行動経済学の基本を理解するとともに、フィットネスクラブ経営に役立てる方法について紹介する本連載。前回は、ヒューリスティックの種類として、「代表性ヒューリスティック」と「利用可能性ヒューリスティック」について説明した。今回はこのヒューリスティックの中から、「固着性(アンカリング)ヒューリスティック」と「感情ヒューリスティック」について説明する。
■固着性(アンカリング)ヒューリスティック
固着性(アンカリング)ヒューリスティックとは、「人は与えられた情報に基づいて決定を行う際に、その情報にアンカー(支点)を設定する傾向がある」ことを指す。つまり、人は無意識のうちに自分の中で基準を定め、それをもとに比較をする傾向にあるのだ。
アンカリング効果
固着性ヒューリスティックの代表例として、アンカリング効果がある。ある商品の価格が割引されている場合、人は元の価格をアンカーとして、その商品を安いと感じてしまう傾向を持っている。
例えば、メーカー小売り希望価格が10万円の最新型ノートパソコンが、キャンペンーン特化で今だけ40%オフの6万円。これを見たAさんは、10万円がアンカーとなり、6万円という金額が安く感じてしまうのである。Aさんのお小遣いは月に3万円。果たして6万円という数字は本当に安いのだろうか?
仮にAさんは5万円程度の予算を考えていたとする。この時Aさんは、10万円のノートパソコンが+1万円で買えてお得(4万円も得をした)と考えてしまうのだ。実際は、予算の5万円と販売価格である6万円を比較し、1万円の損失になっているにも関わらず、10万円というアンカーに引っ張られて、得をしたように感じてしまう。これが固着性ヒューリスティックの1つである。
「値段を下げるのは簡単だが、上げるのは難しい」という意見は、まさにこの、アンカリング効果があるためである。人は、元の値段に基準をおくため、少しの値上げであっても高く感じてしまうのである。しかし、この消費者側のアンカーを上手く、意図的に設定することが