• 比江島 光氏

    東急スポーツシステム株式会社
    運営本部 運営一部
    マネージャー

東急スポーツシステム株式会社(以下、東急スポーツシステム)は東急電鉄沿線地域の健康づくりに寄与するフィットネス施設を複数ブランド展開している。そのうち、総合型業態を担っているのが「アトリオドゥーエ」だ。東京都内に加えて横浜市に合計5店舗出店している。コロナをきっかけに、より人を介したサービスの重要性を再認識し、会員の安全監視業務についてDX へと舵を切った。

手厚いサポートが売りの総合型フィットネスクラブ

アトリオドゥーエは、所得水準は高いものの、運動習慣が身に付いていない人をターゲットにした総合型ジム。店舗のつくりもハイクラス層が好むようなエレガントさがあり、高級ホテルを彷彿とさせる。フロントやラウンジ、それからスタジオに至るまで、非日常感を演出している。

月額料金内で豊富なサポートプログラムが受けられることが強み。しかも、サービスを提供する人材は常勤のスタッフを中心に据えることにこだわりを持っている。「体組成データを基にしたカウンセリングや、トレーニングプログラムの策定まで、しっかりと提供することを心掛けています。この取り組みが、地域密着型の健康増進サービスとして、会員さまにもご支持いただいています」とアトリオドゥーエの本社部門を担当する比江島氏は話す。

より多くの時間をお客さまのために使いたい

そんなアトリオドゥーエも、多分に漏れずコロナの影響を受けた。具体的には、会員が衛生面での不安に対して敏感になったことで、今まで以上に清掃や消毒に時間を費やす必要が生じたことだ。

「コロナ禍での衛生環境を最優先するため、これまでサポートに注力していたスタッフを清掃や消毒業務に就いてもらうことにジレンマがありました。そんな折、安全監視の効率化がカギになるのではないかと考えました。つまり、清掃や消毒の業務が増えたのであれば、別の業務をスリム化するしかないと」。比江島氏は、こう振り返る。

そこで白羽の矢が立ったのが、AI カメラソリューション「GYMDX」だ。 2021年11月にアトリオドゥーエ武蔵小山へ導入。その効果の高さを実感し、’22年6月にはアトリオドゥーエ全店への導入に踏み切った。

「私たちが大切にしていた、会員さまのサポートの時間を増やすことに成功しました。今までであれば、必ず1人はフロアを巡回しながら、何か危険な事象が起きていないか、安全監視をする必要がありました。このスタッフは、たとえ会員さまから質問されても、安全監視業務という重要なミッションから、サポートには注力できない状況がありました」。比江島氏は、さらに続ける。

「それを、AIカメラで置き換えました。万が一、危険な事象が生じた場合は、カメラの提供元であるOptFit社から緊急電話が届くようになっています。その専用端末をスタッフに常備させ、電話が掛かってきたら何よりも優先して応答するようにしています。この体制に切り替えてから、フロアにいるスタッフは会員さまのサポートに集中できるようになりました」

GYMDX がもたらす副次的なメリット

会員と向き合う時間の創出を目的として導入されたGYMDXであるが、ジム運営の観点で、別の便益も生み出している。

まず1つ目は、プログラム収入のアップだ。スタッフの安全監視業務の負担が軽減された分、会員と直接向き合える時間が増え、サービスの質が向上。それが、有料スクールやパーソナルトレーニングの申し込み増加に実を結び始めている。 

2つ目は、スタッフの配置適正化による人件費の圧縮だ。見回りのためにスタッフを配置する必要がなくなり、 AIカメラ設置前では実現が難しかった少人数でのオペレーションが可能になることが、武蔵小山店で判明した。

「絶対的なスタッフの配置数は減っても、サービスの質も量も向上できる点が、全店舗への導入の決め手でした」と比江島氏は説明する。顧客最優先で始めた取り組みが、自分たちにもプラスとなって返ってきているのだ。

安全監視機能に加え、分析機能が運営効率化へ導く

今後、東急スポーツシステムの総合型のみに留まらず、小型店舗業態にも GYMDXを導入することに意欲的な姿勢を見せる比江島氏。それは、安全監視機能の他に、マシンの利用状況や混雑状況の分析機能を運営に活かしたいという背景がある。

すでに、アトリオドゥーエでは施設の混雑状況を誰でもリアルタイムで把握できるようにホームページ上に公開している。中長期的に見れば、設置しているマシンの入れ替えなどにも、取得したデータを役立てていく予定だ。「会員のため」を追求したGYMDXの導入が、’23年以降もますます広がっていくだろう。