ある種ブームのような形でフィットネスが浸透し始めている今、新たなステップとしてジムの経営者になることを視野に入れるトレーナーも多いだろう。

しかし、経営するとなれば今までの現場の知識だけで成功することは難しく、経営の前提知識や安定してジムを経営するための準備・ノウハウが必要不可欠だ。

本記事では、独立を視野に入れているトレーナーやすでにジムを経営している方に向けて、ジムの経営が成功する確率を少しでも上げるために知っておくべきことをシェアする。

ジムの経営に収益性はあるのか

トレーナーから独立する人、新たにフィットネス業界に参入する人然り、「はたしてジムの経営は儲かるのか」という不安はあるだろうが、市場の成長性やビジネスモデルを考えると、比較的収益の向上が見込みやすい事業であることがわかる。

市場の成長性について

フィットネス市場は平成24年から継続して伸びており、平成31年の市場規模はおよそ4,939億円とほぼ5,000億円にまで達し、業界史上最高値を更新した。

平成31年・令和元年は消費増税があった後半は多少鈍ったものの、前年同様に安定的に入会者があり、また継続率も安定する傾向にあり、既存店、新店ともに在籍者数が堅調に推移した。

業界売上高トップ200企業の中で前期比プラス(横ばい含む)の企業数は平成25年139社、平成26年は136社、平成27年は133社、平成28年は135社、平成29年は145社、平成30年は140社、平成31年は139社と、この間好調裡に推移している。

多くの総合業態の既存店において、この数年間40歳以上の中高年層の入会が増え、在籍会員に占める構成比も増えた。平均的なフィットネスクラブにおけるフィットネス会員の50歳以上の構成比はおよそ50~60%となっている。

また、24時間営業のセルフサービス業態のジムや女性専用サーキットジム、ホットヨガスタジオ、ブティックスタジオなどの小型店が、既存の総合業態の新規入会者数を押し下げる傾向がうかがえる。

ビジネスモデルについて

ジムのビジネスモデルは、ストック型と呼ばれるものだ。これは定額サービスを提供する仕組みをつくることで継続的な収益を得るビジネスモデルで、サブスクリプション型とも呼ばれる。また、これと対を成すのがフロー型と呼ばれるビジネスモデル。一度商材を売ってしまえばそれでビジネスが完結してしまうビジネスモデルで、一般的には売り切り型とも呼ばれる。

消費者には「ジムは月額会員制で通うもの」というイメージが根付いており、すでに仕組みができあがっているとも言えるため、一度経営してしまえば比較的安定した収益を確保できる(もちろん集客や会員継続のための施策は必要)。

「1,000 True Fans」というモデルが、ジムの経営を安定して行っていく上では理想的な経営モデルだ。これは、自身のまわりで1,000人のユーザーを獲得・維持するサークル型教室をつくったとして、お客さま一人から月1,000円をいただくだけで、1,000人集客できると仮定すると、楽々と年収1,000万円をこえることになるというもの。

つまり、自分たちが提供するサービスに継続してペイしてくれる、価値を感じてくれている”ファン”をどれだけつくることができるかが重要だ。これは、ジムを経営するなかで最も難しい部分であり、また最もやりがいを感じる部分ではないだろうか。

ジムの種類やとるべきポジショニング

ジムを経営するにあたって、どのような業態があるかを整理することは重要だ。

ジムの業態は主に3つに別れており、それぞれ総合型ジム・小規模型ジム・パーソナル型ジムと大別できる。それぞれの規模や開業/経営コストを考えると、小規模型かパーソナル型のジムの経営が現実的だろう。しかし、ただ漠然とその二択で考えるのでなく、さらに細分化しどのようなポジショニングをとるかがより重要となる。

小規模型・パーソナル型のジムをポジショニングごとに分けると以下の4つに分けられる。

  • 成果型
    機能改善やボディメイクなど、数値や見た目で測ることのできるニーズを満たすことを目的としたジム。
    ex.「RIZAP」「R-body project」
  • 顧客体験型
    ブティックスタジオのような、ユーザーに体験的価値を提供することを目的としたジム。
    ex.「ザ・ジェクサー東京」「ティップネス丸の内スタイル」
  • 利便型
    24時間のセルフサービス型ジムのような、時間に縛られない手軽さを実現したジム。
    ex.「エニタイムフィットネス」「快活クラブ FiT24」
  • 調整型
    マインドフルネスやヨガ・ストレッチといった、心身の調子を整え日々の生活をより過ごしやすくすることを目的としたジム。
    ex.「ZERO GYM」「LAVA」

出店するエリアや市場の動向、自分の持つリソースを考慮し、これらの中から最適なポジショニングを選択する必要がありそうだ。そして、自分と同じポジショニングを取っているジムの中で経営が成功している店舗を徹底的に参考にすることが重要だ。