長年、フィットネス業界において、施設デザインから集客までハード面・ソフト面で幅広い経験をもつ中村良明氏による連載。中村氏が考えるデザインに影響を与える要素の「質:材質・質感」のなかから、木にまつわるエピソードやアイレクスにおける木を活かしたデザイン事例を紹介する。

アイレクススポーツライフ株式会社
デザイン&コンサルティング チーフディレクター

今号のテーマは…

さて、空間プロデュースにおいてデザインに影響を与える要素として、「質」「形」「色」「光」があるというのを前号でお伝えしました。その際、「質」については、材質・質感などの要素があるということもお伝えしましたが、今号では、その材質のなかでも「木」について取り上げます。

さて、木という素材ですが、日本人は他の国の人に比べ、木のある空間に親しみを感じる気持ちが強い民族ではないでしょうか? 木目模様の材質としての美しさや触れた際の質感に心地よさを感じるのは、日本の長い歴史の中で培われたものかもしれません。

日本における空間プロデュースでは、木は欠かすことのできないアイテムであることは疑いのない事実と私は思っています。

アイレクスにとっての「木」

実は、アイレクススポーツライフも「木」と縁のある会社です。弊社はグループ創業100余年の長い歴史を持ち、大正7年愛知県豊川市に白与材木店として創業したことに始まります。扱う商品は木材から住関連事業、そして商業施設のプロデュースやスポーツクラブ事業へと時代と共に変遷してまいりましたが、材木店からの志である信用と信頼を第一に、本質を見極め、皆さまに良質な生活を提案したいという思いは創業以来現業に至るまで変わることなく続いています。

また「アイレクス」というクラブ名も、もちの木属の学術英名です。現在も豊川本社の傍らに樹齢約150年のもちの木のシンボルツリーがいきいきと茂っております。この地に複合商業施設を計画した際、「アイレクスのもとに素敵な店が集まりました」をコンセプトに「アイレクステラス」とネーミングしたことが始まりで、スポーツクラブとしてのアイレクスの名称も、その経緯から名付けられました。

そんなこともありアイレクスの施設づくりにおいて「木」は拘りの材料の1つとなっています。空間プロデュースにおけるキーワードとして以前「Differentiation:差異化」

というワードを挙げまし