総合クラブの健全な運営には、会員の継続率を高めることが欠かせない。そこには、総合クラブだからこそ意識すべきポイントがありそうだ。「人×デジタル」でより良いサービス提供を目指す株式会社ルネサンスの東 武史氏に、ウェルネス/運動施設向けのオールインワン・マネジメントシステムを提供する株式会社hacomonoでマーケティングを担当し、総合クラブの店舗責任者の経歴をもつ鶴橋亮氏が、店舗のデジタル活用について話を聞いた。

  • 株式会社ルネサンス
    スポーツクラブ事業企画部 次長 DX推進プロジェクトメンバー
    東 武史氏

適切な利用頻度とアイテム選定で店舗の利用を習慣化

鶴橋:御社はお客さまの行動ログから会員継続につながる要因を分析していると聞きました。

東:まだ慎重に見極めているところですが、継続要因の1つに、プログラムやサウナなど、「お気に入りのアイテムを見つけてもらうこと」が重要そうなことはわかってきました。店舗側がお勧めした場合は、体験後に会員さまに感想を聞き、ときにはほかのアイテムを提案することが大切です。アイテムがその方の気に入るものではなかったり、体力レベルに合なかったりすると、利用しなくなるだけでなく、アイテムを利用しない方よりも退会率が悪くなることも見えてきました。

鶴橋:別の提案ができるのも、豊富なアイテムがある総合クラブだからこそですよね。初期定着に重要な入会初期のアプローチにおける注意点はありますか?

東:週1回でも通っている方ならば、店舗に通う習慣ができているといえます。週3回→週1回など、頻度が減っている方は、いわゆる退会予備軍ですね。効果を出すには最低週2回の利用を勧める施設もあると思いますが、無理しても続きません。1週間の中で、利用しやすい回数を見つけてもらうことが必要です。その前提として、お客さまが気に入るサービスを施設側が毎週提供できていることも重要です。

鶴橋:利用頻度をデータでチェックして、しばらく来館がない方にメールを送るなどしているクラブもあります。

東:それはとても重要です。もっと言えば、メールを見て実際に来店した際に「お久しぶりですね」とお声をかけられるところまでが必要です。「前回は○○のレッスンに参加されたんですね」など、パーソナルな声かけもできるといいですね。利用動向を把握するには、やはり人だけでは難しいですから、デジタルの力を活用していくべきだと思います。

鶴橋:「hacomono」も、会員の利用動向データを蓄積できるほか、会員の情報を店舗内で共有できる「申し送り」という機能があります。先日、この機能を活用しているクラブに行ったのですが、内容が事前に共有されているため、よくある「体験フォームに書いたんだけどな…」という質問がなく、快適でした。

タッチポイントにおける一言で人間味を創出

鶴橋:御社では「RENAISSANCEColors」という会員のコミュニティサイトを立ち上げられました。会員さまからのお声で印象的なものはありますか?

東:あるインストラクターが都合により店舗を離れて代行の方に代わる際、店舗側が「担当者が卒業したため」と表現したんです。「卒業」って前向きな意味合いが強いですし、「担当者都合」より人間味もあるので「嬉しかった」というお声をいただきました。

鶴橋:私も、先ほどとは別の店舗を体験したら、メールマガジンでセミナーへのご案内が届いたんです。参加したら、その後「メールをきっかけに参加してくれてありがとう」というメッセージが届きました。メールマガジンって機械的な内容になりがちですが、このような一言で人間味が加わると、受け取り側の印象も違いますよね。

東:デジタルだからこそ増やせる顧客接点がありますし、そのデジタル接点に人間味を出し、かつ人接点とのつながりをつくることで、初めてDXと言えると考えています。将来的には、さらに人間味のあるデジタルタッチポイントへ進化させていきつつ、人ではできない「顧客ログデータに基づく最適なレコメンド」の精度を高めたいです。

鶴橋:DXには、その分野に詳しい人材が必要かと思います。

東:当社は店舗数も多く、スタッフの異動も発生しますから、全店舗にIT人材を揃えることは難しいです。だから全員で知識をつけるほか、デジタルツールやコンテンツを“使うスキル”が重要です。そのためには、実際に様々なデジタルに触れる経験を通じて、「こんなに便利に、こんなにお客さまに喜ばれることができるんだ」とワクワクできることが大切だと思います。

鶴橋:今後、取り組んでみたいことや目標を教えてください。

東:3月にアメリカのクラブを視察しました。当然デジタル化はベースとして整備されていましたが、それ以上に印象的だったのは、施設の美化やスタッフ常駐場所の開放性、説明なしに五感で伝わる空間づくりでした。これらは日本においても間違いなく見習うべきものだと感じました。この学びを活かし、新しい総合クラブのかたちを実現したいです。

※hacomonoはSPORTEC2024に出展いたします。ブースでは実際の画面操作を体験できるほか、顧客体験や売上向上をサポートする新サービスをご紹介いたします。ぜひお立ち寄りください。