世界92カ国、9,000クラブ、200万人以上のユーザーに利用されているMyzone。創始者のDave Wright氏は、フィットネスクラブのマーケティング支援コンサルタントから、フィットネスクラブ経営を経て、常にこの業界の最大の課題である会員定着を実現すべくMyzoneを開発。現在までに、世界のフィットネスクラブ経営者・運営者から支持されるだけでなく、そのユーザー継続率の高さから、健康経営や学校教育などにも広く活用されている。

運動継続を強力にサポートするウェアラブルテクノロジーMyzone開発の背景と、支持を拡げる要因について、同氏に訊いた。

  • Myzone創始者 & CEO

    Dave Wright

     

Myzoneのアイデアはどのように生まれたのですか?

私は、オーストラリアで生まれ、様々なスポーツに親しみ、その後イギリスに渡りました。実は若いときはジムには通ったことがなく、スポーツばかりしてきました。スポーツで結果を出すことも重要ですが、どれだけ努力できるかに焦点を置いて取り組んできました。社会人になり、イギリスでフィットネスクラブのマーケティングを支援する企業に入りました。

現在、その企業のオーナーとしても、クラブの運営支援をしています。その後、自分でもフィットネスジムを経営しましたが、そのとき改めて、ジムに入会してもらうこと以上に、定着していただくことがいかに難しいかということを痛感しました。この課題に直接向き合うようになったことが、Myzoneのアイデアを生み出すきっかけになっています。

Myzone開発の背景には、どのような経験や思いがあったのでしょうか?

2008~2009年に、運動時に人が排出する二酸化炭素量を計測する研究に携わりました。そのとき、心拍モニターにとても興味を持ちました。ですが、当時の研究では、心拍数に関わる変数が多すぎて、こうした測定や分析を一般化することが難しいという課題がありました。そこでMyzoneで行ったのが、モニタリングをシンプルに行えるように、運動強度を5段階にして、色で示すようにしたことです。

次に、このシステムを、ジム会員の定着に活かす方法はないかと考え始めました。

世界のフィットネスクラブ経営者に、「会員定着のために何が必要か」とヒアリングしたところ、スマートフォンやスマートウォッチで、メンバー自身が運動した時間や強度を把握していたとしても、それをクラブ運営側が知らないことで、メンバーに適切な指導を提供したり、メンバーとのエンゲージメントを深める手立てがないことが課題として挙げられました。

そこで、身体活動のFacebookのようなものをつくりたいと思うようになりました。クラブ外での運動もオンラインで共有できることで、フィットネスに取り組んだこと自体が認められ、心理的な報酬が得られると考えました。と同時に、その情報がクラブスタッフやトレーナーと共有されることで、より本質的なフィットネスの指導が可能になり、エンゲージメントが深められると考えました。

Myzoneはこれまでに世界92カ国、9,000クラブ、200万人以上のユーザーに利用されていますが、最初は、どのように始まったのですか?

当時も、フィットネスクラブのマーケティング支援や集客支援をしており、クライアント企業が、イギリス、アメリカ、オーストラリアにありました。

そのためMyzoneサービスのローンチは、当初から世界に向けて行うことができました。

革新的なサービスは、ときに受け入れられづらい側面もありますが、フィットネスクラブ経営・運営者の中でも、会員定着について常に深く考えている方々が興味を持ってくださり、導入を決めてくれました。シカゴのイーストバンククラブは、オバマ大統領もメンバーになっているクラブですが、業界への影響力も大きく、このクラブへの導入をきっかけに、先進的なクラブへの導入が加速しました。

ただ当時は、クラブ以外の場所(自宅やアウトドア)でのエクササイズデータは、クラブに来ないと、そのデータをサーバーに取り込むことができませんでした。実際のエクササイズと、そのデータが確認できるまでにタイムラグがあり、ユーザーにとっては面倒に感じてしまうこともありました。

この課題が解決され、利便性が大きく飛躍したのが、Bluetooth4.0が利用できるようになったことです。これにより、手元のスマートフォンでリアルタイムにエクササイズデータを確認し、蓄積することが可能になりました。ジム内の運動だけでなく、自宅やアウトドアでの運動でも、Myzoneからリアルタイムでフィードバックが得られるようになり、Myzoneの活用方法も大きく広がりました。

クラブスタッフにとっても、メンバーの取り組みを常に把握することが可能になり、クラブに来なくても、フィットネスに取り組んでいることを称賛できることで、メンバーのモチベーションやエンゲージメントを高めることができるようになりました。

この機能は、人々がクラブに来られなくなったコロナ禍中、特に有効に機能し、Myzoneを活用していたクラブでは、メンバーとのつながりを維持することができ、営業再開後のメンバーの戻りも早い傾向が見られました。

