足し算のビジネスから、掛け算のビジネスにシフトして、イノベーティブなサービスを創出
Dr.stretchは直営114店舗体制、海外展開も拡大へ

2022年、ウィズコロナの環境変化により、フィットネス業界の市場環境も大きく変化した。フィットネスクラブ各社も、徐々に回復の兆しが見えてきている。2023年は、さらなる回復に向けて、どのように今後の動向を予測し、キャリアを築いていけばよいのだろうか?業界を牽引するリーダーたちに訊いた。今回は、Dr.Stretchを運営する、株式会社nobitel。ストレッチ専門点という新規事業を生み出し、順調にスケールをしている同社の2023年の動向にせまる。

竹内 大介 氏
株式会社nobitel
CMO

 

2022年はどんな年でしたか?

「コロナ禍の影響が残る中、Dr.stretchの売上が120%に伸長。リモートワークの浸透で、郊外店が好調でした」

コロナ禍による環境の変化は、nobitel社の主幹事業であるDr.stretchにおいては、追い風になっている。

フィットネス業界では、特に総合クラブが打撃を受けており、コロナ前のピーク期に比べて、会員数では2割減、売り上げで1割減にとどまっている。2022年後半は、ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響を受けて水道光熱費も上昇し、会費の値上げ策が進められるも、利益の確保が難しくなっている状況にある。

そんな中、nobitelのビジネスは順調に推移している。Dr.stretchは、延床面積25坪にマッサージベッドを並べ、水道光熱費の負担も少ないビジネスモデルで、直営とフランチャイズでの店舗展開を進めてきている。

コロナ禍で心身の調子を崩した人も多く、健康意識が高まるとともに、リモートワークが浸透し、生活時間のコントロールがしやすくなる中、ストレッチを運動習慣として採り入れる人が増えてきている。

また、Dr.stretchは、現在国内179(2022年11月末時点)店舗で、1,100人のトレーナーがおり、その技術やスキル開発によるサービス品質の向上が続けられている。店舗では「指名制」を導入していることで、お客さまも、馴染みのトレーナーを指名して、安心して通い続けられる環境がある。2022年の第6波、第7波の中でも、売上を120%に伸ばした要因となっている。

2023年に向けて始めたことは?

「サステナブルな社会に向けて、SX経営を意識した施策をスタートしました」

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)経営とは、不確実性が高まる環境下で、企業の持続可能性と、ESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図る経営のこと。

nobitelでは、SDGsの第3目標「全ての人に健康と福祉を」の達成に向けて、Dr.stretchでのペアストレッチの提供に加えて、広く地域社会にストレッチの習慣化を啓発する活動をスタートさせた。

その取り組みの一つとして「ストレッチウェル体操」の開発がある。「誰でも手軽に行える令和のラジオ体操」として、6分程度、立位で行えるストレッチをユーチューブに掲載。今後、小学校や自治体、健康経営を進める企業などに採り入れてもらえるよう働きかけていく。

また、10月7日を「柔軟ストレッチウェルの日」として認定を2021年に取得。2022年10月7日からの8日間を「柔軟WEEK」として、全店でチャリティキャンペーンを実施。この期間に国内179の店舗でのストレッチ後に柔軟性が高まったcm数を記録し、1cm1円として、ドナルド・マクドナルド・ハウス(難病の子どもとその家族が利用できる滞在施設)に寄付した。

こうした社会的な活動を行うことは、企業理念を表現するメッセージともなり、それに共感する人材の獲得にもつなげられ、企業の持続可能性も高められることになる。

2023年はどんな年になりそうですか?

「足し算のビジネスから、掛け算のビジネスにシフトして、フィットネス業界にイノベーションを起こします」

これまでは、Dr.stretchの店舗展開や、ストレッチを起点とした事業の拡充など足し算でビジネスを構築してきたが、今後は、DXやマーケティング強化、異業種とのアライアンス、海外展開に向けて、掛け算のビジネスにシフトしていくことを計画しているという。

店舗展開については、国内の直営店を30店舗増やして140店舗以上の体制にするとともに、海外展開も進めていく。既に出店しているシンガポール、台湾、中国に加えて、東南アジアや中東などへの進出も視野に入れている。

さらに、2023年中に、同社の技術やノウハウなど、すべてのリソースを集約させた新ブランドのリリースを計画。フィットネス業界にイノベーションを起こすべく、準備が進められている。