのか」が、ひと目で分かるようなデザイン、つまり、商品の一つ一つを主張させるようなデザインでなければならないはずだ。

しかし、ローソンPBのデザインは、まさにその真逆のデザイン。パッケージのメインカラーを目に優しいベージュ色やクリーム色に統一し、商品を説明するビジュアルも、写真を全面に出すのではなく手書き風のイラストを小さめにあしらうのみにした。これでは、それが何の商品なのか分からず、他の商品との見分けがつきづらくなるのも当然だ。

デザインリニューアルによる売り上げへの影響はなし

現在は、間接的な接触による新型コロナへの感染リスクを恐れ、商品を手に取ってまじまじと見るようなことは控える人が多いため、必然的に少し遠目から商品を眺めることになる。その際に商品の見分けがつかないと、消費者が自分の求めている商品を見つけることができなくなる可能性も増え、売り上げの低下に直結するようにも思えるが、実際はそうではないようだ。

冷凍食品や菓子、牛乳や豆腐、納豆などすでに新しいデザインに切り替わっている商品について、切り替え後の売り上げは順調。同社によれば、例えば冷凍食品は全体で、切り替え後の5月は前年同期比で3割の売り上げの伸びを記録。牛乳や卵、納豆なども1割程度売り上げが伸びている。

(日経XTREND『ネットで物議のローソンPBデザイン nendo佐藤氏に真意を聞いた』より引用)

もちろん、ネット上で話題になったことが起因した、一時的な結果の可能性もあるため、これだけを見て判断することはできない。しかし、少なくとも現段階において、デザイン変更による悪影響は受けていないように思える。

そして、驚いたことに、そもそも同社にとって「見えづらい」などの批判が生まれることは予想の範囲内であり、それによる短期的な売り上げの変化は、重要ではないという。ローソンPBデザインがこのようなシンプルなものにリニューアルされた背景には、単に外観上の「おしゃれさ」だけを重視したのではない、別の本質的な意図があったのだ。

消費者のライフスタイルに焦点を当てたデザイン

同デザインを担当した有限会社nendoの佐藤氏は、日経XTRENDによる取材のなかで、「『ローソンの商品なら生活を豊かにしてくれる』という体験を顧客が得られるデザインを心がけた」と話している。

例えば牛乳やお茶などの紙パック飲料には雑貨のような面影を持たせ、お気に入りの食器と共に朝食のテーブルに並んでいても違和感のないように。家族の夕飯を用意する時間がないときの1品として、コンビニで揚げ物や総菜を買うことも多い時代。そのときに、後ろめたくなく購入でき、そのままでも食卓に並べられるように。そして、お昼にコンビニ弁当を食べるとき、そこに少しでも豊かさを感じてもらえるように……。

(日経XTREND『ネットで物議のローソンPBデザイン nendo佐藤氏に真意を聞いた』より引用)

つまり、消費者に購入される前のコンビニに陳列されている商品をイメージしたのではなく、消費者に購入されたあと、彼らの家にある棚や机の上に並べられている商品をイメージしてデザインされたのだ。

新型コロナ禍の現在、必然的に自宅にいる時間は長くなる。状況によっては1日のほとんどの時間を自宅で過ごすことになるだろう。そうなれば、「おうち時間」をより快適にするために、部屋のレイアウトや生活用品を自分好みにアレンジする人は当然増える。ローソンPBのデザインは、そのような場合でも部屋の景観を崩さず、どんな部屋にも溶け込むように設計されている。また、zoomやTeamsなどを用いたビデオ会議中、たとえ背景の中にパッケージが写ったとしても気にならず、むしろ雑貨にさえ見えるだろう。

ローソンPBのデザインは、最初の印象にのみこだわった購買の瞬間のためだけのインパクトのあるデザインというよりはむしろ、人々の生活に寄り添い、各々のライフスタイルを壊さないような、調和を大事にする日本ならではのデザインと言うことができる。