ドイツの最新型IoTマシンを10年以上取り扱う株式会社アライアンス(以下、アライアンス)に、今年の2月よりセールスディレクターとして益子(ましこ)健一氏がジョイン。大手フィットネスマシンメーカーを20年以上渡り歩いてきたベテランであるが、9年ほどフィットネス業界を離れ、別の業界に身を置いていた。その同氏がフィットネス業界へ戻ろうと決意したのは、milonがヘルスケア業界に与える衝撃の大きさを予見できたからだと言う。一体milonの何が、マシンに精通する益子氏を突き動かしたのだろうか?
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株式会社アライアンスセールス ディレクター益子健一氏
SPORTEC2021でmilonと再会 2ヶ月後に業界へ復帰
益子氏は国内外のフィットネスマシンメーカーで長年のキャリアを積んできた。某マシンメーカー勤務時代には、当時世界初のクロストレーナーを日本に広めた実績をもつ。
「私は、今までの経験や知識がありますから、商品を見る目には自信があります。過去を振り返っても、私が『売れる』と確信したマシンは、しっかりと市場に広がっていきましたね」と益子氏は物静かにそう話す。
同氏は2013年に一度フィットネス業界を離れた。最後に務めたメーカーでは営業の統括を行い、業界への心残りはないというくらいに仕事を全うしたからだ。
しかし、それから9年が経ち、フィットネス業界へ戻るきっかけを与えたのは、2021年12月に開催された東京会場でのSPORTECだった。益子氏はフィットネス業界を離れてから、インバウンド旅行者が活況であったタイミングということもあり、小売店向けの免税システムのセールスへと転身していた。ただ、インバウンド需要はコロナウイルスの影響で、一気に下火となってしまい、去就を考えていたタイミングで、古巣であるフィットネス業界の展示会に足を運んだそうだ。
「私が別のメーカーに勤務していたとき、2013年のFIBOへ参加するためにドイツへ行きました。その当時からmilonの存在を知り、一目置いていました。アライアンスの代表を務める荒川さんが法人を設立して、本格的に日本での展開を目指しているということも人づてに聞いていました。それから月日を経て、当時から完成度の高かった最新マシンが、さらなる進化を遂げており、『これは日本のヘルスケア産業を変える』と確信し、アライアンスへの参画を決めたのです」
IT業界で得た知見をIoTマシンの普及へつなげる
免税システムの販売はフィットネス業界とは全く畑の違う領域であったため、最初はIT用語の理解に苦心したと言う益子氏。しかし、その経験が今の業務に大いに役立っている。
「フィットネス業界に携わった期間が長く、IT領域に理解がある人材は希少です。私は、そのどちらも兼ね備えているため、milonをフィットネス業界の人たちへご説明するのに適していると思っています。API連携やデータの取り扱い方法など、フィットネス業界の方には馴染みの薄い部分を、私が通訳することができるからです」
益子氏にとって、milonを取り扱うことは天職と呼べるだろうし、フィットネス業界としても、同氏の復帰が与える影響は計り知れないだろう。
「業界内の昔からの知り合いには、『戻ってくるのが遅かったんじゃないの?』と言われたりします(笑)しかし、IT業界でもしっかりとした実績を積んだ状態かつ、ポストコロナを見据えた今こそ、そのときだと思いました」
行政としてもDX化の推進を企業に求めている。それもアライアンスにとっては追い風となっている。DX化を前提とした助成金も徐々に増えてきており、マクロ動向を鑑みてもIoTマシンが普及する地盤が整ってきていると言えよう。
全自動・電動モーターを駆使した最高級マシンとして欧州で普及
milonは50年以上の歴史をもつドイツのマシンメーカー。1986年に初めて電子制御のストレングスマシンを開発。類似したコンセプトのマシンを他のメーカーも取り組んできたが、成功と呼べる事例はまだ少ない。
「私も電子制御のマシンが登場した頃は、正直に言うと懐疑的でした。ただ、milonだけは一貫してマシンの性能を追究し続け、そのクオリティの高さから高級路線をひた走っています。言わば『ストレングスマシン界のメルセデス・ベンツ』です。ちょうど、ドイツですし」と益子氏は冗談交じりにそう話す。