コネクテッドフィットネス領域では、すでに様々なウェアラブルやアプリが存在しますが、他社のサービスや機能との違いと、Myzoneの強みについて教えてください。

Myzoneの大きな特徴は、フィットネス経営・運営者のためのコミュニティができることです。Myzoneに登録する際に、所属クラブ情報を登録しますので、確実にクラブとのつながりができます。ユーザーの体験価値を高めるサービスですが、あくまでBtoBのサービスとして、クラブ経営者・運営者の視点から機能を開発してきています。スタジオでのグループエクササイズの体験価値を高める機能や、Myzoneをクラブのアプリとしても活用できる機能なども、ほかのウェアラブルにはないサービスです。

イギリスと欧州に展開しているデビッドロイドクラブでは、入会とともにMyzoneにも登録し、Myzoneを活用したクラブ運営がされています。

エニタイムフィットネスではプレミアムメンバーにMyzoneを付帯サービスとして提供し、このカテゴリの会員数が38%増加することに貢献しました。

日本では、歩数計が健康づくりの指標として活用されることが多いですが、Myzoneでは、MEPsで心拍数をモニタリングすることを提案しています。歩数計とMyzoneの最大の違いは何でしょうか?

運動を続けようと思えることは、どんな方法も貴重だと思います。歩数計ももちろん、とても有効です。ですが、健康づくりの指標としてWHOのガイドラインでは、歩数の指標はありません

そこで、Myzoneでは、運動強度をモニタリングできるように、独自の努力ポイント=MEPs(メップス)として、データを蓄積しています。

MEPsは、それぞれの人の最大心拍数に対する心拍数を%で運動強度を表示し、色で感覚的に把握できるように、強度を5段階に分けて色で表示します。

運動強度が低い状態のグレーから順に1ポイント、青は2ポイント、緑は3ポイント、黄色・赤では4ポイントとして換算して、MEPsとして蓄積していきます。月に1,300MEPsを達成すると、WHOのガイドラインにある運動量がクリアできる計算になります。

運動強度を、それぞれの人の最大心拍数に対する心拍数を%で表示し、それぞれの体力に合わせた努力ポイントが得られるようにするためです。

歩数計では、運動強度の概念がなく、デバイスが上下に揺れれば運動量がなくても、歩数が稼げてしまいます。

Myzoneでは、心拍の動きに焦点を当てることで、より本質的に健康づくりをサポートできると考えています。

今後の成長市場として、企業フィットネスや学校教育などにも導入が進んでいるとのことですが、これまでの取り組みや他国の成功事例を教えてください。

Myzoneスイッチをリリースしましたが、これは、学校教育への導入を企図して開発したと言っても過言ではありません。Myzoneスイッチは世界で初めて、胸部でも、腕でも、手首でも、心拍数が正確に測定できるデバイスとなっています。子どもたちに適切な強度の運動を促すうえで、手首に簡単に着けられることで、継続的な利用が促されます。運動強度が色で示されることも、子どもたちにとってわかりやすく、「たくさん運動すると色が変わる」という新たな楽しみが加わります。

また、運動量に応じてMEPsの数字が増えていくことも、新たなモチベーションになるでしょう。

企業フィットネスにおいても同様で、一定量のMEPsを獲得することで、健康維持増進に確実につながり、体調が良くなることで仕事のパフォーマンスも高まります。「1ヶ月に2,000MEPs獲得すると、次の月に半休が貰える」などのリワードプログラムで、従業員の運動継続のモチベーションに繋げている事例も数多くあります。

今後のMyzoneのビジョンをお聞かせください。

将来的に、運動するすべての方にMyzoneを身に着けてもらいたいと思っています。それにより、世界の方々が、より健康なライフスタイルを送ることに貢献できると考えています。というのも、Myzoneの究極的な目的は、運動をする方に、「運動してよかった」と感じてもらい、運動にポジティブな気持ちを持っていただくことだからです。「運動してよかった」と思う人が増えることで、世界をよりよく変えていけると思っています。

Myzoneが、学校から家庭、企業、フィットネスクラブ、そしてエリートスポーツに至るまで広がり、世界の身体活動エビデンスを収集するデータコレクターとなり、運動の利点をめぐる政府の政策策定にも貢献していきたいと考えています。世界中の人が、活動的な生活を送れるように運動不足の人が、運動を習慣化できるまでの明確な道筋を示していきたいです。

日本での展開も、楽しみにしています。常に先見性を持ってビジネスを推進する方々は、新しいことにトライしながら、物事を前に進めていく力を持っています。日本のフィットネス参加率は3.7%ほどと聞いています。まだまだ拡大する可能性があります。日本の方々は、学ぶ意欲が高く、よりよいサービスの提供に熱心です。

Myzoneとして、日本でも多くの方々の運動継続をサポートし、フィットネス業界の成長もサポートしていきたいです。