ところで、現在milonを導入している施設は世界にいくつあるかご存じだろうか? 欧州を中心に、その施設数はなんと3,000以上にも及ぶ。ドイツで有名なフィットネスチェーンであるPRIME TIME fi tnessでもmilonが導入されており、MAIN TOWERと呼ばれる超高層階のビルのフロアでトレーニングを楽しめるランドマークも人気を博している。
平均的なジムよりも会費を高く設定しているが、会員さまは納得して足を運んでいる。
「実は、ドイツで最もmilonの販売をしているトップセールスはボディビル元世界チャンピオンです。そのような本格的なフィットネス愛好家に支持されるということは、しっかりとした負荷をエキセントリックおよびコンセントリックの双方に掛けられる証拠でもあります。高い負荷であるほど電子制御のマシンは軋みやすくなりますが、milonはスムーズに稼働します」
と益子氏は強調する。世界で受け入れられているmilonに、同氏が太鼓判を押す理由がわかっただろう。
日本もフィットネスクラブの風向きが変わってきた
今や、ありとあらゆるデータを活用し、経営の改善や提供サービスの向上を目指すのは当たり前の時代になっている。そのなか、その動向に興味関心を高めるフィットネス事業者が増えてきている。
「10年前と比較したときに、フィットネスクラブの反応がまるで異なります。近未来のマシンとして認知はされていても、自分たちの施設に導入するイメージまでは昔なら持てていなかったのですが、今や本気で導入に向けてご検討いただけている施設からの問い合わせが、ありがたいことに増えています」と益子氏は胸を張る。自信をもって勧められる先進的なマシンが、日本でも受け入れられ始めているのだから、当然だろう。
日本においてmilon が活躍する場所
Fitness Business通巻118号に掲載した4H fitness梅ヶ丘スタジオでは、プレオープン時から200名以上の集客に成功し、現在はさらに会員数を伸ばして順調に運営している。高級マシンゆえに初期費用こそ高いものの、集客力の向上および無人営業対応による運営コストの削減に寄与するため、すでに同施設を運営する小田急電鉄のように、初期投資をする価値を理解した企業が出てきている。
「文京区にある私たちの本社にも、milonのサーキットトレーニングジムが併設されていますが、別のサーキットトレーニングジムから移籍されて、milonの機能的価値によって運動習慣を定着させている会員さまが増えました」と、益子氏に同席するかたちで取材に応じてくれたアライアンスの高橋氏は言う。エンドユーザーも、その価値に気付き始めていると言えるだろう。
それらのニーズに対応し、今年の5月から大阪の天満橋にzenfitをオープン。今後も、フィットネスクラブだけではなく、クリニックや公共施設にも広げていく。ドイツ発祥ということもあり、医療関係者からの信頼も厚い。
リハビリや予防医学といったメディカルフィットネスの観点で注目され、医療現場での導入事例も増えてきている。
益子氏が目指すのもヘルスケアステーションの実現
今回は最新マシン特集であるので、主にmilonについて話を進めてきたが、アライアンスが目指すのは運動・食事・日常生活に関するすべてのデータを健康づくりに活かす「ヘルスケアステーション」の創出だ。益子氏も、このビジョンに強く賛同し、将来性を感じたからこそ、「やり切った」と考えていたフィットネス業界へと戻った。
このヘルスケアステーション構想はアライアンス独自で日本に展開している。そのなかでmilonマシンが担う役割はあくまでその一部。SONIX 音波振動マシン、MEonアプリ、ウェアラブルデバイスなどすべてパッケージ化して初めてヘルスケアステーションが完成する。これをフィットネスクラブに限らず、地方自治体と連携した「健康なまちづくり」につなげていく。
今後はこのヘルスケアステーションを構成する仲間として、遺伝子検査や姿勢を数値化するAIソリューションなどを加えようと模索している。さらに、本国であるドイツではすでに発表されているmilon YOUという、従来のミロナイザーに変わる新しい動作解析デバイスが誕生した。日本へ上陸したタイミングで、また詳しくご紹介したい。
「コロナ禍でmilonマシンの導入が延期や中止になるなど、苦しい時期もありました。しかし、我々はその間にヘルスケアステーションの実現を可能にする体制を整え、逆境を乗り越えてきました。次は、皆さんが逆境を乗り越えるお手伝いをしたいですね」と益子氏は、その強い想いを話す。